戦えることを証明したトロロッソ・ホンダ パワー差を車体性能で挽回した高速2連戦

F1速報

苦戦を覚悟して臨んだ高速サーキット

ベルギーGPは9位入賞を果たしたピエール・ガスリー 【Toro Rosso】

 夏休み明けの高速連戦、F1第13戦ベルギーGPスパ・フランコルシャンと第14戦イタリアGPモンツァでトロロッソ・ホンダは快走を見せた。スパでは9位入賞を果たし、予選Q1突破すら難しいと思われていたモンツァではQ3進出を果たした。

 この2戦で改めて浮き彫りになったのは、最速コーナリングマシンである現行F1マシンの速さを決する最大の要素は空力性能であり、高速サーキットといえどもパワーユニット(PU/エンジン)の非力さは致命的な要素とはならないということだ。

 他チームがスパでモンツァと共用のリヤウイングを使用する中、トロロッソ・ホンダはモンツァ用のウイングを持ち込んでおらず、それよりもダウンフォース量とドラッグが大きなオーストリアやカナダで使った空力パッケージで走行していた。そのため最高速は伸びず、チームは苦戦を覚悟していた。

 しかし各チームが実際に走ってみると、全開区間が主たるセクター1とセクター3を優先するよりも、ダウンフォースをつけて中高速コーナーが連続するセクター2でタイムを稼いだ方がラップタイムが速くなるということが明らかになり、多くのチームがその方向へとシフトしていった。結果的に、これがトロロッソ・ホンダに味方することになった。

「レース週末の中で予選あたりから周りのチームがダウンフォースをつけ始めてきて、われわれのセクター1と3の不利が小さくなったことがレースに向けていいポジションにつけることに繋がったのではないかと思います。全体的にダウンフォースをつける方向に行って、われわれとしてはセクター2できちんと走れるセットアップを施した状態でも、ストレートで簡単に抜かれてしまうということにならなかったのは幸運でした」と田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクターは語る。

金曜苦戦からの修正が功を奏したモンツァ

ベルギーGPで走行するガスリー 【Toro Rosso】

 モンツァでは専用の薄いリヤウイングを投入したが、ダウンフォースの少ない状態で初日金曜のフィーリングは両ドライバーとも良くなかった。そのためコーナーが多いセクター2のタイムが遅く、下位に低迷した。

「気持ち良く走れる状態ではなかった。問題はリヤのスタビリティだね。マシンが予測不可能な挙動を示すんだ。マシンバランスに一貫性がなくてコーナーごとにマシン挙動が違って、マシンがどんな反応を示すか予測ができない。同じコーナーでも毎周リヤのステップアウトの仕方(グリップの抜け方)が違ったりね。限界ギリギリまでプッシュするのには理想的な状態ではなかったよ」(ピエール・ガスリー)

「モンツァ専用のリヤウイングもすごく良くてドラッグはかなり削減されている。セクター2で大きくタイムロスをしているから、あまり最高速を犠牲にしない範囲でいくらかダウンフォースをつけてどれだけ稼げるかを考えなければならない。ストレートが長いとはいえ、中高速コーナーもあるのがモンツァだからね。その最適な妥協点を見出すのが重要になるんだ」(ブレンドン・ハートレー)

「セクター2でどう稼ぐかが課題なんですが、セクター2で稼ごうとするとダウンフォースをつける方向になってセクター1と3が落ちてきてしまうと思われるので、そこのバランスをうまく取れるかどうかですね。あとは立ち上がりのトラクションも必要ですから、脚回りをいかにセッティングできるかというところに懸かってくると思います」(田辺テクニカルディレクター)

 モンツァでもまさしくスパと同じような問題に直面したが、スパとは正反対にダウンフォースを削る方向からスタートした週末は厳しい走り出しとなった。しかし金曜の夜にデータを精査し弾き出したセットアップ修正がうまくいった。

「金曜はリヤがすごく不安定でマシン挙動に一貫性がなくてマシンを信頼してドライブすることができなかった。特にこういう超高速サーキットではマシンの限界を引き出すのが難しいんだ。でも今日はフリー走行3回目からフィーリングが格段に良くなって、予選でもマシンバランスはとても良かった。金曜から土曜に思い通りのセットアップ変更の効果が得られないことも2018年シーズンここまでに何度かあったけど、今回はそれが完璧にうまくいったよ」(ガスリー)

 やはりダウンフォースをつけてコーナーで稼ぐ方向に持っていくことでトロロッソ・ホンダSTR13はそのポテンシャルを発揮した。いや、STR13に限らず、多くのマシンがそうだった。

 それが2000ミリ幅&ワイドタイヤで高いコーナリング性能を持つ現行レギュレーションのF1マシンであり、それはスパやモンツァのような高速サーキットでも言えることだ。

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