大谷と田中の初対決にNYは沸騰 それぞれが示した実力とポテンシャル

杉浦大介

大谷は無安打も「いい打席多い」

大谷はヤンキースとの3連戦で無安打だったが、四球を奪うなど「いい打席は多い」と自身で振り返った 【Getty Images】

 こうして最終的には“主役”の座を先輩に奪われてしまった大谷。ただ、そうは言っても、その“ニューヨーク・デビュー”が完全に失敗に終わったと見るべきではあるまい。3連戦を通じて大谷に飛び続けたブーイングは、この場合はリスペクトの証明。結果的に無安打とはいっても、そのプレーの端々からは莫大なポテンシャルが見え隠れしていたのだ。

 守備シフトにはまって凡打に終わったとはいえ、鋭い打球の内野ゴロは散見した。25日にはヤンキースの守護神アロルディス・チャプマンの100マイル(約161キロ)の速球をはじき返し、あわや逆転本塁打という大ファウルで地元ファンの肝を冷やさせた。田中、チャップマン、ルイス・セベリーノといった好投手から冷静に四球を選び、その辛抱強さも披露した。

「安打は出ていないですけど、四球は取れていますし、いい打席は多い。(27日の2つは)もらったフォアボールではなく、しっかり取ってるフォアボール。これは進歩しているんじゃないかなと思っています」

 選球眼についてはこのように本人も自賛していたが、実際にその成熟した姿勢、ベースボールIQの高さに感心した米メディアは少なくなかったようだ。

プレーオフでのリマッチに期待

 そして何より、25日の試合前に披露した打撃練習でのパワーは事前に喧伝(けんでん)されていた以上だった。滞空時間の長い打球が大きな弧を描き、スタンドに次々と消えていく。ライト方向はともかく、大谷にとっては反対方向であるレフトのブリーチャーにまで届く打球を軽々と放っていたのには恐れ入った。

 打撃練習の迫力はヤンキースが誇るジャンカルロ・スタントン、アーロン・ジャッジよりも遥かに上で、筆者の知る限り、匹敵するのは全盛期のジョシュ・ハミルトンくらいか。本当に“神の気まぐれ”とで呼びたくなるような、とてつもない素材である。“二刀流”のユニークさを抜きにしても、間違いなくメジャーの歴史に残るような選手になっていくのだろう。

 そして、それほどの大物だからこそ、決して遠くない将来の“ブロードウェイ再演”に期待を寄せずにはいられない。今季のニューヨーク遠征は1度きりで、次の対戦があるとすればポストシーズンのみ。全米がこれまで以上に熱気を帯びるプレーオフの大舞台で、もしもヤンキースと対戦し、田中とのリマッチが実現するようなことがあれば……。そんな楽しみな空想を巡らせているのは、もう日本のファンだけではない。大谷が単なるセンセーションから真の呼び物になる日はもう間近。今回の“プレビュー”を見た後、せっかちなニューヨーカーと地元メディアはすでに次回作を心待ちにしているのである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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