シンガポールで見えたトロロッソの現実 ライバルとのマシン性能差が露呈か

F1速報

ギャンブルを選択するも戦略ミス

シンガポールGP、ガスリーは決勝レースで13位完走に終わった 【Toro Rosso】

 決勝では15番、17番グリッドスタートゆえにハイパーソフトでスタートするギャンブルを敢えて選んだ。周りと同じウルトラソフトタイヤで同じ戦略を採っても、入賞圏までポジションアップできるほどのチャンスは巡ってこないからだ。

 スタートでピエール・ガスリーが12番手まで浮上したのは、ギャンブルが成功したからだ。そこからのペースも、前のニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)についていき、後ろのザウバー勢に脅かされることはなかった。

 しかし、タイヤがタレてきた15周目あたりからはペースが落ち、苦戦を強いられた。ここでピットインせず26周目まで引っ張ってしまったのが失敗だった。

「思っていたよりもデグラデーションが大きくて15〜16周目にはタイヤがタレ始めてしまって、かなり苦しんでしまった。そこから26周目まで引っ張ったけど、それはかなりタフだった。ウルトラソフトに履き替えてからは(セルゲイ・)シロトキンに抑え込まれたり、ブルーフラッグの混乱があったり、もうめちゃくちゃだったね。そのあたりで15〜20秒は失ったし、レースはかなり妥協を強いられてしまった。いずれにしても今週末の僕らにはトップ10圏内で争う力はなかったけどね」(ガスリー)

 15周目に早々にピットインを済ませたヒュルケンベルグに比べ、ガスリーは26周目まで引っ張ったことで、ヒュルケンベルグのピットストップ前は1.2秒だった両者の差は12秒まで広がってしまった。そしてヒュルケンベルグが10位でフィニッシュしたのに対し、ガスリーは14位に終わった(ロマン・グロージャンの5秒加算ペナルティで、ガスリーの順位が繰り上がって最終結果は13位)。

「デグラデーションはほぼわれわれの想定通りだったんだ。しかしガスリーについては本来想定していたよりも長く引っ張ってからピットインさせざるを得なかった。そうしていなければ極めて遅いウイリアムズ勢のトラフィックに捕まってしまってさらに大きくタイムロスすることになっていたはずだからね。もし本来の予定通りに20周目あたりでピットインしてウルトラソフトでもっと長く走ることができていれば、結果は変わったかもしれない」

 エドルスがそう語るように、トロロッソは中団勢の最後方にいたウイリアムズ勢を見て、彼らと十分なギャップができるまではピットインしたくなかった。しかしガスリーの低下したペースを見れば、それは現実的ではなかった。ヒュルケンベルグと同じタイミングでピットインしていれば、傷口はあそこまで広がることはなかったのだ。

 ヒュルケンベルグと同じタイヤを履いていたのだから、ガスリーは10位争いができたはずだった。それが入賞の望みのないレースになってしまったのは、ハイパーソフトでスタートするギャンブルが失敗だったからではなく、ギャンブルに成功したにもかかわらずその後の戦略が失敗だったからだ。

実力通りの結果が露呈しただけ?

ハートレーも終日苦戦し17位に終わる 【Toro Rosso】

 ただし、純粋なペースが足りないことも事実だった。

「ピットインした直後に新品のウルトラソフトを履いたガスリーは、それまで争っていた相手であり25周も古いウルトラソフトを履いた(シャルル・)ルクレールとほぼ同じペースでしかなかった。つまりわれわれのクルマはそれだけ遅かったんだ、残念ながらね」(エドルス)

 第13戦ベルギーGPと第14戦イタリアGPでの好走が示したように、今のF1はパワーユニットの性能よりもマシン性能と戦略が大きくモノを言う。得意なはずのサーキットでも簡単に下位に転落してしまうほど、その影響は大きいのだ。

 実を言えば、第12戦ハンガリーGPからの3戦連続の好走は、コンディションやライバルの失策に助けられたものでもあったとチームは見ている。

「スパやモンツァではある意味、われわれよりも上位にいたはずのマシンが予選や決勝で本来の力を発揮することができなかったことで、ああいった結果になったと分析しているが、今回はほぼすべてのマシンが本来の力を発揮したことで、実力通りの結果になったんだ。このような結果になってしまったのがなぜなのか、同じようなサーキットであり競争力を発揮することができたモナコやハンガリーなどのサーキットと比べて何が違ったのか、それを分析して原因を究明する必要がある」

 つまり、ハンガリーでは予選の雨、ベルギーやイタリアではザウバーなどライバルが自滅したことであの位置まで浮上することができたが、トロロッソ・ホンダの本来の実力はシンガポールのような中団グループの下位だったのではないか。シンガポールでは、外的要因がなくその実力通りの結果が露呈しただけではないかというわけだ。

 実際のところ、STR13は第9戦オーストリアGPで投入した新型フロントウイングが失敗で実戦使用できず、基本的な空力パッケージはシーズン序盤戦とほとんど変わりがない状態だ。ルノーやザウバーが急速にアップデートを進める中で、相対的にマシンのパフォーマンスが低下しているのは否めない。

 はたして、シンガポールGPの結果が今のSTR13本来の実力なのか、他に何らかの要因があって実力を発揮しきれなかったのか。日本のファンにとっては、日本GPを前に大きな不安に直面することとなった。次戦ロシアGPまでにその答えが見つけられることを願いたい。

(テキスト:Mineoki Yoneya)

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