バド五輪レースに新ヒロインが加わった 世界選手権を制した長身ペア“ナガマツ”

平野貴也

4組出場した日本女子勢「まさか松本、永原が優勝するとは」

日本ペア対決となった決勝戦。永原、松本組は、前回銀メダルの福島、廣田組(奥)との戦いに勝利した 【大会公式提供】

 アグレッシブな戦術が、初出場で怖いものなしのメンタルとかみ合い、実績で上回る福島、廣田を凌駕(りょうが)した。決勝戦は、先にチャンピオンシップポイントを奪われる展開だったが、永原は初志貫徹で失点を恐れずに攻めた。

「最後まで自分たちの力を出し切りたいと思っていたので、開き直ってプレーできました」

 そして、20−20で追いつくと、すぐに1点を取ってリードした。

「その1点を取りに行くと、体が硬くなってしまうので、ここから3点取ろうと話して、2人で気持ちを入れ直しました」(松本)

 松本が相手コート後方に送ったクリアショットを、相手の福島にスマッシュされるもシャトルはアウト。勝負は決し、両手を突き上げて喜ぶ永原、松本と、伏せるように崩れ落ちる福島、廣田に明暗は分かれた。

 世界選手権における女子ダブルスの日本勢の優勝は、1977年に行われた第1回スウェーデン大会以来、41年ぶり。銅メダルを獲得した米元小春、田中志穂組(北都銀行)を含め、表彰台に日本勢3組が上り、国旗掲揚で日の丸が3つ並ぶ光景は壮観だった。

 それにしても、驚いた。日本から出場した4組の中で、他の日本のペアは第2〜4シードで優勝候補だったが、永原、松本組は第11シード。可能性はあったが、ワンランク下の下馬評で、日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチも「まさか松本、永原が優勝するとは思っていなかった」と驚いたことを認めた。
 しかし、見事な勝ち上がりだった。2回戦で地元の中国ペアに逆転勝利を収めてスタート。3回戦では、リオ五輪の金メダリストである高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)をストレートで撃破。続けて第7シードのタイペア、第5シードのインドネシアペアと格上シードを次々にストレートで破って快進撃を見せた。朴ヘッドコーチは「厳しいブロックだったのに、勝ち上がった。松本、永原が準決勝で勝たなければ、準決勝に3組進んだのに金メダルを取れなかった全英オープンのようになったかもしれない。まだ小さい技術の部分は伸ばさないといけないけど」と課題を指摘しつつ、日本が金、銀、銅メダルを獲得した好成績への貢献を称えた。

松本「五輪に向けて、大きな一歩を踏み出せたかな」

東京五輪での出場枠は「2」。強豪ペアがひしめく日本女子ダブルスの代表争いに、ナガマツが名乗りを上げた 【大会公式提供】

 気になるのは、2020年東京五輪における代表争いだ。日本の女子ダブルスは、かつてないハイレベルな競争で2つのいすを奪い合う格好になる。松本は「五輪に向けて、大きな一歩を踏み出せたかなと思っている。でも、日本の争いがここからし烈になってくると思う。そこをどう勝ち切るか、自分たちで話し合って、頑張っていきたい」と覚悟を示した。

 永原、松本組は、大会開幕直前の世界ランク(7月26日付)で9位となり、初めて1ケタ入りを果たした。最新の世界ランク(8月2日付)でも1ケタランクに4組がひしめき合っている状況だ。

 世界選手権前までは3強の争いだったが、若き長身ペアが「待った」をかけた。五輪で金でも世界選手権で金でも確約されない2枠獲得をかけた五輪レースに、ニューヒロインが加わった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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