国立大学のドラフト候補投手に全国の壁 広島大・中田朋輝が大舞台で感じた課題

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148キロの速球を武器にする本格派

春の大学野球日本一を決める全日本大学野球選手権。決勝は神宮球場で行われる 【写真:ペイレスイメージズ/アフロ】

 春の大学野球日本一を決める全日本大学野球選手権の2日目(6月12日)、東京ドームでの1回戦第1試合に、出場27校で唯一の国立大となる広島大(広島六大学)が登場。プロ野球・西武でも活躍した大塚光二監督率いる、全国優勝2度、3年連続33回目の出場となる名門・東北福祉大(仙台六大学)との初戦に臨んだが、3対8と敗れた。

 先発は今年のドラフト候補として名前が挙がる中田朋輝(4年/宇部高)。185センチ87キロと恵まれた体格から、ステップ幅がやや狭く、右上手から投げ下ろすフォームで、最速148キロのストレートを記録する。今春のリーグ戦では6勝2敗、防御率0.89でベストナイン、MVP、最優秀防御率の三冠に輝き、人生初となる全国の舞台に乗り込んできた。

ボール先行の苦しいピッチング

 初回は1四球を出すも無失点。145キロを記録するなど上々の立ち上がりに見えたが、本人の中では「リーグ戦後の調整がうまくいかずしっくりこなかった」と違和感があったよう。「スター選手はいないけど自分の役割をきっちりこなせるメンバーたち」と大塚監督が評する東北福祉大打線は中田の心の隙を見逃してはくれなかった。

 2回以降、変化球の抜け球が多く、ボール先行の苦しいピッチング。カウントを取りに行った甘いボールを狙い打たれ、失点を重ねた。終わってみれば6回、13安打、2奪三振、4四死球、8失点。「自分の実力不足。リーグ戦では押し込めていたストレートや空振りが取れていた変化球が通用しなかった。悔しいです」と唇をかんだ。

「将来はプロを目指したい」と明言

 高校時代は大学で野球を続けようとは思っていなかった中田。それでも広島大野球部OBである監督、部長の薦めもあり、競技を続けることを選択した。大学1年からウエートトレーニングや股関節のストレッチなどを地道にこなし、高校時代は最速135キロだったストレートが3年秋には140キロ台後半まで伸びた。今は「将来はプロでやってみたい」と明言する。

 今後の人生において、ひとつの試金石となったであろう大舞台。「全国がどういうものが分かった。このままでは上のレベルでは通用しないので、ここを基準に、目標である150キロを出せるよう真っすぐを鍛え直します」ときっぱり。1日10時間勉強をして難関大を突破した根性、常に現状に満足しない向上心でさらなる成長を目指す。

敗戦にも前向きな広島大野球部

 35年ぶり3度目の大学選手権出場となった広島大の戦いぶりにも触れておきたい。毛利祐太監督いわく、「序盤は緊張でバットが振れていない感じがした」。しかし、雰囲気に慣れてきた4回に國政隆吾主将の2ランが飛び出し、6回には無死二塁から送りバント、犠牲フライで1点を返すなど、「名門校に対してある程度自分たちの野球ができたところもある」と納得の表情を見せた。

 スポーツ推薦がなく、一般入試で進学してきた59名が所属する野球部。東広島市役所に勤める25歳の毛利監督は週末の指導しかできない中、選手主体で野球に取り組んできた。2ランを放った國政は選手同士でバッティング談義をしながらインターネットなどで情報収集をして、バットを振り上げる独特のフォームを作り上げた。

 3回目の出場も全国初勝利はならなかった。ただ、試合後、毛利監督は「次はやってやるぞ、また戻ってくるぞ」と前向きな選手たちに大きな頼もしさを感じたという。中田以外にも2番手で登板した本田昂大(3年/刈谷高)は最速146キロのストレートで2回無失点と大きな経験を積んだ。「本田の存在は刺激になる。投手陣全体でレベルアップをしてまた秋に戻ってきたい」(中田)と、決して環境に恵まれているとはいえない広島大の挑戦は今後も続く。
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