吉田麻也、リーダーとしての自覚と覚悟 長谷部らの思いを引き継ぎ新チームへ
「どうあがいても、長谷部誠にはなれない」
長谷部の代表引退について、報道陣に心情を聞かれた吉田は号泣。途切れ途切れになりながら、何とか言葉を紡いだ 【写真:ロイター/アフロ】
「僕は7年半、彼と一緒にやってきましたけれど、本当にあれだけチームのことを考えてプレーできる選手は少ないでしょうし、彼の姿勢を見て学ぶことが多かった。この大会が終われば、長谷部さんだけじゃなくて、長くやってきた選手たちとやれなくなるという覚悟はあったので、分かってはいたことですけれど、寂しいですね」と吉田は途切れ途切れになりながら、何とか言葉を吐き出した。
今後の代表では、偉大な長谷部の後を引き継いで、キャプテンとしてチームをけん引していく役割が託されるだろう。本田も4年後のカタール大会を目指さないことを明言。香川も代表との向き合い方を再考すると語っており、チーム作りはゼロからの再スタートとなる。もちろん今回のロシアで奮闘した昌子や柴崎岳、原口のような20代半ばのメンバーはいるが、より国際経験の乏しい若い世代も加わってくるはずだ。
その中で、国際Aマッチ86試合を経験し、10年から10シーズンにわたって、欧州でプレーし続ける実績を持つ吉田が、さまざまな面でチームをフォローし、時に叱咤(しった)激励しなければ、8強の壁を破るどころか、アジアで勝ち抜くことすら難しくなる可能性も否定できないのだ。
「どうあがいても長谷部誠にはなれないので、自分のスタイルで代表を引っ張っていかないといけないと思っています。4年前のブラジルW杯が終わった時、長谷部さんは今の僕と同じくらいの歳で、次のW杯では僕がハセさんと同じ歳になる。昨日の夜に『ブラジルの後、4年後は行けると思っていたか』と聞いたら、『全然行けると思っていなかった』と言っていました。僕もどうなるか分からないけれど、日々の積み重ねが4年後に出ると思う。立ち止まっていてはいけない」と、吉田は自らに奮い立たせるように言った。
チームが直面した「精神的脆さ」という課題
今大会で露呈した日本の「精神的脆さ」。その課題を克服すべく、吉田(左)にはチームをけん引してほしい 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
西野監督体制になって2カ月間で選手たちの意識と自覚が高まり、チームとして一体感も強まり、より連動したサッカーができたのは確かだが、急激に日本が強くなったわけではない。イングランドのハイレベルな環境で戦っている吉田は、その厳しい現実を熟知しているはず。その世界基準をチームにより一層還元しながら、仲間を上へ上へと導く大仕事が彼には託されるのだ。
「本当に国際舞台で勝てるチームになるには、まず(目先の試合で)勝ち続けることだと思う。(来年1月には)アジアカップもある。韓国、イラン、サウジアラビア、オーストラリアと、今大会で悔しい思いをしたチームがまたチャンピオンになろうと全力を出してくる。僕らもアジアカップを奪い返しにいかないといけない。まずはそこからだと思います」
語気を強めた新リーダー候補最有力の男・吉田には、長谷部や本田の思いを引き継ぎ、「精神的脆さ」という今回チームが直面した課題を克服してほしい。そして、先頭に立って新たな時代を作っていくことを期待したい。