2025アルビレックス新潟の編成について浮かび上がる4個の疑問を考えよう
【これはnoteに投稿された白鳥さんによる記事です。】
1/17(金)のブラジル人アタッカー・ミゲルの加入(https://www.albirex.co.jp/news/67093/)で取り敢えずは2025シーズンの編成を終える事となったアルビレックス新潟。昨年のアレ(https://www.albirex.co.jp/news/65683/)のせいで少なくとも3/21(金)までは安心できない日々を過ごす事になりそうですが、「32人でスタートする(https://www.youtube.com/watch?si=Ywiry9S7r7fdRpW9&t=374&v=h5LzehT4BXs&feature=youtu.be)」という寺川強化部長の発言と照らし合わせても今季開幕に向けた編成は全て完了したと認識しても問題ないでしょう。
そこで今回はタイトル通り、2025年の編成について旧Twitter上でよく見かけた皆さんの疑問を題材にして、その疑問に対するアンサーを考えていく形式でアルビレックス新潟の頭の中を覗いていこうかなと思います。
そこで今回はタイトル通り、2025年の編成について旧Twitter上でよく見かけた皆さんの疑問を題材にして、その疑問に対するアンサーを考えていく形式でアルビレックス新潟の頭の中を覗いていこうかなと思います。
目次
①どうして松橋力蔵を待っていたのか
②樹森大介・敢えてチャレンジングな選択に至った背景
③なぜJ2からの獲得がメインとなっているのか
④真ん中のアタッカーが多すぎる!
①どうして松橋力蔵を待っていたのか
②樹森大介・敢えてチャレンジングな選択に至った背景
③なぜJ2からの獲得がメインとなっているのか
④真ん中のアタッカーが多すぎる!
①どうして松橋力蔵を待っていたのか
以前は崇拝の対象だったこの漢字四文字に対して、ここ1か月ですっかり捉え方が変わった印象ですが、2022~24年まで指揮を執っていた松橋力蔵前監督が今冬にFC東京へ移籍してしまいました。「しまいました」と表現した通り、新潟としては本来は残したかった監督を他所に奪われてしまった、しかもその最終判断が2025シーズン終了の数日後という遅すぎるタイミングで下された事になるのですから、まぁ去り際の印象は良くないですよね。
そんな前指揮官への恨み節はさておき、新潟は何故リスクを承知でシーズン終了後まで続投オファーへの答えを待っていたのか?というクラブとしての態度に疑問、或いは不満を抱えていた方は相当数いらっしゃったのではないかと思います。正直自分もその一人で、J2優勝・2年連続でのJ1残留・タイトル獲得への現実性といった、J2降格後から暫くは想像する事すら無かった非現実的な景色の数々を叶えてくれた一方で、今季のピッチ上を真剣に直視するとビルドアップの機能不全や守備面での不安定さなど、サッカー面での成長が感じられなくなっていたのも事実です。そのような理由から、松橋力蔵とアルビレックス新潟の結びつきについては2024年で一区切りをつける方が互いの為になるし、実際にクラブもそう判断するのだと思っていました。
そんな前指揮官への恨み節はさておき、新潟は何故リスクを承知でシーズン終了後まで続投オファーへの答えを待っていたのか?というクラブとしての態度に疑問、或いは不満を抱えていた方は相当数いらっしゃったのではないかと思います。正直自分もその一人で、J2優勝・2年連続でのJ1残留・タイトル獲得への現実性といった、J2降格後から暫くは想像する事すら無かった非現実的な景色の数々を叶えてくれた一方で、今季のピッチ上を真剣に直視するとビルドアップの機能不全や守備面での不安定さなど、サッカー面での成長が感じられなくなっていたのも事実です。そのような理由から、松橋力蔵とアルビレックス新潟の結びつきについては2024年で一区切りをつける方が互いの為になるし、実際にクラブもそう判断するのだと思っていました。
ところがシーズン終盤になっても当人達の答えが可視化されず、残留を決めた最終節浦和戦の後になってようやく事態が明らかになった。しかも「続投オファーを出している」「答えはまだ出てない」という嘘みたいな状況である事が中野社長の口(https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2024/12/08/kiji/20241208s00002179276000c.html)から示された訳ですから、これには悪い意味で驚いてしまいましたね。
ここで考えたいのは前監督の判断の遅さではなく、クラブが続投要請を取り下げなかった理由について。個人的には「シーズン移行」が監督人事の前半戦を巡る意思決定に大きく響いていたのかなと推察しています。
Jリーグは2026年から夏開幕の翌年夏前に閉幕する秋春制にシーズン移行する事を決定しました。往来のカレンダーで進んでいくのは2025年が最後となり、2026年の2~5月に昇降格無しの0.5シーズン制を戦い、2026年8月から本格的に秋春制がスタートする流れとなっています。
ここで重要となるのが昇降格無しの0.5シーズン制。勝ち点1毎にJ1では200万円の賞金が発生するなど、何とかして勝敗への意欲を絶やさないようJリーグ側もレギュレーションに手を加えていますが、一般的な捉え方によっては生きるか死ぬかの戦いが始まるまでの移行期間であり、現場の人間としても公式戦でありながらも色々と試す事のできる貴重な機会となりますから、これまでよりチャレンジングな采配に打って出るクラブも決して少なくないと見ています。
そして、それは新潟における当初のプランも同様だったのではないでしょうか。本人の単身赴任問題やサッカーの賞味期限を加味すると、遅かれ早かれ松橋体制は持って残り1年程度だったと思います。そうなると理想としては
2026年夏までの移行期間を新監督の下で戦術浸透を図る時間として費やしながら、本格開幕する新シーズンを良い準備の下で迎えたい。
その為には2025年を絶対に残留する必要があり、サッカー的な伸びしろには課題がありつつも最低限の結果を保証してくれる松橋体制の続投がベストな選択肢としてクラブ内で挙がっていた可能性があると思っています。そのように長い目で見て適切な戦略の下でチーム強化を図っていく為に、FC東京の現監督に対してもう一年の続投を要請していたのではないでしょうか。
更に監督選定に対しては強化部よりもっと上の株式会社としての上層部の承認を得る必要があり、ここまで結果を出していて要求以上の成果を挙げている監督をわざわざ手放す必要性は競技面以外の人間からすれば余計感じにくかったのではないでしょうか。併せて選手達からの求心力を評価していたと推察できる中野社長の発言(https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2024/12/08/kiji/20241208s00002179276000c.html)からも、クラブとして敢えてこのタイミングで切る理由が見つからなかったのも頷けます。モロに影響を喰らった監督人事の遅れは全くいただけませんが、前監督の留任に注力をしたのも以上のような理由を考えるとベターな判断だったと思います。
ここで考えたいのは前監督の判断の遅さではなく、クラブが続投要請を取り下げなかった理由について。個人的には「シーズン移行」が監督人事の前半戦を巡る意思決定に大きく響いていたのかなと推察しています。
Jリーグは2026年から夏開幕の翌年夏前に閉幕する秋春制にシーズン移行する事を決定しました。往来のカレンダーで進んでいくのは2025年が最後となり、2026年の2~5月に昇降格無しの0.5シーズン制を戦い、2026年8月から本格的に秋春制がスタートする流れとなっています。
ここで重要となるのが昇降格無しの0.5シーズン制。勝ち点1毎にJ1では200万円の賞金が発生するなど、何とかして勝敗への意欲を絶やさないようJリーグ側もレギュレーションに手を加えていますが、一般的な捉え方によっては生きるか死ぬかの戦いが始まるまでの移行期間であり、現場の人間としても公式戦でありながらも色々と試す事のできる貴重な機会となりますから、これまでよりチャレンジングな采配に打って出るクラブも決して少なくないと見ています。
そして、それは新潟における当初のプランも同様だったのではないでしょうか。本人の単身赴任問題やサッカーの賞味期限を加味すると、遅かれ早かれ松橋体制は持って残り1年程度だったと思います。そうなると理想としては
2026年夏までの移行期間を新監督の下で戦術浸透を図る時間として費やしながら、本格開幕する新シーズンを良い準備の下で迎えたい。
その為には2025年を絶対に残留する必要があり、サッカー的な伸びしろには課題がありつつも最低限の結果を保証してくれる松橋体制の続投がベストな選択肢としてクラブ内で挙がっていた可能性があると思っています。そのように長い目で見て適切な戦略の下でチーム強化を図っていく為に、FC東京の現監督に対してもう一年の続投を要請していたのではないでしょうか。
更に監督選定に対しては強化部よりもっと上の株式会社としての上層部の承認を得る必要があり、ここまで結果を出していて要求以上の成果を挙げている監督をわざわざ手放す必要性は競技面以外の人間からすれば余計感じにくかったのではないでしょうか。併せて選手達からの求心力を評価していたと推察できる中野社長の発言(https://www.sponichi.co.jp/soccer/news/2024/12/08/kiji/20241208s00002179276000c.html)からも、クラブとして敢えてこのタイミングで切る理由が見つからなかったのも頷けます。モロに影響を喰らった監督人事の遅れは全くいただけませんが、前監督の留任に注力をしたのも以上のような理由を考えるとベターな判断だったと思います。
②樹森大介・敢えてチャレンジングな選択に至った背景
2025年より新監督に就任したのは水戸ホーリーホックの樹森大介コーチ。新潟との接点だったり、本人のパーソナルな部分は散々掘り起こされているので割愛して、ここでは何故彼のような、端的に言えばトップチームで経験の浅い指導者をこの緊急事態に監督のポストに呼び寄せたのかについて考えていきます。
前監督の退任から樹森監督就任までのブランクでは待望論として様々な名前が挙がりました。
前監督の退任から樹森監督就任までのブランクでは待望論として様々な名前が挙がりました。
・川井健太(前サガン鳥栖)
・オスカルエルナンデス(アルベルト体制でヘッドコーチを務めてた)
・入江徹(新潟コーチ、S級ライセンス取得が間に合えばの条件付き)
・大槻毅(前ザスパクサツ群馬)
彼らに共通するのはボールを保持する仕組みの構築に長けていて、尚且つトップチームのスタッフに複数年携わっていたor新潟をよく知っているという事。要はネームから感じられる経験値も自然と意識されているような面々がサポーターの間でリストアップされていました。
ところがどっこい、昨年の12/17(火)に新潟日報のスクープから始まった報道合戦で表面化した人物に対しては名前を先ず知らないし、いざ経歴を眺めるとトップチームでの経験が浅い、いや浅すぎる訳ですからストレートに大丈夫かな?と不安に思ってしまったのが正直な所です。それに他にもフリーの有力候補が監督市場に転がっているのに、何故クラブは敢えて樹森大介にオファーを出したのか?という疑問を殆ど全員のサポーターが抱いていた筈です。
ここで個人的に挙げたいキーワードは2つ。「選手の成長」と「クラブのブランド化」です。
先ずは「選手の成長」について。
・オスカルエルナンデス(アルベルト体制でヘッドコーチを務めてた)
・入江徹(新潟コーチ、S級ライセンス取得が間に合えばの条件付き)
・大槻毅(前ザスパクサツ群馬)
彼らに共通するのはボールを保持する仕組みの構築に長けていて、尚且つトップチームのスタッフに複数年携わっていたor新潟をよく知っているという事。要はネームから感じられる経験値も自然と意識されているような面々がサポーターの間でリストアップされていました。
ところがどっこい、昨年の12/17(火)に新潟日報のスクープから始まった報道合戦で表面化した人物に対しては名前を先ず知らないし、いざ経歴を眺めるとトップチームでの経験が浅い、いや浅すぎる訳ですからストレートに大丈夫かな?と不安に思ってしまったのが正直な所です。それに他にもフリーの有力候補が監督市場に転がっているのに、何故クラブは敢えて樹森大介にオファーを出したのか?という疑問を殆ど全員のサポーターが抱いていた筈です。
ここで個人的に挙げたいキーワードは2つ。「選手の成長」と「クラブのブランド化」です。
先ずは「選手の成長」について。
それ以前から他の選択肢を考えていた寺川能人強化部長はスタイルの継続、育成年代の指導経験者に加え「今まで(監督を)経験していない方を置きたい」という3つのポイントから模索。21年にS級コーチライセンスの国内研修で新潟を選び「しっかりサッカーに対する考えを持っておられた方」という印象があったことから、樹森監督を選んだという。
※リンク先は外部サイトの場合があります
新潟に加入する選手というのはクラブの立ち位置や強化部の補強方針(後程触れます)に起因して、J2で頭角を示したは良いもののJ1をまだ経ていないような、もう一段階伸びしろが残されている面々が基本軸となっています。J1のトップハーフみたく、ドメスティックな意味で完成された選手を獲得する事は殆ど不可能な訳ですね。
そんな中で現場のトップチームスタッフに求められるのは既存戦力のスキルを伸ばしていける指導力。新たに選手を連れてくるよりも、今目の前に居る選手達を磨きながらチームの総合力を高めていく。そして場合によっては買ってきた額より高値で売って、また新たな才能を確保する為の原資に費やす。そのような予算が限られる地方クラブの適切な在り方を実現する、更には健全なチーム強化のサイクルを回していく中でトップチーム監督には指導力が保証されていて欲しいのかなと思います。指導対象となるのは若手と目される選手が多くなる訳ですから、育成組織で腰を据えて指導に当たってきた要素は決して無視できない物となります。
樹森監督の水戸での10年以上の経験はそれを裏付けする物ですし、実際は彼の他に候補者が居たとしても、新潟のサッカーに理解がある側面も重なって結果として優先的に新潟のレーダーに乗ってきたのだと認識しています。
続いて「クラブのブランド力」。
ボールを保持する事で試合自体の優位性を確保する。限られた人的リソースの中で、勝ち点3の可能性を十二分に高めていく。アルベルト体制から本格的に根付かせてきた新潟のサッカースタイルですが、1試合単位で見るピッチ上の利点以外にも様々な箇所でその効果が浮き彫りになってきています。
分かりやすい例を挙げるとするならリクルート面。サッカーの具体的な中身がどうであれ、一貫した戦略の下で全員が同じ方向を見て取り組んでいける環境=競技スタイルが定着したクラブでは、ここでなら成長できると野心を持った選手達が続々と集まる事となります。現に長谷川元希・太田修介のようなJ2屈指のアタッカーも現存のサッカースタイルが無かったらオレンジブルーを纏う世界線が訪れなかったかもしれません。
ただ、経済規模が近いモンテディオ山形や東京ヴェルディの近年の取り組みを見ると「スタイルが存在するから安泰だ!」という考えは安直な物に映ってしまうかと思います。近年の取り組みによって先鋭化していた新潟ですが、前述したような他クラブの追従が目立つようになり、サッカーの志向性が一貫している事だけでは国内における優位性を確保する事が難しくなる時代が徐々に近づいているのかなと個人的に思っています。
だからこそ大事になるのが現状の方向性を徹底的に突き詰めて、10年後も共通言語を存続させるように文化レベルでサッカースタイルを築き上げる事。そして、細かな所にも独自性を見つけて新潟のアイデンティティを確固たる物にする事。そのような独自性の一つが「新潟から監督を輩出する」今回の樹森大介監督誕生劇に繋がっていると推察しています。
新潟のサッカーを継承する適任が存在するのなら経歴を問わずに抜擢する。人が変わっても評価軸は変えず、適切にサイクルを回しながら競技面では確固たるスタイルを構築して、そのようなブランドイメージをクラブのアイデンティティにまで引き上げていく。長期的な視点に立ってチーム強化に努める事で、アルビレックス新潟というクラブの規模を拡大して、最終的に国内で唯一無二の立場を定着させる、そんな壮大な物語の新章を始めるつもりなのだと、個人的に寺川強化部長から隠れたメッセージを受け取った気でいます。
樹森監督の招聘について、良いも悪いも捉え方は様々あって良いと思います。実際の成否がどう転ぶかはまだ分かりませんし、もしかしたら思い描いていた光景とは程通くなっているリスクだって孕んでいます。そこで人事を捉える上で個人的に大事にしたいのが、その選択にはどのような意思決定が動いていたのかどうか。寺川強化部長や樹森監督、そして水戸ホーリーホック関係者(https://note.com/ntakurou815/n/nb0efe90b1c69)の声を聞くと、決してパニックバイではなく、考えに考えてオファーを出して引き受けてもらった新潟側のハードワークが伝わってきました。その背景も解釈した上で、2025年のチームは信じるに値すると思っています。
上手くいく/いかないを全部ひっくるめて、どんなチーム強化のプロセスを歩んでいくのか。ここは1人のサッカーファンとして楽しんでいきたいと思います。そして1人の新潟サポーターとしては樹森監督の退任後、アルベルトや松橋力蔵のように去る者が残した功績をハッキリと言語化できる世界線が待っているように、在任中の彼の一挙手一投足を心から応援していきたいですね。
そんな中で現場のトップチームスタッフに求められるのは既存戦力のスキルを伸ばしていける指導力。新たに選手を連れてくるよりも、今目の前に居る選手達を磨きながらチームの総合力を高めていく。そして場合によっては買ってきた額より高値で売って、また新たな才能を確保する為の原資に費やす。そのような予算が限られる地方クラブの適切な在り方を実現する、更には健全なチーム強化のサイクルを回していく中でトップチーム監督には指導力が保証されていて欲しいのかなと思います。指導対象となるのは若手と目される選手が多くなる訳ですから、育成組織で腰を据えて指導に当たってきた要素は決して無視できない物となります。
樹森監督の水戸での10年以上の経験はそれを裏付けする物ですし、実際は彼の他に候補者が居たとしても、新潟のサッカーに理解がある側面も重なって結果として優先的に新潟のレーダーに乗ってきたのだと認識しています。
続いて「クラブのブランド力」。
ボールを保持する事で試合自体の優位性を確保する。限られた人的リソースの中で、勝ち点3の可能性を十二分に高めていく。アルベルト体制から本格的に根付かせてきた新潟のサッカースタイルですが、1試合単位で見るピッチ上の利点以外にも様々な箇所でその効果が浮き彫りになってきています。
分かりやすい例を挙げるとするならリクルート面。サッカーの具体的な中身がどうであれ、一貫した戦略の下で全員が同じ方向を見て取り組んでいける環境=競技スタイルが定着したクラブでは、ここでなら成長できると野心を持った選手達が続々と集まる事となります。現に長谷川元希・太田修介のようなJ2屈指のアタッカーも現存のサッカースタイルが無かったらオレンジブルーを纏う世界線が訪れなかったかもしれません。
ただ、経済規模が近いモンテディオ山形や東京ヴェルディの近年の取り組みを見ると「スタイルが存在するから安泰だ!」という考えは安直な物に映ってしまうかと思います。近年の取り組みによって先鋭化していた新潟ですが、前述したような他クラブの追従が目立つようになり、サッカーの志向性が一貫している事だけでは国内における優位性を確保する事が難しくなる時代が徐々に近づいているのかなと個人的に思っています。
だからこそ大事になるのが現状の方向性を徹底的に突き詰めて、10年後も共通言語を存続させるように文化レベルでサッカースタイルを築き上げる事。そして、細かな所にも独自性を見つけて新潟のアイデンティティを確固たる物にする事。そのような独自性の一つが「新潟から監督を輩出する」今回の樹森大介監督誕生劇に繋がっていると推察しています。
新潟のサッカーを継承する適任が存在するのなら経歴を問わずに抜擢する。人が変わっても評価軸は変えず、適切にサイクルを回しながら競技面では確固たるスタイルを構築して、そのようなブランドイメージをクラブのアイデンティティにまで引き上げていく。長期的な視点に立ってチーム強化に努める事で、アルビレックス新潟というクラブの規模を拡大して、最終的に国内で唯一無二の立場を定着させる、そんな壮大な物語の新章を始めるつもりなのだと、個人的に寺川強化部長から隠れたメッセージを受け取った気でいます。
樹森監督の招聘について、良いも悪いも捉え方は様々あって良いと思います。実際の成否がどう転ぶかはまだ分かりませんし、もしかしたら思い描いていた光景とは程通くなっているリスクだって孕んでいます。そこで人事を捉える上で個人的に大事にしたいのが、その選択にはどのような意思決定が動いていたのかどうか。寺川強化部長や樹森監督、そして水戸ホーリーホック関係者(https://note.com/ntakurou815/n/nb0efe90b1c69)の声を聞くと、決してパニックバイではなく、考えに考えてオファーを出して引き受けてもらった新潟側のハードワークが伝わってきました。その背景も解釈した上で、2025年のチームは信じるに値すると思っています。
上手くいく/いかないを全部ひっくるめて、どんなチーム強化のプロセスを歩んでいくのか。ここは1人のサッカーファンとして楽しんでいきたいと思います。そして1人の新潟サポーターとしては樹森監督の退任後、アルベルトや松橋力蔵のように去る者が残した功績をハッキリと言語化できる世界線が待っているように、在任中の彼の一挙手一投足を心から応援していきたいですね。
③なぜJ2からの獲得がメインとなっているのか
監督人事から話題を変えて、残り2項目では2025年の陣容をテーマに疑問を設定してみました。先ずは確定版のスカッド図をご覧いただきましょう。
【白鳥】
よく不安視されているのが、外国籍選手を除く他クラブから完全移籍加入選手が全員J2上がりという経歴について。落合陸は柏レイソルから保有権を全て買い取った事になっていますが、こうして獲得に値すると評価されたのも昨季に期限付き移籍先の水戸ホーリーホックで活躍したからであって、柏レイソルでは殆ど出場機会を得られていないというバックボーンがあります。新体制会見で落合本人が「水戸ホーリーホックから来ました(https://www.youtube.com/watch?v=h5LzehT4BXs&t=555s)」と自己紹介で述べているのも色々と示唆に富んでいますね。そんな彼も含めると、新加入選手達に対して、J1で活躍する事を保証するような実績がそれぞれ乏しく映ってしまうのは決して否めないのかなと思います。
もちろん大掛かりな人件費を計上できない予算的なディスアドバンテージについて、新潟を追いかける上では無視できない現実として直視する必要があります。ただ、そのような事情があっても昨季はフリートランスファーとはいえ小野裕二を引っ張ってこれた位ですから、J1からの選手獲得も度を過ぎた要望でなければ全然叶えられるのだと思います。
なら何故日本人選手についてはJ2からの獲得が100%を占めたのか。先ず、今オフではここ数年で主軸を張っていた選手や貴重なバックアッパーとしてチームを支えてきた選手達が当社比で多く抜けた事から、最低限今後2・3年の稼働を見込める選手を各ポジションに確保する必要があります。ベンチ入り20人の枠を勝ち取って主軸として活躍してもらいながら、次なる者にバトンを渡すイメージ。要は新たな小島享介を欲しているのです。
その為、J2で十分なプレータイムを記録してJ1へのステップアップを目論む大卒上がりの中堅選手達は新潟からすれば格好のターゲットとして映ります。J1から似たような年齢の選手達を獲得するには誰も彼も争奪戦を勝ち抜く必要があり、ならばJ2上がりの中堅選手を確保して、前の項目で言及した通り育成力に長けた監督の下に預けてJ1基準の選手に育て上げていく方が、新潟のようなクラブにとってはふさわしい戦略となる事でしょう。
更に、余程の事が無い限りは彼らにとって新潟がキャリアの天井となりやすい事も狙いの一つとして挙がるのではないかと思います。天井は言い過ぎだとしても、基本的に複数年契約を結ぶ中で決して安くないだろう違約金の発生がネックとなる事から現実的に他クラブからの急な引き抜きが考えにくいので、キャリアの中でも脂の乗った加入後数年間は新潟の主軸として計算可能となります。田代琉我や森昂大、新井泰貴ら今季加入してセンターラインを担う選手は特にそのような面を意識してプロファイリングされたのではないでしょうか。
また、それぞれが所属元で長めのプレータイムを過ごしている、裏を返せば怪我無く安定的な稼働率を記録した実績があり、特に大きな問題が無ければシーズンを通して長い時間をピッチで過ごす事が期待されます。怪我人が多発した昨季の反省を踏まえると、新加入組が軒並み大きな離脱もなく前シーズンを過ごしてきたのは心強い事でしょう。
寺川強化部長から読み取れる選手獲得の傾向も見逃せない要素の一つです。2020年11月に強化部長として就任するまでは元々学生選手達を対象としたスカウトを担当しており、その時観ていた選手達がプロになっている現在、スカウト時代に積み重ねた選手情報やコネクションを強化部長就任以降も遺憾なく活用している印象があります。
実際にスカウト時代から継続して追っていた選手に声をかけ続けて、数年越しに獲得を成就させたケースは枚挙にいとまがありません。そんな彼の慧眼に引っかかる選手が自然とJ2に在籍している事も本項目に対するアンサーの一つになりそうです。
橋本健人や宮本英治のような例を戦力化に成功した事を考えても、上述したような強化方針には自信を持って良いと思います。また、強化部の中で選手個別の選定条件や全体的な強化方針に明確な指針が定義されている事は何となく伺えるので、樹森監督の選定と同様に、今オフの選手獲得についても明確に意図を持ったチャレンジができている、信頼に値するのではないかと評価しています。
もちろん大掛かりな人件費を計上できない予算的なディスアドバンテージについて、新潟を追いかける上では無視できない現実として直視する必要があります。ただ、そのような事情があっても昨季はフリートランスファーとはいえ小野裕二を引っ張ってこれた位ですから、J1からの選手獲得も度を過ぎた要望でなければ全然叶えられるのだと思います。
なら何故日本人選手についてはJ2からの獲得が100%を占めたのか。先ず、今オフではここ数年で主軸を張っていた選手や貴重なバックアッパーとしてチームを支えてきた選手達が当社比で多く抜けた事から、最低限今後2・3年の稼働を見込める選手を各ポジションに確保する必要があります。ベンチ入り20人の枠を勝ち取って主軸として活躍してもらいながら、次なる者にバトンを渡すイメージ。要は新たな小島享介を欲しているのです。
その為、J2で十分なプレータイムを記録してJ1へのステップアップを目論む大卒上がりの中堅選手達は新潟からすれば格好のターゲットとして映ります。J1から似たような年齢の選手達を獲得するには誰も彼も争奪戦を勝ち抜く必要があり、ならばJ2上がりの中堅選手を確保して、前の項目で言及した通り育成力に長けた監督の下に預けてJ1基準の選手に育て上げていく方が、新潟のようなクラブにとってはふさわしい戦略となる事でしょう。
更に、余程の事が無い限りは彼らにとって新潟がキャリアの天井となりやすい事も狙いの一つとして挙がるのではないかと思います。天井は言い過ぎだとしても、基本的に複数年契約を結ぶ中で決して安くないだろう違約金の発生がネックとなる事から現実的に他クラブからの急な引き抜きが考えにくいので、キャリアの中でも脂の乗った加入後数年間は新潟の主軸として計算可能となります。田代琉我や森昂大、新井泰貴ら今季加入してセンターラインを担う選手は特にそのような面を意識してプロファイリングされたのではないでしょうか。
また、それぞれが所属元で長めのプレータイムを過ごしている、裏を返せば怪我無く安定的な稼働率を記録した実績があり、特に大きな問題が無ければシーズンを通して長い時間をピッチで過ごす事が期待されます。怪我人が多発した昨季の反省を踏まえると、新加入組が軒並み大きな離脱もなく前シーズンを過ごしてきたのは心強い事でしょう。
寺川強化部長から読み取れる選手獲得の傾向も見逃せない要素の一つです。2020年11月に強化部長として就任するまでは元々学生選手達を対象としたスカウトを担当しており、その時観ていた選手達がプロになっている現在、スカウト時代に積み重ねた選手情報やコネクションを強化部長就任以降も遺憾なく活用している印象があります。
実際にスカウト時代から継続して追っていた選手に声をかけ続けて、数年越しに獲得を成就させたケースは枚挙にいとまがありません。そんな彼の慧眼に引っかかる選手が自然とJ2に在籍している事も本項目に対するアンサーの一つになりそうです。
橋本健人や宮本英治のような例を戦力化に成功した事を考えても、上述したような強化方針には自信を持って良いと思います。また、強化部の中で選手個別の選定条件や全体的な強化方針に明確な指針が定義されている事は何となく伺えるので、樹森監督の選定と同様に、今オフの選手獲得についても明確に意図を持ったチャレンジができている、信頼に値するのではないかと評価しています。
④真ん中のアタッカーが多すぎる!
【CF】
・小野裕二
・矢村健
・若月大和 (左右WGも併用)
【OMF/ST】
・長谷川元希 (左WGも併用)
・奥村仁 (左WGも併用)
・落合陸 (左右WGもCHも併用)
・笠井佳祐 (CFも併用)
・高木善朗
・ミゲル シルヴェイラ ドスサントス (左右WGも併用)
4-4-2想定で真ん中のアタッカーを務めるであろう選手達を挙げてみました。分かりやすくトップ下のタイプが多すぎますね笑。併用できるポジションも一応重ね書きしましたが、それでも全員がセントラルで起用する方が望ましい選手である事実は否定できません。この問題に関しては正直推察しようにも限界がありますが、逆に現実離れとも捉えられるような人数過多を敷いてる事で、何らかの狙いがあるとみて間違いないと思います。
先ず認識しておきたいのが、この陣容を組んでいるのは樹森監督ではなく寺川強化部長だという事実。監督決定の遅れもあって、編成については殆ど監督の意見を反映できていないかつ強化部が独自で進めてきたと寺川強化部長自身が語っているので、その発言を参照すると誰の頭の中を覗くべきなのかが自ずと定まってくる事でしょう。
個人的には「監督に選択肢を与える事」「強化部がサイドアタッカーに求める事」の2点が起因したトップ下の渋滞だと結論づけています。
「監督に選択肢を与える事」。来季は交代枠が7→9に増枠される事が決まっており、以前よりもベンチメンバーに対して幅を持たせるような選手起用が可能となっています。7枠当時では基本はGK+DF2枚+MF3枚+FW1枚で、MF3枚にはボランチとサイドアタッカーを必ず固定していたので、FWの枚数次第ではいわゆるゲームチェンジャーのようなセントラルアタッカーをベンチに置きにくい側面がありました。ただ、ベンチ枠が2つ増えた今季は彼らのような真ん中で効力を発揮する存在が入り込める余白が生まれましたし、起用法に幅を持たせる意味でも、選択肢を通常より広く用意したのかなと思います。
「強化部がサイドアタッカーに求める事」。決して悪い意味ではなく、この部分に対して観ている側と強化部がそれぞれ抱くサッカー観の齟齬が、結果的に観ている側にトップ下が多すぎると映ってしまっているのかもしれません。
寺川強化部長が就任以降、ドリブラーと位置付けられるサイドアタッカーを独自で獲得した・獲得に動いていた実績は少なく、思い返す限りだと松橋前監督が就任した当時にドリブラー(=WG)のオーダーを受けた2022年にイッペイシノヅカ・松田詠太郎を獲得した時くらいではないでしょうか。彼らのように大外をメインにスタートポジションを確保する、敵をドリブルでやり込むタイプよりは、どちらかというとプレーエリア(外側/中央)を問わず、味方との連携で敵陣を崩していける選手を好んでいる節が強化部からは感じられます。
現在は右ワイドを主戦場とする太田修介も獲得当時の町田では3バックのシャドーとして真ん中寄りで価値を発揮していたように純粋なサイドアタッカーとはまた違ったタイプですし、彼らのようにプレースタイルに幅がある選手を獲得して、彼らの余白をどう調理するのかは指導陣にお任せする傾向にあります。このようにアンサーになっているかは正直微妙な所ですが、自分達が真ん中だと思いこんでいる選手が実はサイドでも起用できると睨まれていて、蓋を開けてみたら「この選手をここで使うのか!」という驚きの起用法が見られるのかもしれませんね。
・小野裕二
・矢村健
・若月大和 (左右WGも併用)
【OMF/ST】
・長谷川元希 (左WGも併用)
・奥村仁 (左WGも併用)
・落合陸 (左右WGもCHも併用)
・笠井佳祐 (CFも併用)
・高木善朗
・ミゲル シルヴェイラ ドスサントス (左右WGも併用)
4-4-2想定で真ん中のアタッカーを務めるであろう選手達を挙げてみました。分かりやすくトップ下のタイプが多すぎますね笑。併用できるポジションも一応重ね書きしましたが、それでも全員がセントラルで起用する方が望ましい選手である事実は否定できません。この問題に関しては正直推察しようにも限界がありますが、逆に現実離れとも捉えられるような人数過多を敷いてる事で、何らかの狙いがあるとみて間違いないと思います。
先ず認識しておきたいのが、この陣容を組んでいるのは樹森監督ではなく寺川強化部長だという事実。監督決定の遅れもあって、編成については殆ど監督の意見を反映できていないかつ強化部が独自で進めてきたと寺川強化部長自身が語っているので、その発言を参照すると誰の頭の中を覗くべきなのかが自ずと定まってくる事でしょう。
個人的には「監督に選択肢を与える事」「強化部がサイドアタッカーに求める事」の2点が起因したトップ下の渋滞だと結論づけています。
「監督に選択肢を与える事」。来季は交代枠が7→9に増枠される事が決まっており、以前よりもベンチメンバーに対して幅を持たせるような選手起用が可能となっています。7枠当時では基本はGK+DF2枚+MF3枚+FW1枚で、MF3枚にはボランチとサイドアタッカーを必ず固定していたので、FWの枚数次第ではいわゆるゲームチェンジャーのようなセントラルアタッカーをベンチに置きにくい側面がありました。ただ、ベンチ枠が2つ増えた今季は彼らのような真ん中で効力を発揮する存在が入り込める余白が生まれましたし、起用法に幅を持たせる意味でも、選択肢を通常より広く用意したのかなと思います。
「強化部がサイドアタッカーに求める事」。決して悪い意味ではなく、この部分に対して観ている側と強化部がそれぞれ抱くサッカー観の齟齬が、結果的に観ている側にトップ下が多すぎると映ってしまっているのかもしれません。
寺川強化部長が就任以降、ドリブラーと位置付けられるサイドアタッカーを独自で獲得した・獲得に動いていた実績は少なく、思い返す限りだと松橋前監督が就任した当時にドリブラー(=WG)のオーダーを受けた2022年にイッペイシノヅカ・松田詠太郎を獲得した時くらいではないでしょうか。彼らのように大外をメインにスタートポジションを確保する、敵をドリブルでやり込むタイプよりは、どちらかというとプレーエリア(外側/中央)を問わず、味方との連携で敵陣を崩していける選手を好んでいる節が強化部からは感じられます。
現在は右ワイドを主戦場とする太田修介も獲得当時の町田では3バックのシャドーとして真ん中寄りで価値を発揮していたように純粋なサイドアタッカーとはまた違ったタイプですし、彼らのようにプレースタイルに幅がある選手を獲得して、彼らの余白をどう調理するのかは指導陣にお任せする傾向にあります。このようにアンサーになっているかは正直微妙な所ですが、自分達が真ん中だと思いこんでいる選手が実はサイドでも起用できると睨まれていて、蓋を開けてみたら「この選手をここで使うのか!」という驚きの起用法が見られるのかもしれませんね。
おわりに
ここまで読んでみて思った方も居るかもしれませんが、新潟では国内他クラブでの「当たり前」が当たり前としてそのまま適用されにくい環境となっています。そこに面白さを感じたり、時には不満を抱く事だってあるかもしれません。自分だって幾つかの点には正直納得がいっていません。
それでも、何かを起こしたという事はそこに何かしらの意図が内包されている筈ですし、少なくとも新潟の強化部はそう在り続けています。散りばめられたヒントを集めて彼らの意図を読み解く事で少しでもアルビレックス新潟の頭の中を覗いていく。その過程を消化していく事で、開幕後のシーズンをより深く楽しんでいけるのだと自分は思っています。
そんなこんなで今後もアルビレックス新潟の移籍シーズンを楽しんでいきたいなと心から思わされた2024→25年のストーブリーグでした。ここまでご覧いただきありがとうございました!
それでも、何かを起こしたという事はそこに何かしらの意図が内包されている筈ですし、少なくとも新潟の強化部はそう在り続けています。散りばめられたヒントを集めて彼らの意図を読み解く事で少しでもアルビレックス新潟の頭の中を覗いていく。その過程を消化していく事で、開幕後のシーズンをより深く楽しんでいけるのだと自分は思っています。
そんなこんなで今後もアルビレックス新潟の移籍シーズンを楽しんでいきたいなと心から思わされた2024→25年のストーブリーグでした。ここまでご覧いただきありがとうございました!
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