投手・大谷の2018年<前編> メジャーでも屈指の球速だが…

丹羽政善

大谷とバーランダーらとの違い

メジャーでも屈指の球速を誇る大谷だが、4シームの被打率は3割8分を超える 【Getty Images】

 後日、そのことを目の当たりにすることになる。

 4月24日のアストロズ戦のこと。大谷はこのとき、5回1/3でマウンドを降りたが、許した6安打のうち5本が4シームを打たれたもの。ことごく真っ直ぐを狙われ、しかも芯で捉えられた。マーウィン・ゴンザレスには100.1マイル(約161キロ)の4シームを引っ張られ、一、二塁間を破られている。

 球速を考えれば、球種が分かっていたとしても当てることが難しいはずなのに、なぜか。

 球速に関しては、メジャーでも屈指。以下に先発投手の平均球速トップ5をまとめたが、大谷は4位に入っている。

■4シームの平均球速ベスト5(50イニング以上、9月15日時点)
1.ノア・シンダーガード(メッツ):97.7マイル(約157.2キロ)
2.ルイス・セベリーノ(ヤンキース):97.6マイル(約157.1キロ)
3.ネーサン・イオバルディ(レッドソックス):97.0マイル(約156.1キロ)
4.大谷翔平(エンゼルス):96.7(約155.6キロ)
5.ジェリット・コール(アストロズ):96.6マイル(約155.5キロ)

 ところが、その4シームに関して、打者がスイングして空振りした割合(左)と被打率(右)を主な好投手と比べると、こうなった。(9月21日時点)

大谷翔平:21.11%、3割8分2厘
ノア・シンダーガード:14.41%、2割5分5厘
ジェイコブ・デグロム(メッツ):32.03%、1割9分9厘
ジャスティン・バーランダー(アストロズ):29.04%、2割2分0厘
エドウィン・ディアズ(マリナーズ):30.11%、1割9分8厘
マックス・シャーザー(ナショナルズ):30.45%、1割9分4厘
ゲリット・コール(アストロズ):29.62%、1割7分5厘
アロルディス・チャプマン(ヤンキース):30.43%、1割5分0厘
ジェームス・パクストン(マリナーズ):26.50%、2割4分8厘
ネーサン・イオバルディ:24.92%、2割3分1厘
ルイス・セベリーノ:19.65%、2割7分8厘
ダルビッシュ有(カブス):22.03%、2割5分5厘

 実は平均球速1位のシンダーガードも空振りを取れないタイプだが、大谷も20%をわずかに超える程度。バーランダーらが30%前後なのと比べると差があり、なにより被打率が突出している。しかも、ハードヒットが少なくないのである。

 では、空振りを取れる4シームというのは、打者・大谷ではなく、投手・大谷にはどう映るのか。

「個々に違う良さがあると思うので、空振りが取れたからいいとか、取れないからダメだっていうこともない」

 先日、大谷に聞くとそう話したが、9月21日にコール、22日にバーランダーと打者として対戦した後、彼らの球質の体感については、こんな特徴を口にした。

「狙っていてもファウルになるケースっていうのは、他のピッチャーより確実に多い」

 彼らとの対戦でファウルになったいくつかは、大谷が時々口にする「いいルート」でバットを出していても、捉えきれなかった――。

 ではそもそもなぜ、球質に違いが生まれるのか。次回はその理由を探っていきたい。

≪後編は10月3日に掲載予定≫

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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