【UFC】ショーグンに復活の好機到来 ライトヘビー級王座戦へと繋げるか!?

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元UFC世界ライトヘビー級王者マウリシオ・“ショーグン”・フア(左)が、久しぶりのリングに上がる 【Zuffa LLC】

 日本時間7月22日(日)夜から23日(月)にかけて開催される「UFCファイトナイト・ハンブルク」のメインイベントには、かつて日本でも“踏みつけ大将軍”のニックネームで大活躍した「PRIDE GP 2005」優勝者、元UFC世界ライトヘビー級王者、マウリシオ・“ショーグン”・フア(ブラジル)が待望の出場を果たす。

 PRIDE全盛期を飾ったファイターの中でも、今なおトップクラスで戦い続ける残り少ないサバイバーであるフアは当初、17年9月に行われた「UFCファイトナイト・ジャパン」のメインイベントとしてオヴィンス・サン・プルー(米国)との一戦が組まれ、久々の来日が期待されたが、残念ながら負傷欠場のため実現を見なかった。フアにとって今回は17年3月、ジャン・ビランテ(米国)にTKO勝ちを収めて以来、16カ月ぶりの試合となる。

ショーグン対ダンヘン、UFC殿堂入り



 フアといえば最近の大きな話題に、11年11月の「UFC 139」で行われたフアとダン・ヘンダーソン(米国)の試合が18年UFCホール・オブ・フェイム“名勝負部門(Fight Wing)”で殿堂入りを果たしたことがある。ナンバーシリーズには珍しく、メインイベントにしてノンタイトルで行われたこの5回戦は、両者死力を尽くした忘れがたい大熱闘の末、ヘンダーソンが僅差の判定で勝利を飾った。

 米国時間7月5日にラスベガスで開催された表彰式には、フアは試合前ということもあり姿を見せることはなかったものの、ビデオを通じて次のように受賞の喜びを語っている。

「美しいトロフィーを頂きました。一生大切にします。ダンと自分は、共にPRIDEに出場していましたが、なぜか直接対戦したことはありませんでした。ですから、11年にUFCで初めて実現したこの試合は、忘れられないものとなりました。攻撃的で手数が多く、前に出続けるというお互いのファイトスタイルがぶつかり合ったことが素晴らしい試合になった理由だと思います。ダンはノックアウト勝ちをしてやろうと攻め込んできましたが、それはこちらも同じでした。自分にとっても生涯のベストファイトです。判定負けをしてしまいましたが、とても満足をしてケージを降りたことを覚えています」

 一方、ヘンダーソンは登壇してスピーチに臨み、実際のところ試合中にはそれほどすごい試合だとは分かっていなかったものの、あとで試合映像を見直したところ、「なるほど。あんなに疲れるわけだと思った。ショーグンはどれだけ殴っても心が折れなかった。もうこんなにしんどい試合はウンザリだと思っていたが、UFCは3年後に再戦を組んできた」などと、冗談交じりに明かして会場を沸かせていた。

ショーグンにタイトル奪還の好機到来

 過去の名勝負が殿堂入りする一方で、ここにきてライトヘビー級ランキング8位につけるフアのタイトル挑戦がにわかに取り沙汰されるようになってきている。来春に引退することを明らかにしているUFCヘビー級およびライトヘビー級2冠王者ダニエル・コーミエ(米国)が、ライトヘビー級最後の挑戦者候補として、フアの名前を挙げているのだ。

 11年にジョン・ジョーンズ(米国)に敗れてベルトを失ってからのフアは、その後の9試合で3勝6敗とふるわず、引退やミドル級への転向をすすめられたこともあったという。しかし現在のフアは3連勝中と星を立て直しており、今回の試合で勝てばタイトルに最も近い男の1人となってもおかしくはない。

 フアも、チャンスがあるならコーミエ戦を受けて立つつもりだ。

「コーミエはコンプリートファイターだと思う。しかし、自分の長いキャリアと十分な実績を踏まえれば、今回の試合に勝てば、俺にも資格はあると思う」

「この階級は今のところ、選手層が厚いとはいいがたい。何勝かした選手には、誰にでもタイトル挑戦権がある。そうは言っても、1発のある選手ぞろいだから、いつ誰が勝ってもおかしくはない。だからこそ、目の前の試合を大切にして、まずは白星を拾う必要がある」

「これまでに多くの夢を実現してきた。PRIDEとUFCでチャンピオンになり、ジ・アルティメット・ファイター・ブラジルに出演し、世界中のスタジアムで試合をし、多くの国に友だちやファンができた。本当に恵まれている。でも、今はそんな感慨に浸っている場合ではない。目の前の相手に勝つことが肝心なんだ」

 近年ではケガに悩まされ、試合間隔も空きがちだったフアだが、ここにきて再びホットな注目が集まり始めている。とはいえ、まずは今回、アンソニー・スミス(米国)を下すことが、今後のすべての展開の前提条件となる。ショーグン再びの花道を、しっかり見届けよう。

大器晩成スミス、大物食いで台頭へ

大器晩成型のアンソニー・スミス(右)がショーグンに勝利するアップセットを狙う 【Zuffa LLC】

 一方のスミスは前回、「UFC 225」(18年6月)でこれまでのミドル級から階級を上げてライトヘビー級初戦に臨み、レジェンドのラシャド・エバンス(米国)をノックアウトで退けた。その後、エバンスが引退を表明したため、事実上、引導をわたした格好だ。17年9月にも難攻不落のベテラン、ヘクター・ロンバード(キューバ)にノックアウト勝ちするなど、大物食いには実績がある。

 17歳でMMAデビュー、プロデビュー後11戦目までの戦績は5勝6敗というスロースターターだったスミス。いったんUFC入りした際にも、わずか1試合でリリースされてしまっている(13年6月、ブラジル人のアントニオ・ブラガ・ネトに一本負け)。

「バカみたいに聞こえるかもしれないけど、オレは自分で自分の才能を疑ったことがない。オレにはできると分かっていた。そして自分が遅咲きの選手であることも知っていた。ただ、どうやって能力を開花させるのかを、長い間探っていたんだ」

 16年2月にUFC再デビュー戦を勝利で飾ると、以降の戦績は5勝2敗、パフォーマンスボーナスを2度獲得するなど上り調子だ。今回の試合は、フアの相手として当初予定されていたヴォルカン・オーデスミアの代打として、2カ月連続のスクランブル出場となる。

「これまでの苦労を思えば、まだ全然満足していない。オレの中ではまだ、自分の能力が開花した感覚がないんだ。その感覚なしでここまで来られたことは誇りに思うけれど、やっぱり能力を全開にした試合をやってみたいんだ」

 29歳の完全主義者が心ゆくまで能力を全開にするには、今回の試合は相手に不足なしだろう。再びのジャイアント・キリングで、一気にランキング上位進出を狙う。

(文:高橋テツヤ)
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