3度の戦力外受けた久保裕也の覚悟 「松坂世代、最後の1人になりたい」

週刊ベースボールONLINE

何とか粘って、1年でも長く

「この2、3年は年々体が動くようになってきている。まだあきらめたくない」と久保 【写真:BBM】

 38歳となり、若いころには気づくことがなかった考える楽しさを今は感じているという。「常に笑顔で」とさわやかに笑う久保は、口を開けばポジティブな発言ばかりが出てくるが、その根底にあるものとは。

――ベテランと呼ばれる年齢になりましたが、チーム内での自分の役割をどのように認識していますか。

 投げることで言ったら、与えられた仕事を全うすること。どのポジションでも変わらず、今自分に求められていることをしっかりできればと思っています。

――若い選手から技術的なことを質問されることも多いのでは。

 変化球の投げ方などを教えたりはします。でも結局、投げ方が違えば、僕の感覚と本人の感覚は違いますからね。大きく変えることはすごくリスクが高いので、自分の感覚を崩さずにちょっとずつ何か変化を加えながら、合うと思ったら続ければいいし、合わないと思ったらすぐにやめたほうがいい。そういう考え方なども含め、伝えてあげられるものがあれば、と考えています。

――久保投手は考えることも好きだとおっしゃっていますね。

 野球は“考えるスポーツ”だと思っていますから。もちろん確率のスポーツではあるんですけど、投手で言えば、打たれる確率を下げるにはやはり考えないといけない。だから考えることもすごく楽しいと思うんです。考えることの楽しさ、考えてそれを行動に移して、できたときの喜びとか。そういうものを若い選手に知ってもらいたいし、いろんなことにチャレンジしてほしい。

 僕は失敗してもいいと思っているんです。失敗して、そのまま終わってしまったら失敗だけど、それが自分の経験となり、何かのきっかけで変わって成功すれば、その失敗は成功と言えるわけだから。

――失敗することで、そこから多くのことが学べるのですね。

 僕は多くのことを失敗して気づいたことがたくさんあるから、今こうして考えられるようになったのだと思いますね。マウンドに上がるときも、状況だったり、この場面では何をやっちゃいけないのかとか、そういうことを自分で把握するようにしています。考えてからマウンドに上がるのと、何も考えずに上がるのとで結果が変わるかどうかは分からないですけど、変わる可能性は高くなりますから。そういういろんな変化を楽しんでいるところですね。

――考えるからこそ、失敗も成功も、次に生きる経験になるのですね。

(プロ野球生活も)終わりのほうが近いから、考えられることはしっかり考えて、自分にとってプラスになるものを吸収したい。それが自分の引き出しになっていくわけだから。そうやってなんとか粘って1年でも長くやっていきたいなと思っています。だから何をやっていても楽しい、考えるのが楽しい、結果が残ったらもっと楽しい。そうやって今は考えることがプラスな方向に向かっているなと思っています。

――すべてのことを喜びへと変換できるというのはすごいことです。

「1軍に上がれよ〜!」とファンの方に言われただけでも、ものすごく喜びがありますね。また2軍で調整してくれと言われたとしても、その期間で反省をどれだけ修正してまた1軍に上がれるかな、と考えたら、今やっていることも楽しくなります。次また1軍に上がったときに、少しでもレベルが上がっていて、それを評価してもらったときにまた喜びがある。プラスの方向でいろんなことを見てもらえる環境があるから、だから楽しいんでしょうね。

――そういった意識が自身を練習に向かわせるのですね。

「練習するしかないでしょ、下手なんだから」と僕はいつも思っていますから。練習のときは「自分が一番下手くそだ」と思い、マウンドに上がれば「オレが一番良いピッチャーだから、今ここに上がっているんだ」と思って投げています。

――現在掲げている目標はあるのでしょうか。

 数字的なものは特にはないですね。もちろん投げられるだけ投げたいですけど、1日1日精いっぱいやれることをしっかりやり、時を待つだけなので。表現は悪いかもしれないですけど、敗戦処理でも、やはり1軍で投げることが僕にとってすごく大きなことなんです。

――年を重ねたとはいえ、まだまだこれからという思いもあるのでは。

 ここ2、3年、年々体が動くようになってきていますし、手術後とは違って今はやりたいことを全部できています。状態的にはすごくいいと思うからこそ、まだあきらめたくないという思いもありますね。

――松坂投手にも、もちろん負けていられませんね。

 一つの目標として、同年代で最後の1人になりたいというのはずっと思っていました。どんどん人数が減っていく中で、何とかギリギリのところで踏みとどまり、まだここにいられるわけだから。まだ可能性がある以上、1年でも長くやれればなと思っていますけどね。

――今の最大のライバルは、世代のエース・松坂投手ですか。

 そうですね。「息を吹き返したか〜」って思いましたから(笑)。

(取材・構成=阿部ちはる 写真=井沢雄一郎、BBM)

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