吉田輝星、北海道で受け継ぐスターの系譜 将来は「球界を代表する選手に」

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ダル、大谷、清宮に「続きたい」

日本ハムから1位指名を受け、胴上げされる金足農・吉田輝星 【スポーツナビ】

 午後5時52分、北海道日本ハムから外れ1位で指名を受けた金足農・吉田輝星は、やや硬い表情で会見場の体育館に現れた。

「まだあまり実感が湧かないですね。少し緊張した感じです」

 これまで日本ハムはダルビッシュ有(カブス)、大谷翔平(エンゼルス)、清宮幸太郎ら、甲子園を揺るがしてきたスター選手を数多く指名し、一流選手に育ててきた。吉田も「高校生からドラフト1位で入った先輩たちがすごく活躍しているので、自分もそれに続けるようにしたい」と話した。また、今年は2位で昨夏の甲子園を制した花咲徳栄の4番打者・野村佑希、5位で春夏連覇を果たした大阪桐蔭のエース・柿木蓮を指名。まさに「甲子園のスター」を集めた形となったが、その中でも吉田の輝きはひときわ大きい。

 最速152キロの直球を軸に、夏の甲子園では4試合連続2ケタ奪三振。6試合で881球を投じるという無尽蔵のスタミナで、金足農を秋田県勢103年ぶりの準優勝に導いた。野球部の活躍を受けて出版された特集雑誌の売上げなど、金足農が秋田県にもたらした経済効果は104億円ともいわれている。その“カナアシブーム”を作り上げたのは、吉田の右腕だった。

夏の甲子園では4試合連続2ケタ奪三振をマークするなど、金足農を秋田勢103年ぶりの準優勝に導いた 【写真:岡沢克郎/アフロ】

 対戦相手が「一度下がってから浮き上がってくるイメージ」と語るほど、ホップするストレート。最大の武器は今後もさらに磨いていくつもりだ。

「まだまだストレートが完成しているわけではないので、変化球が生きるようなストレートを投げたい。常時150キロを超えて、球の質も意識したボールを投げたいと思っています」

 そのための努力も継続して続けている。ドラフト当日の朝も、“女房役”を務めていた捕手の菊地亮太(3年)を相手に、ブルペンで約30球を投げ込んだ。久々に吉田の球を受けた菊地は「目が追いつかなかった。低めのボールからストライクになる球が一番やっかいですね」と絶賛した。吉田本人も「目標は高く持って、155キロを目指したい」と、切れ味とスピードの両方を追い求めていく。

チームメートとの別れは「ちょっと辛い」

前主将の佐々木いわく、あえて声をかけず、そっと見守ることによって、吉田が1人で考える時間を増やしてあげたいという配慮をしていたという 【スポーツナビ】

 夏の秋田大会が始まるまで、吉田はかねてから指導を受けていた正村公弘監督が率いる青森・八戸学院大に進む予定だった。だが、甲子園での大ブレークとともにプロ入りへの気持ちが強まり、心は揺れていた。最終的にはプロ入りを決断することになるのだが、その裏にはチームメートの心遣いもあった。

 前主将の佐々木大夢(3年)は「特にこちらから言葉はかけず、そっとしておこうと思った。自分のことを尊重してあげたかったので」。あえて声をかけず、そっと見守ることによって、1人で考える時間を増やしてあげたいという配慮があったのだ。無事に吉田のプロ入りが決まり、佐々木も「自分のことのようにうれしい。プロに行っても活躍してくれると思います」と笑顔で語った。

 北海道に行くということは、ともに秋田に旋風を起こしてきた仲間と離れることでもある。「絶対自分1人では準優勝という結果にたどり着けなかったので、みんなに支えてもらって今があると思っています。離れるのはちょっと辛いです」と、吉田は素直な心境も口にした。

「いずれは球界を代表する選手になって、再び日の丸を背負えるようになりたい」と吉田(写真中央)は意気込む 【スポーツナビ】

 甲子園決勝で激突し、U−18侍ジャパンではチームメートにもなった根尾昂(中日ドラフト1位)と藤原恭大(ロッテ同1位)に対しては、引き続きライバル心を燃やしている。「甲子園では自分の納得する抑え方ができなかったので、一回り成長して、今度はプロの舞台で自分が抑えたい」と鼻息を荒くした。

「どんな選手になりたいか?」という質問については、「いずれは球界を代表する選手になって、再び日の丸を背負えるようになりたい」。この夏に日本全国を沸かせた秋田のスターは、プロの舞台でさらに輝きを増していくはずだ。

(取材・文:守田力/スポーツナビ)
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