大阪桐蔭のエースを目指す2人の挑戦 柿木蓮&横川凱の原点は“悔しさ”
甲子園で悪夢を味わった横川
今春の府大会で初めて背番号1を背負った横川。潜在能力が高く評価されている大型左腕が最後の夏に、その才能を開花できるか!? 【沢井史】
「変化球は指先をうまく使えばある程度コントロールできるんですけれど、ストレートは腕を振って投げようとしてもダメな時はあるし、指先を使うとなると余計にダメ。何かは分からないのですが、ブルペンでは調子が良くても、甲子園ではもうひとつ余裕がなかったです。原因は……気持ちの問題だと思います。舞洲(大阪信金シティスタジアム)ではそこまで気にせずに投げられるので、甲子園の雰囲気に慣れることができなかったのか。ただ、センバツは点差のついた試合でしか投げていないので、信頼はまだ得られていない。甲子園のマウンドに少し慣れたところもありますが、自分の中ではまだまだです」
初めて背負った背番号1の重み
1年秋からベンチ入りし、府大会2回戦で公式戦デビュー。だが、紆余曲折の日々が続いた。昨年の今頃は調子を落とし、夏の府大会で柿木が成長。悔しい思い出ばかりが頭をよぎる。それだけに、この春初めて背負ったエース番号の重みは誰よりも感じている。
「今まで、自分はずっと背番号10。でもこの春は(大阪大会では)柿木はいないし、大会の初めは根尾が登板することもなくて、後ろを見ても小谷(優宇)や中田(惟斗)や道端(晃大)がいて。マウンド経験は自分が一番あったので、この春は“自分しかいない”という気持ちで投げました」。
近畿大会ではセンバツ以降、打線に力強さが増した智弁学園(奈良)戦に先発し、毎回安打を許しながらも6回3失点で2番手の柿木にマウンドを譲った。勢いに乗る打線を3点に抑えたことは収穫だが、最後までマウンドを任せてもらえなかったこと、そして重要な試合でマウンドを任されるようになるには、ここからが正念場だ。
「もう時間も限られているので、1球1球から成長できるよう、質の高い練習をしていきたいです」
香川県の招待試合では藤井学園寒川戦で先発するも初回から球が走らず連打を浴びるなどして2回3失点。「何も感じるものがなかった」と西谷監督から3回にあっさりと交代を告げられた。苦悩を重ねている190センチの大型左腕が、笑顔でマウンドを振り返られる日は、この夏やって来るのだろうか。