「イングランドDNA」は浸透しているか 改革進める協会、ロシアW杯での目標は?
新機軸のスタイルを支えるキーマンは?
フィジカルからテクニックへ。足技に優れたCBストーンズ(右)はその象徴だ 【Getty Images】
新たな3バックのキーマンは、国産現役センターバック(CB)では最もボールが持てるジョン・ストーンズ(マンC)。サウスゲートがユース代表監督時代から、足元の技術とボールを持つ勇気に注目していた23歳だ。彼はドイツ戦の4日後に行われたブラジル戦(0−0)でも、さすがに守勢を余儀なくされたピッチ上で、ボールを奪い取っては後ろから組み立てる姿勢が目を引いた。ボールの持ち過ぎなど、判断を誤って危機を招くことはあるものの、代表指揮官は「ミスから学べば良い」と、使って育てる意欲も口にしている。
チームを縦に貫く背骨の中央には、中盤の闘将として信頼が厚く、激しいタックルで敵の侵入を止めるジョーダン・ヘンダーソン(リバプール)が欠かせないが、2ボランチで相棒となるエリック・ダイアー(トッテナム)は、やはりパスの能力とセンスに長けた守備のオールラウンダーだ。W杯本番では、ドイツ戦、ブラジル戦で試された3−4−2−1と、ダイアーをCBに回す3−1−4−2を使い分けることになると思われる。より攻撃的に機能させやすい後者は、今年3月のオランダ戦(1−0)とイタリア戦(1−1)での試用も上々。グループリーグ最終戦で強敵ベルギーと当たる前に決勝トーナメントへの足場を固めたいイングランドが、順当勝ちを狙うチュニジアとパナマとの開幕2戦で採用すべきシステムでもある。
最前線では1トップと2トップの別にかかわらず、ハリー・ケイン(トッテナム)が生命線だ。プレミアリーグで4シーズン続けて20得点以上を記録している24歳は、空陸両用のフィニッシュに加え、ボールタッチ、長短のパス、細かい連係、献身的な守備といった面でも秀でた絶対的なエースだ。背後からサポートするチャンスメーカーは、繊細なテクニックと図太いハートを持ち合わせる22歳のデレ・アリ(トッテナム)が第一人者。両者はクラブでもホットリンクを形成する。
期待されるのは成果よりも復興の証拠
まだ優勝候補の国とは差があるが、ロシアW杯で復興の兆しを示せるか 【Getty Images】
もっとも、当日のピッチで対戦したレロイ・サネ(マンC)もロフタス=チークと同世代。ドイツ代表MFは、今季プレミア優勝への貢献を買われPFA(プロ選手協会)年間最優秀若手選手賞に輝いている。10年W杯で確認された選手層を含む優勝候補との戦力差は、まだ埋まってはいない。
ただし、今夏のW杯で国民が代表に期待している結果は、改革の最終的な成果ではなく、代表が復興に向かって進化している証拠だ。イングランド人の代表番記者たちに聞いてみても、「ベスト8なら文句なし」との答えが返ってきた。サウスゲートは、指揮官として自身が内胞する「イングランドDNA」の浸透度を、W杯のピッチでさらに高めることを念頭にロシア大会に臨めばいい。母国民が再び胸を張って「サッカーの母国」を自負できる4年後を目指して。