連載:燕軍戦記2018〜変革〜

ヤクルトが交流戦で見せたチーム力 投打がかみ合い「燕の逆襲」へ

菊田康彦

近藤、中尾、石山のリリーフ陣が奮闘

近藤(写真)、中尾、石山のブルペン陣が奮闘し、快進撃の大きな要因となった 【写真は共同】

 もっともその先発陣の頑張りも、強力な「勝利の方程式」あってこそ。中継ぎでは右の近藤一樹が8試合に投げて失点を許さず、1勝6ホールド1セーブ。左の中尾輝(ひかる)は6月7日のソフトバンク戦で一度は逆転を許し、16日の日本ハム戦では黒星を喫したが、その他の7試合は無失点で2勝、4ホールドと踏ん張った。

 さらに盤石だったのが5月下旬から抑えに回った石山泰稚で、交流戦では10試合を無失点に抑えて1勝7セーブ。交流戦のMVPは「勝ち越しリーグの勝率1位球団から選出する」との規定があるが、もし12球団の最高勝率チーム、つまりヤクルトから選ぶのであれば、石山が最有力だったろう。いずれにしても、この交流戦で終盤7回以降にリードをひっくり返されて負けた試合がなかったのは、この3人がいたからだと言っていい。

調子の波をチームでカバーした打線

 打線では、交流戦開幕から8試合で打率4割4分0厘と絶好調だった大引啓次が下半身のコンディション不良で離脱すると、入れ替わるように復帰した川端慎吾が10試合で打率4割0分0厘、出塁率4割6分7厘をマーク。4カードを終えた時点では交流戦打率3割3分3厘でチームトップ(規定打席以上)の雄平が、その後は調子を落とすと、野手最年長の青木宣親が6月13日の西武戦から5試合連続マルチヒットと打ちまくるなど、チーム全体では故障や調子の波が大きな影響を及ぼすことはなかった。ウラディミール・バレンティンが全試合で4番に座って打率3割0分5厘、いずれもチーム最多の4本塁打、13打点(打点は青木とタイ)と、主砲の役割を果たしたのも大きかった。

 いわゆるレギュラー以外の選手では、中堅どころの荒木貴裕の活躍も目覚ましかった。バレンティンが指名打者に入った6月1日の楽天戦に「9番・レフト」でスタメンに名を連ねると、いきなり先制タイムリーを含む2打点。翌日はファーストで先発出場して先制2ランを放つなど、交流戦12試合の出場(スタメン7試合)で打率1割8分5厘ながら、バレンティン、青木に次ぐ10打点と勝負強さを発揮した。チームの看板スターである山田哲人が左腕を痛めてスタメンから外れると代わりにセカンドを守り、15日の日本ハム戦では代打で同点の2点タイムリーと、リーグ戦と同様に随所で存在感を示した。

 最高勝率を決めた6月17日の日本ハム戦は、初回に青木、川端の連打でチャンスメークして、バレンティンのタイムリーで先制。先発の小川が6回1失点としっかりと試合をつくり、荒木の犠飛で勝ち越すと、最後は中尾、近藤、石山のリレーで締めくくった。これなどは、今年の交流戦の戦いを象徴するような試合だったと言える。

 先に触れたとおり、交流戦前のヤクルトは借金9でセ・リーグ最下位に沈み、首位・広島から9.5ゲームもの大差をつけられていた。それが交流戦の快進撃で借金は2に減り、現在は首位とは4ゲーム差の3位タイ。思えば3年前の15年も交流戦終了時点では借金4を抱え、首位・巨人とは3ゲームの差があったのが、そこから混戦を制して14年ぶりのセ・リーグ優勝まで上り詰めている。そう考えると、今年もここからの「燕の逆襲」にいやでも期待が高まる。まずは交流戦最終ゲームとなる19日のソフトバンク戦に勝って数字上でも単独の最高勝率を決め、22日の巨人戦から再開されるリーグ戦に向けてさらに弾みをつけたいところだ。(文中の記録等は原則として6月18日現在)

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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