【UFC】現役王者コーミエとミオシッチが激突 コーミエは2階級同時制覇を目指す

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二階級制覇を狙うダニエル・コーミエ(左)が真夏の大一番に挑む 【Zuffa LLC】

 日本時間7月8日(日)に米国・ラスベガスで開催される「UFC 226」のメインイベントでは、UFCライトヘビー級王者ダニエル・コーミエ(米国)と、UFCヘビー級王者スティペ・ミオシッチ(米国)がヘビー級タイトルをかけて激突。現役王者同士によるスーパーファイトが実現する。

 UFCで現役王者同士の直接対決が行われるのは2009年の「UFC 94」で拳を合わせた当時のライト級王者B.J.ペン(米国)対ウェルター級王者ジョルジュ・サン・ピエール(カナダ)、そして16年の「UFC 205」で対戦したフェザー級王者コナー・マクレガー(アイルランド)対ライト級王者エディ・アルバレス(米国)に次いで、これが史上3度目となる。

 コーミエとミオシッチは前回、共に「UFC 220」に出場し、コーミエはヴォルカン・オーズデミア(スイス)を、ミオシッチはフランシス・ガヌー(カメルーン)にそれぞれ完勝、タイトルを防衛し、その後、「TUF(ジ・アルティメット・ファイター)シーズン27」のコーチとしてライバル関係を高めてきた。

コーミエ、2階級同時制覇達成を目指す

 試合の行方をセオリーで占えば若くて身体の大きいミオシッチに利があると考えるのが妥当であろう。しかし、元五輪レスラーのコーミエは、もともとヘビー級ファイターだ。11年に出場した「Strikeforce」のヘビー級グランプリでは、アントニオ・シウバ(ブラジル)、ジョシュ・バーネット(米国)を下して優勝。UFC入りした後にも、元UFCヘビー級王者フランク・ミア(米国)を打ち破るなど、ヘビー級で戦績13勝0敗の実績を誇っている。しかもコーミエが勝てばマクレガーに次いで史上2人目の2階級同時制覇を達成することとなる。

「人が偉大なファイターの話をする時、必ず自分の名前があがること、それがGOAT(Greatest of All Time、史上最強)のレガシーだ。レガシーは永遠に続く。それ以外のことは色あせる。ミオシッチに勝って2階級を制すれば、俺もGOATの称号を手に入れることになるだろう。強い王者同士の、最高レベルのMMAをお目にかけよう」

 そう語るコーミエは40歳の誕生日を迎える19年3月20日をもって現役を引退することをすでに明らかにしている。UFC創立25周年記念の記者会見でUFC会長のデイナ・ホワイトが、ミオシッチ対コーミエ戦の勝者が元UFCヘビー級王者で現WWEスーパースターのブロック・レスナー(米国)と戦う可能性もあると言及した際には、長年のプロレスファンでもあるコーミエは戦いたくてたまらないという表情で、うれしそうに武者震いをしてみせた。

 アマレスのメダルもUFCのベルトも、すべてを獲得してきた希代のアスリートが、さらなるベルト、さらなる戦いを求めて、華麗な引退ロードを歩み出す。

立ちはだかる等身大のモンスター、ミオシッチ

現在、地上最強の王者ながら「家に帰れば、自分の序列は4番目」と等身大の姿を見せるミオシッチ 【Zuffa LLC】

 ミオシッチはジュニオール・ドス・サントス(ブラジル)、アリスター・オーフレイム(オランダ)、ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)、アンドレイ・アルロフスキー(ベラルーシ)、マーク・ハント(ニュージーランド)という殺人打線を5連続ノックアウトでなぎ倒すと、前回はガヌーをジャッジ3者とも50対44という圧倒的な差で退け、ヘビー級防衛数3回の新記録を樹立した。

 しかし、そんなモンスター級の強さを誇るミオシッチの素顔はヘビー級王者という肩書きからはかけ離れたものだ。

「家に帰れば、自分の序列は4番目だ。一番上が女房、次に犬が2匹、そして俺だ。俺の役目は稼いでくることだけ。地球上最強の男になろうが、タイトルを何回防衛しようが、家では関係がない。俺は下っ端なんだ。防衛記録は誇りには思うけど、自分は家族の面倒をみることにしか興味がない」

 ミオシッチは今でも地元クリーブランドの消防署で救急医療隊員として週に2、3回のシフト勤務を続けている。出動要請のない時にはコーヒーをいれたり、トイレ掃除に励んだり、雑用も進んで引き受ける。

「タイトルを譲るわけにはいかない。俺だけじゃなく、家族も、妻も、母も、友人も、職場の同僚も、コーチも、みんなが俺の夢の実現に努力をし、犠牲を払ってきたんだからね。だからベルトはわたさない。絶対にわたさないんだ」と語るミオシッチ。ガラガラ声のピープルズ・チャンプが、スーパーファイトを受けて立つ。

(文:高橋テツヤ)
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