水谷と張本、並び立った2つの才能 「打倒中国」は世界卓球で果たされるか
懸念は団体戦の経験不足
個人戦とは戦い方が異なる団体戦。張本はチームW杯で負け越した 【Getty Images】
実際、2月に開催されたチームワールドカップ(W杯)で、張本は個人成績で3勝4敗と負け越し。小学生時代に所属するクラブで団体戦には出場しているが、あくまで日本国内、同世代相手の話であって地力も違うため参考にはしにくい。中学生以降、団体戦でのプレーは2016年の世界ジュニア選手権くらいなもので、経験不足は否めない。
しかし、チームW杯でどれだけ負けても、団体戦での試合を経験できたのは張本にとって大きい。技術もフィジカルも急激に成長している張本だが、経験だけは実際に試合を重ねなければ磨かれない。張本を起用し続けた倉嶋洋介男子監督は「(張本にとって)世界選手権に向けて、プラスアルファになったはず。勝っても負けても使い続けるつもりだった」と語り、張本も「格上にも格下にも負けたし、こうやって負けを経験できたのは逆に良かった」と3勝4敗という結果以上の収穫を感じている。
認め合う2人の天才が同じチームに
張本以外の代表メンバーは団体戦の経験も豊富だ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】
そして昨年、遂に張本というライバルが現れた。以前からその素質を認める発言をしていた水谷だが、世界選手権で敗れた後に「彼(張本)のためにも、自分が成長したい」と語るなど、ようやく現れた14歳年下のライバルの存在に、ワクワクしているような印象も受ける。
張本も水谷とともに戦う団体戦を心待ちにしている。「水谷さんと初めて団体戦を戦うのは、絶対に心強いと思う。水谷さんのプレーからしっかり勉強して、自分も勝ちたい」(張本)。
もちろん、刺激を受けているの今大会の代表である丹羽孝希(スヴェンソン)、松平健太、大島祐哉(ともに木下グループ)も同じはず。水谷と張本、2人の天才が織りなす関係性はチーム、ひいては日本卓球界にもさらなる成長を生むだろう。3選手ともに世界選手権団体戦の代表は経験済みで、張本のプレッシャーを和らげるためにも心強い存在だ。
倉嶋監督も今大会の日本メンバーについて「これまでは水谷がエースとして2点取ることが要求されていたが、張本が加わって層の厚さが増し、水谷の負担も軽くなるはず。前回の世界選手権、リオ五輪、チームW杯と3大会連続で決勝に進出できた。日本としてチーム力は上がっている」と、チームとしての充実を語る。
16年の前回大会、リオ五輪、チームW杯と、団体戦のビッグゲーム3大会連続で決勝に進んでいる日本だが、そのすべてで優勝を前に立ちはだかったのは中国。今大会ももちろん、最大の敵となるのは間違いなく、水谷、張本についても最大級の警戒を敷いてくるはずだ。
水谷と張本、球史に名を刻む2つの才能が、チームジャパンとしてともに戦う初めての団体戦。打倒・中国を果たし、北欧・スウェーデンの地で、再び世界を驚かせてほしい。
(文:浅野敬純/卓球王国)