日本記録に接近している男子走幅跳 橋岡と酒井の“10代対決”勝者は!?

月刊陸上競技

27年ぶりU20日本記録、26年ぶり日本記録更新なるか

昨年の日本選手権後にケガをしてユニバ辞退などを経験したが、今年は確実にベースアップしている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 とはいえ、最大の注目は追い風参考ながら日本記録(8メートル25)を超えてきた橋岡と酒井だろう。ともにU20選手で、U20日本記録(8メートル10)が通過点にある。

 橋岡は昨年、日本選手権後の8月に右ハムストリングスを肉離れ。代表入りしていたユニバーシアードの出場を辞退するなど秋シーズンは棒に振った。だが、回復後は順調にトレーニングを消化し、昨年よりも着実にベースアップしている。

 助走スピードも格段に上がったことで、空中姿勢が本来なら「シングルシザース」のはずが、練習もしていないという「ダブルシザース」が自然と出てしまうなど、技術的な課題も抱える。だが、それでも8メートル30という記録を出せてしまうその“ポテンシャル”は、計り知れない。

「昨年の日本選手権のように“チャレンジャー”として臨みたい。今シーズンはどこか腰が重い状態だったけど、やっとスイッチが入って本来の集中ができるようになりました。関東インカレでは負けたけど、次は負けない自信があります。ライバルが多ければ多いほど燃えるので」と気合いも十分。日本選手権に向けては技術面の修正を図り、万全の状態に仕上げるつもりだ。

 酒井は身長184センチの大型ジャンパー。自己ベストは東京・南多摩高3年の南関東大会で出した7メートル68で、日本選手権の参加表標準記録A(7メートル75)には届いていない。しかし、今年4月末の東京選手権で優勝して、参加標準記録B(7メートル65)を突破しているため出場資格を手にしている。

 関東インカレの大ジャンプは、「技術的な部分で言うと、地面をしっかりとらえて、反発をもらう助走ができた。メンタルをコントロールできるようになったことも大きい」と自己分析。そして、「いずれ日本記録は超えるつもりでいますし、今度は公認で8メートル10を跳びたい。東京五輪は8メートル50以上を跳んでメダルを取ることが目標です」と豪語する。

“雰囲気”が好記録を誘発するフィールド種目

 フィールド種目は“雰囲気”が好記録を誘発する部分もある。関東インカレのように起爆剤となるような跳躍が飛び出すと、大きな“花火”が何発も打ち上がるかもしれない。

 1991年の日本選手権では、当時19歳だった下仁(千葉陸協)がジュニア日本新・当時日本タイの8メートル10をマークして優勝し、一躍東京世界選手権の代表キップをつかんだ。その記録は、今もU20日本記録として残る。

 そして、下に抜かれる前のジュニア日本記録保持者だった森長正樹(日本大)は翌年の春に8メートル25の日本記録を打ち立て、その後にバルセロナ五輪代表へと駆け上がった。現在、日本陸連強化委員会のオリンピック強化コーチを務める日本大の森長コーチは、「当時の状況とダブりますね」と笑いながら、26年間破られていない自らの日本記録が塗り替えられる瞬間を楽しみに待っている。

(文/酒井政人)

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著者プロフィール

「主役は選手だ」を掲げ、日本全国から海外まであらゆる情報を網羅した陸上競技専門誌。トップ選手や強豪チームのトレーニング紹介や、連続写真を活用した技術解説などハウツーも充実。(一社)日本実業団連合、(公財)日本学生陸上競技連合、(公財)日本高体連陸上競技専門部、(公財)日本中体連陸上競技部の機関誌。

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