マイコラスが学んだ精神的落ち着き 「日本で先発投手として確立できた」

杉浦大介

「日本に行ったことは本当に大きかった」

マイコラスの安定したピッチングはチームにとって大きな力となっている 【Getty Images】

 言葉もわからず、知り合いも少なく、文化にも馴染みの薄い場所で生きていくには、自身がしっかりするしかない。海外移住経験のある人ならそんな現実を熟知しているはずだ。メジャーでは才能を開花しきれていなかった米国人投手にとっても、異国での成長過程は同じだったのだろう。

「日本で学んだのは精神的に落ち着き、自身をコントロールしながら投げること。すべての球種をうまく使うこと。それらを学ぶ上で、日本球界は僕にとって適した舞台だった。先発投手として確立することができた。日本に行ったことは僕のキャリアにとって本当に大きかったよ」

 本人のそんな説明通り、勝気な性格が災いすることもあった投手が精神的に成熟したことには大きな意味があったに違いない。そして、今後の目標を聞いた時のマイコラスの答えも象徴的だった。

「今はとにかく5日に1度、マウンドに上がり、自分の所属するチームを勝利に近づけることだけを考えている。自分だけでなく、周囲のチームメートをより良くしたい。日本も含め、自分がこれまでの旅で学んだことが周囲の助けになるなら、それを伝えていきたいんだ」

 巨人時代はマシソンと心を通わせ、頼れる先輩助っ人はコミュニケーションの面で貴重な存在になった。「ジャイアンツには優秀な通訳やスタッフがそろっていた。彼らが適応を容易にしてくれた」と述べる通り、他にも多くの人に支えられた。

 自分がそうやって助けられたのと同じように、米国ではチームメートもヘルプしたい。自分だけではなく、同僚たちのキャリアもより良くしたい。こんな考え方もまた日本で育まれたものなのかもしれない。

 もともとの才能に異国で成熟のスパイスが加えられ、マイコラスのキャリアはついに飛翔していった。“夢の球宴”の舞台も目前。1人の米国人投手の波乱のキャリアは、快適な環境から一時的にでも離れることの大切さと意味を、分かりやすい形で教えてくれているようでもある。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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