浅野拓磨が語る現在の心境と「4年後」  特別な立場で経験したW杯で感じたこと

今井雄一朗

ロシア大会までの4年間と、カタール大会に向けた4年間

ロシアへの挑戦が終わった時から「次に“進もう”としているのではなく、“進んだ”と思っている」と浅野 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――W杯にまつわるさまざまなことがあったわけですが、浅野選手はもう次に向かって進み始めているわけですね。

 僕はロシアW杯への挑戦が終わった時点から、次に“進もう”としているのではなく、“進んだ”と思っています。どちらかと言えば、ずっと「やらないと」と考え過ぎてしまう方で、そういう時には頭をクリアにできていないなと感じるので、まずはしっかりリフレッシュしたいです。

 このオフ期間中からも体は動かしますが、チームに合流してから、キャンプでしっかりアピールして、ブンデスリーガの開幕戦にはスタメンで出られるように頑張らなければいけないと思っています。まずはそこからです。去年はそれができず、今につながっていると思うので、今季は試合に出ることしか考えていないですね。

――これから4年後を見据えて過ごす日々というのは、今回のロシア大会に向けた日々とはまた違うものになりそうですね。

 僕は決して4年後だけを見ているわけではないですし、サッカー人生の先の先の先を目標に持ちながらも、目線は常に目の前に向けています。4年前もW杯に絶対に出るために逆算した“今”に対して、全力でやるだけだと思っていました。ロシアで終わりではなく、その次のカタールW杯、その後も合わせて(W杯に)3回は出たいという逆算があり、(所属していた)サンフレッチェ広島で試合に出なければという考えでした。

 今もその通過点の1つです。常にカタール(W杯)だけを見ているというわけではなく、この先、サッカー人生が終わってからも続いていく人生の中で、今頑張るしかないというのはいつも思っています。

浅野は「4年前と比べたら成長している部分もある」としながらも、「今の状況はまったく違うもの」と口にした 【スポーツナビ】

――ロシアまでの4年間が若手だったことを思えば、海外移籍も果たしているここからの4年間はまた違う戦いになると思います。

 4年前の自分と比べると、明らかに成長している部分もあります。ただ、4年前の自分は、ロシアW杯に出ていると思っていましたから……。その時感じていたものと今の状況は、まったく違うものだと思います。

――ここまではひたすら力をつけてきた4年間だったと思いますが、ここからの4年間はそれを研ぎ澄ます、無駄を削ぎ落していくような作業になるのでしょうか?

 僕の中では、今までやってきたことは続けながらもプラスアルファで、もっとやっていかなければいけないという考え方です。今までやってきたことはもう身に付いているからやらなくていいかといえば、そうではない。この先も、例えば筋力トレーニングは必要だろうし、ある程度やってきた筋力トレーニングはキープしつつも、付いた筋肉をキープするためには同じ量のトレーニングをして、さらにそれをうまく動かすためのトレーニングをやろうとか、少しずつ増えていくものだと思います。

 日本代表の先輩たちもそれはやっていて、良い背中を見ることができていると思います。特に長友(佑都)さんは、次から次へと良いと思うことを試していって、やっていることが多すぎるのではないかと思うほどです。今、自分が長友さんと同じことをやったら同じ力がつくかといえばそうではなくて、少しずつそれに近づけていくことが大事。これからまたシーズンが始まれば、どんどん自分も違うことに取り組んでいくと思いますが、まずは今やっていることを続けていくことだと思います。

今季の目標は10ゴール「一瞬で世界を変えたい」

今季の目標を「10ゴール」と宣言。今後のことを考えると「ワクワクしかしない」と話した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――FWはやはりゴールを奪うのが仕事です。その質を今季はどうやって上げていきますか?

 まずは試合に出ることが大事で、それができなければ100パーセントゴールは奪えません。まずは試合に出るために、練習からアピールする。シュートをどれだけ練習するか、チームをどれだけ意識して練習するかも大事ですが、試合の中で僕が何をできるのかは、試合でしか分からないことでもあります。

 そのためにも試合に出続けることが大事で、1つゴールを取れたら、またそれが自信になって、チームの信頼も高まったり、一瞬でいろいろなものが動く。最初は試合に出て、そして1つのゴールを取ることだけに集中して、その先はまた次のゴールを取ってから始まることだと思っています。

――それを今季はハノーファーで成し遂げるわけですね。何か目標は立てていますか。

 まずは、優勝は難しくても、より良い順位を目指したいです。前年のハノーファーの順位(13位)よりも上にいることがマストです。その中でも、自分がチームの中心として結果で貢献できるように頑張りたい。最低でも5点以上は絶対に取りたいですし、欲をいえば10点以上は取りたい。今まで僕は具体的な数字を言ったことがあまりなくて、「取れるだけ取る」と言ってきたんですけれど、それは自分に甘えていると感じたので、今季は10点取りたいと宣言します。その自信はあります。

 コロンビア戦の2日前の選手ミーティングで、「W杯が始まって、ワクワクしかしていない」と言った選手が1人だけいたんです。「不安だ」「うまくいかなかった時には、チームでこうしていこう」と言う選手はいても、そんなことを言ったのは1人だけ。その理由が、「この世界は1つゴールを取っただけで、全てが変わる。日本に帰った時、自分がヒーローになっている可能性がある大会が、これから始まる。それを想像しただけでワクワクする」というものでした。

 それを聞いて、僕らのいるこの世界、サッカー界は本当にそういうものだと思いました。どれだけ日本中からマイナスなことを言われても、コロンビア戦に勝ったことで、取り巻く環境は一気に変わった。今、僕は自分の状況は全然よくないと思っていますが、これからよくなる可能性しかないと考えると、僕もワクワクしかしないです。自信がないとそういう気持ちも出てきませんが、僕はそうなれる自信があります。一瞬で、世界を変えたいと思います。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。以来、有料ウェブマガジン『赤鯱新報』はじめ、名古屋グランパスの取材と愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする日々。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント