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ザック、ハリルら代表監督から受けた影響
山口・霜田正浩監督インタビュー<後編>
霜田は現役引退後、監督になったらこうしようと、ずっと考えていたという
霜田は現役引退後、監督になったらこうしようと、ずっと考えていたという【(C)J.LEAGUE】

 昨シーズン、20位に終わったレノファ山口が好調だ。選手が次々と飛び出していく、スピード感あふれるアタッキングサッカーでJ2を席巻。第11節を終えた時点で6勝2分け3敗の3位、得点数20はリーグ2位の成績だ。


 チームを率いるのは、強化の立場で日本代表を長く支えてきた霜田正浩監督。「ここまで本当に良い準備、良い練習ができているので、これを42試合続けたい」と自信を漲らせている。


 ここまでのチーム作りと成果を尋ねた前編に続き、後編では指導者としての原点、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ヴァイッド・ハリルホジッチといった代表監督たちから受けた影響などについて聞いた。(取材日:4月11日)

監督になったらこうしようとずっと考えていた

――指導者の原点はいつごろにあるのでしょうか? 霜田さんは一般的に、強化の人という印象がすごく強いと思うんですね。それこそ、京都パープルサンガ(現京都サンガ)で、ブラジル留学時代の親友であるカズさん(三浦知良)にゼロ円提示をする役目を担ったのも霜田さんで……。


 やめて、そんな昔話をするのは(笑)。たしかに強化の人という印象は強いかもしれないけれど、京都でもユースの監督を1年、ジュニアユースの監督を1年やったし、FC東京やジェフ千葉でも、監督ではないけれど、トップチームのコーチをやっていますから。現役を退いてから、自分が監督になったらこうしようということは、ずっと考えていました。もちろん、コーチ時代も強化時代も、自分が監督をやりたいというオーラは絶対に出してはいけない。でも、いろいろな監督と仕事をさせてもらって勉強になりました。それを自分の引き出しに入れるか入れないかは自分が決めればいい。今は入れたものを、いつ、どうやって使おうかと考えています。


――やはり京都時代に加茂周さんやFC東京時代の原博実さんから学んだものは多いですか?


 いろいろインスパイアされましたよ。加茂さんは百戦錬磨の方だし、京都では(ハンス)オフトさんとも仕事をさせていただいた。千葉には(イビチャ)オシムさんやアマル(オシム)もいました。振り返ってみると、良い監督だなと感じたのは、こういうサッカーがやりたいんだ、というのがハッキリしている人でした。それは、練習メニューにも、ミーティングの言葉にも表れる。「こういうチームにしたいんだ」というエネルギーをちゃんと言葉に乗せられる人。だから、言葉の使い方が大事だと思ったし、ミーティングや練習の雰囲気は大事だと思った。現場と強化の両方をやらせてもらって、自分が監督だったらという視点と、この監督はどうなのかという視点、その両方を磨けたのはすごく良い経験だったと思います。


――原さんは、やりたいサッカーがハッキリしていましたね。


 スペインのサッカーが大好きでしたね(笑)。当時、原さん、(強化部長だった)徳さん(鈴木徳彦/現ファジアーノ岡山GM)、僕の3人の間に垣根はなかった。一緒に東京を強くしていこう、という想いがあった。今、すごく参考になっているのは、チームの中で社長、GM、監督のトライアングルは、常に一緒にいなきゃダメだということ。だから、今回の編成のときも、GMには必ず隣に座ってもらった。まだ若いけれど、レノファを背負っていくのは僕ではなく彼や社長だから。彼らと僕が一緒になって、交渉事も含めて修羅場をくぐり抜けていくことが大事。僕も加茂さんや原さんに鍛えられたから(笑)。

選手たちに世界基準を常に意識させたい

ザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチ(右端)、歴代代表監督に「見られて恥ずかしいサッカーはしたくない」と霜田
ザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチ(右端)、歴代代表監督に「見られて恥ずかしいサッカーはしたくない」と霜田【写真:田村翔/アフロスポーツ】

――ザッケローニ監督から影響を受けたところはどこですか?


 アルベルトは選手を気持ち良くプレーさせるのが、本当にうまかった。選手たちは楽しそうに、伸び伸びとプレーしていたし、だからこそ、あのときの日本代表は魅力的なチームだったし、右肩上がりの成長曲線を描いていったんだと思います。ただ、サッカーは気持ちいいだけでは勝てないということも学んだ。勝ちたいなら嫌でもこれをやれ、ということも、やらせないといけない。だから、選手を気持ちよくプレーさせることと、選手にあえてストレスをかける部分、この2つを両立させるのが、本当に良い監督だと思います。


――その両方ができる人は、いましたか?


 オシムさんは、その両方をすごく高いレベルでできる人だったと思います。自分もそうありたいけれど、やっぱり難しいことです。


――霜田さんは以前、アギーレ監督のトレーニングは面白いとおっしゃっていましたが、アギーレさんの練習メニューを取り入れたりもしていますか?


 練習メニューは基本的に僕のオリジナルです。たしかにハビエルの練習はすごく面白かったけれど、ハビエルの目的と、僕の目的は違うから、メニューは当然変わってくる。だから、ハビエルの影響を受けているのは、雰囲気作りやオーガナイズの面。良いプレーを褒めるときと悪いプレーを叱るときのテンションが同じだったり、練習の設定を必ず走らないとこなせないようにしたりとか、練習が流れるように進んだりとか。そういうことは参考にしています。


――今のレノファのインテンシティーの高さや前へのスピード感は、ハリルホジッチ前監督が日本代表に求めていたことを霜田さんなりにかみ砕いて、落とし込んでいるのではないかと感じています。


 そうですね。そういう部分もあります。ヴァイッドが求めていたのは世界レベルのことで、僕らはJ2だから、そこまでやる必要がないかといったら、そんなことはない。日本代表、J1、J2とかは関係なく、常に海外に向けてアンテナを張っていないと、日本のサッカーはよくならない。「J2にそんなのを求めても、できないよ」と言っていたら、いつまでたってもJ1に上がれないし、J1に上がってもACL(AFCチャンピオンズリーグ)では勝てないでしょう。


 僕は強化の立場としてワールドカップを体験させてもらったわけだから、J2とはいえ、うちの選手たちにも世界基準を常に意識させたい。それに、アルベルト、ハビエル、ヴァイッドに見られて恥ずかしいサッカーはしたくない。「シモ、いいチームじゃないか」「シモ、ちゃんと俺が言っていたことを実践しているな」と感じてもらえるサッカーをする。それが彼らへの、日本サッカー界への恩返しになると思っていますから。

飯尾篤史
飯尾篤史

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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