Bリーグ、そして世界で活躍する選手へ 「夢」に近づく権利は誰にでもある

『hangtime』編集部

初対面のチームメートとのコミュニケーション

選手もコーチも初対面のため、コミュニケーションが重要となる 【(C)B.LEAGUE】

 午後からのスクリメージは20チームが2面のコートで次々にプレーし、2巡目が終わったところで40名(8チーム)に絞られる。チームを組むのは初対面のメンバーで、プレーの特徴は分からない。当然コーチも初対面で、どんな声を掛け合ってチームを作っていくのか、自己アピールしながらも、いかにチームメートを生かしていくかが試される難しいスクリメージ。チームの勝敗に関わらず、それぞれの選手の個性を見極めて選抜されていくというトライアウトなのだ。

 前述の通り、ここでは須田の講演会が好影響をもたらした印象は強い。早めに集合し、コーチの指示に耳を傾け、プレーの組立を確認するなどあちらこちらでハドルが組まれる。いざプレーが始まると、大きな声でチームメートを鼓舞したり、得意なポジションから積極的にシュートを狙ったりと、短い時間でも精いっぱい持ち味をアピールする選手たち。40名の次は20名に、最終的には10名が選抜されてスクリメージが行われ、2日間のプログラムが終了した。

現在の自分が目指す、未来の自分

2年連続で参加した新潟医療福祉大の佐藤誠人は、クラブ関係者の注目の的だった 【(C)B.LEAGUE】

 今回参加したのは22歳以下の選手たちで、進路(進学先)が決まっているケースがほとんど。馬場龍翔(藤枝明成高)は江戸川大(関東大学リーグ2部)に進学予定とのこと。「インターハイは出場しましたがウインターカップは予選で負けました。悔しい気持ちがあって、今回B.DREAMにチャレンジしました。将来はBリーグでプレーしたいですし、海外にもチャレンジしたいと思っています」と夢を語った。

 大きな声でチームを支える熱血プレーが印象的だった平良彰吾(拓殖大)は父親が実業団の名門・住友金属に所属し、兄も同じくバスケ選手。「ボイスは持ち味なので、少しはアピールできたと思います。あとはシュートをもう少し正確に決めたかったです」と笑顔で会場を後にした。

 2年連続で参加の佐藤誠人(新潟医療福祉大)はクラブ関係者の注目の的。「今回も最後(10名)まで残ることができ、レベルの高いチームでプレーできたのが良かったです。前回の自分の経験を伝え、今回は大学のチームメートが参加することになりました」。これは、B.DREAM PROJECTの成果が着実に広がっている証。例えば、サンロッカーズ渋谷はU15のメンバーに参加を呼び掛け、2名の選手が参加している。「Bリーグのクラブでエントリーしているのはわれわれだけかもしれません。(学校など)難しい面はありますが、こういう機会に多くの経験をしてほしいと思っています」と語るのは松岡亮太ユースマネージャー。

 また選手にとどまらず、コーチ陣もプロコーチ志望の7名が参加。その1人、市村朋也はC級ライセンス保持者でB.DREAMは皆勤賞。今回もオリジナルのマニュアルを持参し、「急造チームなので、オフェンスのエントリーなどを共有できればと思って用意したものです。それがうまくいかなければ、そこからは選手に委ねるしかありません。最初にキャプテン、副キャプテンを決め、選手の役割を明確にするよう努めています」と、さらなるステップアップを目指した。

 他にも現役教師が参加したが、部活で指導する傍ら「プロコーチとしてコートに立つ自分の姿」を追い求めているようだ。「(Bリーグクラブのスクールコーチなど)もしオファーがあったとしても、すぐに決断できるかどうか分かりません。ただ、この経験によりコーチとしてのスキルを磨くことができます。指導の幅を広げられればといいなと思っています」。

 決まった進路、現在の立場があったとしても、その先へ進んでいきたいという思いに応えるのがB.DREAM PROJECTの果たすべき役割なのだ。

プロへ……ライバルは世界だ!

「ライバルは日本ではなく、世界のプロ選手」と葦原事務局長は参加者たちに語りかけていた 【(C)B.LEAGUE】

 最後に、閉会式のあいさつに立った葦原一正事務局長の言葉を紹介しておきたい。

「ライバルは誰か……ここにいる一人ひとりがそうかもしれません。が、Bリーグは『世界に通用する選手やチームの輩出』を使命のひとつに掲げていますから、ライバルは日本ではなく、世界のプロ選手です。そして、最高峰の選手たちが口にしているのは“努力”することの大切さです。日々の小さな積み重ねができるかどうかが重要で、普通のプロ選手で終わるのか、最高峰の選手を目指すのか……明日から、一つひとつ小さなことから努力してほしいと思います。それはBリーグも同じです。一緒に頑張っていきましょう」

 今回「B.DREAM PROJECT 2019」に参加したのは約100名の選手・コーチだけではない。2日目のスクリメージの際には、B1からB3のクラブ関係者が多数来場し、プレーする選手たちを注視した。この中からBリーグでプレーする選手が現れるかどうかはわからない。しかし、それぞれの夢がつながり、人がつながっていけば、B.DREAM PROJECTから飛び立って、世界で活躍する選手が生まれるだろう。小さな努力を積み重ねていくことで、きっと大きな花を咲かせるに違いない。

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著者プロフィール

B.LEAGUEを中心に、AKATSUKI FIVE(日本代表)やストリートボールまで、日本のバスケットボールの魅力を、わかりやすい記事とデザイン性の高い誌面でお届けする、新しいバスケットボール専門誌。Issueごとに独自の視点で特集を組み、興味深い企画で構成。

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