「君、パワーリフティングに向いてるよ」 才能見いだされた15歳・森崎可林

荒木美晴

初めての国際大会で日本記録更新

森崎(右)と、練習を見守る父の健一さん 【スポーツナビ】

 9月、初めての国際大会出場を果たした。福岡県で開催された「北九州2018ワールドパラ・パワーリフティングアジア‐オセアニアオープン選手権」。森崎はジュニア女子67キロ級にエントリー。自己ベストタイの47キロを第2試技で成功させると、さらに第3試技で50キロを挙げ、自らが持つ日本記録を更新した。

 照明と音楽が舞台を彩る特設ステージ。入場時に音楽に合わせて手を叩き、リラックスしているように見えたが、「実は集中できていませんでした」。直後の第1試技は、胸の上での「止め」の精度が甘く失敗。だが、これで逆に集中しなおすことができ、記録を残した。「大舞台で修正できたことは今後の自信になった」と森崎。

 この階級では、リオパラリンピック金メダリストのタン・ユージャオ(中国)が139キロを成功させ、目の前で世界記録を塗り替えた。そのパフォーマンスを肌で感じたことはもちろん、ステージ裏で集中力を高め自らを鼓舞する姿にも刺激を受けた。

 今大会を振り返り、森崎は「競技を始めてから、思った以上に事がうまく進んでいるように思います。自分自身で成長をかみしめていますが、トップとの差は歴然ですし、これから練習して、いつか追いつきたいと思っています」と言葉に力を込める。

 10月のアジアパラ競技大会(インドネシア)にも日本代表として選出されている。その後は日本選手権も控えるが、視線はさらにその先を向いている。「世界を見れば、私の階級では100キロを挙げないとメダルとか言っていられない。最終目標はパラリンピックに出場すること。2024年も視野に入れています」

多くはない競技者人数「まずは、身近なところから広まれば」

「同年代の選手が増えてほしい」と話す森崎。その願いをかなえるためにも、日々成長を続けていく 【スポーツナビ】

 もうひとつ、彼女には夢がある。パラ・パワーリフティングという競技を世に広めることだ。パラリンピックでは人気競技のひとつだが、国内での競技者の数は決して多くない。とくに女子選手は少なく、昨年12月の日本選手権でも実施されたのは10階級中7階級。エントリーは8人だけだった。

 そのうち、10代の女子選手は森崎ただひとり。「とくに同年代の選手が増えてほしい」と願う。「高校では自分が表彰されたりして、少しずつ競技に興味を持つ人が増えたと実感しています。インスタでは、私の知らない人から『頑張ってください』とメッセージをもらうこともあります(笑)。まずは、身近なところから広まればいいなと思いますね」

 そのためには、結果を残していくことが大事だということも分かっている。成長曲線を描く15歳は自分自身を見つめながら、これからも真摯にパラ・パワーリフティングの道を追求していくつもりだ。

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著者プロフィール

1998年長野パラリンピックで観戦したアイススレッジホッケーの迫力に「ズキュン!」と心を打ち抜かれ、追っかけをスタート。以来、障害者スポーツ全般の魅力に取り付かれ、国内外の大会を取材している。日本における障スポ競技の普及を願いつつマイペースに活動中

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