選手にSNS活用術をレクチャーする 「IT活用でJクラブは変わる」第4回

えとみほ(江藤美帆)

今回は選手個人のSNS活用についての話です 【(C)J.LEAGUE】

 こんにちは、えとみほです。前回は、Twitter(ツイッター)の公式アカウントを使った「ソーシャルリスニング」についてお話しましたが、今回は10月10日に栃木SCのクラブハウスで行われた選手向けのSNS講習についてお話ししたいと思います。

プロアスリートはSNSをやるべきか否か問題

 まず今回のセミナーを開催することになった最初のきっかけは、私がnote(ノート)にこんなエントリーを公開したことがきっかけでした。
 詳細はリンク先をお読みいただきたいのですが、ざっくり言うと、SNSのフォロワーはチームを移籍したり引退したりしても残る個人の資産になるので、現役のうちに資産をストックしておいたほうが良いですよ、そのためにはアスリートなら炎上しづらいInstagram(インスタグラム)から始めるのが良いのではないですか?といった話が書いてあります。

 一方で、スポーツの現場には現役アスリートがSNSで発信することについて否定的な見方をする人たちもいます。よく言われるのは「何かあったときのブランド毀損(きそん)が怖い」「競技に専念してもらいたい」「そもそも自分たちがSNSをやらないのでよく分からない(分からないものは怖い)」といった理由です。実際に、Jリーグクラブには選手のSNS発信を原則禁止していたり、やってはいけない空気があるところも少なくないようです。

 確かに、私もクラブスタッフになってみて、そのようなリスクを感じることはあります。いくら選手は個人事業主であるとはいえ、クラブの看板を背負っているわけですから、個人の発信において何か不手際があった場合に大きな問題に発展してしまう可能性もないとは言い切れません。

 とはいえ、私はもはや「SNSをやらない」という選択肢はなくなっていくだろうと考えています。というのも、デジタルマーケティングで先を行く海外の地域では、プロのアスリートがSNSアカウントを「個人のメディア」として活用し、マスメディアに頼らずに自分の意見を発信したり、企業からの広告収入を得たりすることが当たり前になってきているからです。世界でもトップレベルの選手になると、スポーツ用品のPR投稿を1投稿するだけで1億円ほどの収入がある選手もいます。

 このような時代に、クラブが無条件に一律で「SNS禁止」を言い渡すのは、各クラブの方針はあるかと思いますが、個人的には時代にそぐわないような気がしています。個人事業主である選手自身が、ブランド力のある現役時代にSNSのフォロワーを獲得し、信用を目に見える形で蓄積していくことは、彼らの「権利」なのではないかと私は考えます。

 とはいえ、先ほども言ったように選手がクラブの看板を背負って活動しているという面は否めませんし、何かあった場合にはクラブのスポンサー企業にも迷惑がかかってしまう可能性があります。このようなリスクを管理するために、セミナーを開催する運びとなりました。

まずは「やってはいけないこと」を確認する

 今回、栃木SCのクラブハウスで実施したSNSセミナーは、おもに27歳以下の若手選手を対象に行いました。これまで選手と関わってきた中で感じるのは、25〜27歳を境にSNSアクティブ率が大きく変わるということです。具体的に言うと、この年齢より下の世代は「やりましょう」と言わなくても、勝手にSNSを利用している選手が多いのです。

 となると、彼らにまず必要なのはSNSを安全に使うための知識なのではないかと思います。そこで、SNSマーケティング界隈では知らない人はいないというソーシャルメディアコンサルタントの「jigen_1(@kloutter)」(以下、じげんさん)に講師を依頼し、サッカー選手が気をつけるべき発信のポイントについて伝授していただきました。ここでは、その中の一部を抜粋してお伝えします。

jigen_1(@kloutter)さんは「顔出しNG」の謎のインフルエンサー 【提供:江藤美帆】

【気をつけなければならないこと】
・著作権や肖像権を侵害するような投稿をしない(テレビ番組を撮影したもの、サポーターとの記念写真などを無断で投稿すること)
・商品名や店名などを出してネガティブな評価をしない
・災害時に不謹慎な投稿を行わない
・スタメン情報などの機密を漏洩しない(試合前日にどこにいるかが分かるだけでも、遠征に帯同していないことが分かるので要注意)
・試合日のロッカールーム等の動画を流さない(放映権契約の関係で動画の発信は権利侵害となる恐れがあるため)
・その他、常識に照らし合わせて好ましくない発言

 上記に加え、「試合に負けた日は投稿してもいいか」「ファン・サポーターコメントにはどう対応するのが良いか」「誹謗中傷されたら」といったテーマについても、具体的にレクチャーしていただきました。

 また、一通りリスクについて説明した後は、今度は「ファン・サポーターは、アスリートにどのような投稿を望んでいるのか」について、サポーターの目線から解説を行っていただきました。

 選手たちは、若手中心ということで大半がすでに個人のSNSアカウントを所有しており、最後まで興味深そうに話を聞いてくれました。

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著者プロフィール

Jリーグ・栃木SC、マーケティング戦略部長。外資IT企業、大手ネット系広告代理店勤務などを経て、スマホで写真が売れちゃうアプリ「Snapmart」を開発、ピクスタ100%出資子会社のスナップマート株式会社の代表取締役に就任。2018年3月に代表を退任し、5月より現職

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