常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018

大阪桐蔭のエースを目指す2人の挑戦 柿木蓮&横川凱の原点は“悔しさ”

沢井史

甲子園で悪夢を味わった横川

今春の府大会で初めて背番号1を背負った横川。潜在能力が高く評価されている大型左腕が最後の夏に、その才能を開花できるか!? 【沢井史】

 その柿木に代わり、この春の府大会、近畿大会で背番号1をつけた横川凱も、この春は常に挑戦だった。1年時から期待されながら、昨春のセンバツでは静岡戦で先発するも、初回から制球を乱して3分の1イニング5失点で降板。今春のセンバツでは2試合5イニングを投げ1失点と“悪夢”は払しょくしたように見えるが、まだまだ物足りなさも感じる。

「変化球は指先をうまく使えばある程度コントロールできるんですけれど、ストレートは腕を振って投げようとしてもダメな時はあるし、指先を使うとなると余計にダメ。何かは分からないのですが、ブルペンでは調子が良くても、甲子園ではもうひとつ余裕がなかったです。原因は……気持ちの問題だと思います。舞洲(大阪信金シティスタジアム)ではそこまで気にせずに投げられるので、甲子園の雰囲気に慣れることができなかったのか。ただ、センバツは点差のついた試合でしか投げていないので、信頼はまだ得られていない。甲子園のマウンドに少し慣れたところもありますが、自分の中ではまだまだです」

初めて背負った背番号1の重み


 1年秋からベンチ入りし、府大会2回戦で公式戦デビュー。だが、紆余曲折の日々が続いた。昨年の今頃は調子を落とし、夏の府大会で柿木が成長。悔しい思い出ばかりが頭をよぎる。それだけに、この春初めて背負ったエース番号の重みは誰よりも感じている。

「今まで、自分はずっと背番号10。でもこの春は(大阪大会では)柿木はいないし、大会の初めは根尾が登板することもなくて、後ろを見ても小谷(優宇)や中田(惟斗)や道端(晃大)がいて。マウンド経験は自分が一番あったので、この春は“自分しかいない”という気持ちで投げました」。

 近畿大会ではセンバツ以降、打線に力強さが増した智弁学園(奈良)戦に先発し、毎回安打を許しながらも6回3失点で2番手の柿木にマウンドを譲った。勢いに乗る打線を3点に抑えたことは収穫だが、最後までマウンドを任せてもらえなかったこと、そして重要な試合でマウンドを任されるようになるには、ここからが正念場だ。

「もう時間も限られているので、1球1球から成長できるよう、質の高い練習をしていきたいです」

 香川県の招待試合では藤井学園寒川戦で先発するも初回から球が走らず連打を浴びるなどして2回3失点。「何も感じるものがなかった」と西谷監督から3回にあっさりと交代を告げられた。苦悩を重ねている190センチの大型左腕が、笑顔でマウンドを振り返られる日は、この夏やって来るのだろうか。

【連載】「常勝軍団・大阪桐蔭の挑戦2018」

 史上8度目の春夏連覇を目指す、夏の高校野球100回大会の一番の注目校である大阪桐蔭。常勝軍団と言われる大阪桐蔭のメンバーが、日々どんな気持ちで野球に取り組んでいるのか――個々の選手の素顔に迫る連載を6月29日から開始。7月4日掲載の6回目は、3年生にタレントが揃うチームの中で台頭してきた2年生・宮本涼太選手を取り上げます。

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著者プロフィール

大阪市在住。『報知高校野球』をはじめ『ホームラン』『ベースボールマガジン』などに寄稿。西日本、北信越を中心に取材活動を続けている。

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