尚志・染野唯月、ゴールを求め貪欲に 覚醒の時を迎えた2年生エース
成長の跡がはっきり見える選手権
選手権では2試合連続ゴール中。福島県勢初の全国制覇に導けるか(写真中央、背番号9が染野) 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
「6番(アンカーの中村拓也)の場所がよく空くと言われていたので、意図的に落ちてプレーすることを意識しました」と、相手のシステム、状況を観察した上での判断は、チームにとって大きなプラスとなった。
染野の動きに連動して、トップ下の二瓶由嵩、左の高橋海大と右の加瀬直輝(いずれも3年)の両サイドハーフがポストプレーからのボールを受けて、前向きに仕掛け続けた。攻撃のリズムをつかんだ尚志は、前半31分に左サイドを染野が突破。相手のフィジカルコンタクトに屈せずに、馬力あるドリブルでカットインすると、寄せてきた相手DFをモノともせずに強烈なシュート。GKが弾いたこぼれ球を、飛び出してきたボランチの坂下健将(3年)が豪快に突き刺し、先制に成功した。
染野が作り出した攻撃のリズムにより2−0で東福岡高を撃破すると、3回戦の前回王者・前橋育英(群馬)戦でも変わらぬ存在感を発揮。1−0で迎えた後半11分には、待望の瞬間を迎えた。
染野がポストプレーから右サイドのMF加瀬に展開すると、すぐにゴール前に走り出した。そして加瀬が右サイドで突破を仕掛けた瞬間、「前橋育英の選手がボールウォッチャーになっていたので、フリーになれると思った」と、いち早くゴール前のスペースに入り込み、加瀬の折り返しを豪快にゴールに蹴り込んだ。
前回王者を破る決勝弾となった今大会初ゴールは、まさに彼のこの1年の成長の跡がはっきりと出たものだった。
『尚志の起点』になり続ける
エースのゴールは本人だけでなく、チームにも明るい光をもたらした。「染野は今大会、存在感をかなり発揮してくれているし、いろいろな面で貢献をしてくれている。だからこそ、ここでアイツが決めたのは大きい。染野のゴールはチームとしてほしかった点なので、『やってくれた!』と感謝しかない」と、仲村監督も手放しで喜んだ。
「どうしてもゴールがほしかった。ゴールを奪うことに貪欲にやってきた結果、こういう大事なゲームで点が取れたのがうれしかったです。2年間通して、自分が勝負どころで決め切る選手にだんだんなってきて、マリノス戦、前橋育英戦と大事な所で点を取ることができたのは大きな自信になる。もちろん点を取るだけでなく、これからも僕は前線で『尚志の起点』になり続けます」
その表情は自信に満ちていた。染野は続く準々決勝の帝京長岡(新潟)戦でも前半22分に2試合連続となるゴールをたたき出し、1−0の勝利に貢献。チームを2011年度以来となる、2度目のベスト4進出に導いた。
「もっと成長をして、最終的には優勝という結果を福島に持ち帰りたい」
悲願の全国制覇まであと2つ。福島県勢初の快挙に向けて、覚醒した2年生エースストライカーはその獰猛(どうもう)な牙をさらに磨き上げ、まずは1月12日、埼玉スタジアムのピッチでの躍動を誓う。