「箱根で勝つ」の信念でチームが一丸 東海大初Vの要因を駒大OB神屋氏が解説
東洋大は“らしさ”貫き力尽きる
8区の東洋大・鈴木(右)は東海大・小松(左)の前で走らされる隊列となり、難しいレースとなった 【写真:日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ】
東洋大は往路に主力をつぎ込んでいました。復路にも駒は残してはいたものの、逃げなければいけないプレッシャーはかかっていたと思います。「東海大と一緒に行けばいい」という発想であったら8区の鈴木選手も後ろにつくなり並ぶなりして、もっと楽にいけたと思います。一度追いつかれて二人で上げていこうという判断もできたと思います。ただ、ここは先頭を突っ走って意地でも前を譲らないという東洋大らしいレースを追求したがゆえに敗れ去った。最終的には指揮官や選手に聞いてみないと分かりませんが、らしさを失ったら勝てないというのも、東洋大の中にはずっとあるのだと思います。ですから、あくまで自分たちのレースに徹した結果、最後は力尽きて順位を下げてしまったという感じではないでしょうか。ただ、下がったといっても3位ですし、チャレンジャー精神でいく東洋大の精神は示せたと思いますし、これが後輩たちにも受けつながれていくのではないかと思います。
――往路で10位以内に入ったチームがそのままシード権圏内に入るという展開になりました。
青山学院大、東海大、東洋大の“3強”に次ぐレベルと言われていた駒澤大、帝京大がしっかり4、5位をとりました。やはり復路にも強い選手を残すことができ、それなりに総合的に戦えるチームがこの2チームだったと思います。また、6位・法政大の坪田智夫監督、7位・国学院大の前田康弘監督は、私が駒澤大時代に一緒に走っていた同世代の先輩方です。まだ若い指導者で、新たな力をつけている段階で上位に来ました。
こうしたチームに共通しているのは、シード権を取ったチームは往路で流れをつかんで、それをキープしていること。守りに入るのではなく、攻めながら順位をしっかり保っています。こうしたチームが新たな力と言いますか、新たな箱根駅伝の戦い方ができているのかなと。一人、二人の力で順位をひっくり返しても、総合力で結局はシードの位置からはじき出されるという展開も見られました。やはり箱根の戦い方を知っているというのは大事だなという印象を受けました。
データやSNSの活用も……練習法は多様化
情報化の時代ですので、どのチームもある程度の情報、ノウハウを持っていると思います。その情報をどう分析して、検討して、それを日々の練習に落とし込んでいくか。そしてそれを走力やチーム力に変えていかなければなりません。
もう一つはツールです。最近はシューズがよく注目されていますが、それ以外にも、今はGPS機能付きのランニングウォッチがあります。日々記録をとって、データを活用してトレーニングを積むことができますし、自分の走るペースもデータで把握しやすい時代です。ひとりでタイムトライアルや距離走をやっても、自分のペースとタイムが分かります。個々が力任せで勝負してた時代と比べれば、すごく丁寧に練習ができると思うんです。最新テクノロジーを使って変わってきた部分もかなりあるのではないかなと思います。
――逆に、箱根駅伝で勝つのがますます難しくなりそうですね。
関東学生連合チームの選手たちも、一人でやっているわけではないんです。強化メンバーで集まって練習したり、そうでなくても、他のチームに行ってみたり、他のメンバーとSNSで連絡をとって練習内容を交換したり、一緒に練習しようと呼びかけたり……。今はある程度、インフラが整っていると思うんです。だから、たとえ経験値が低くても、一人ぼっちのような大学でも、自分たちで環境をつくっていけるし、ある程度(駅伝強化校と)似たようなレベルで勝負していける。そういったところが、95回を迎える箱根駅伝の中で変わってきているのかなと思います。