無謀は承知でW杯の結果を予想してみた 3月の親善試合を踏まえた優勝国は?

沢田啓明

強豪国同士の対戦が数多くあった3月の親善試合を踏まえ、W杯の結果を予想してみた 【Getty Images】

 3月22日から27日までの国際Aマッチウイーク中、ワールドカップ(W杯)出場国が本大会に向けた強化試合を組んだ。監督がチーム力の底上げを図りつつ、選手個々の力量を見極めようとする一方で、選手たちはレギュラー確保、あるいは登録メンバー入りを懸けて懸命にアピール。W杯本番さながらの熱戦が各地で繰り広げられた。

 私はブラジル在住で、南米予選の試合は現地もしくは映像でほとんど見た。欧州強豪国のW杯予選の試合、そして3月末の強豪国の試合もほとんどを映像で確認している。これらの情報をもとに、2014年のブラジル大会以降の強豪国の動向と各大陸の総体的なレベルの推移を考慮した。さらに、高温多湿のブラジルで行われた前回大会では中南米勢とアフリカ勢が気候、風土などの点でアドバンテージがあったが、今回は夏でも概ね涼しいロシアで行われるので欧州勢に有利と思われる。これらを勘案すれば、サッカーが非常に番狂わせが多いスポーツであり、優れたチームが常に勝つとは限らないことは百も承知の上だが、W杯ロシア大会の結果をかなりの精度で予測できるのではないかと考えた。

各大陸の実力分布に大きな変化はない

 まず、基本情報として、(1)14年大会のグループリーグと、(2)3月末の強化試合の大陸別の成績を示しておこう。

(1)14年大会のグループリーグ

南米:13勝2分け3敗(2.3)
欧州:18勝7分け14敗(1.6)
北中米:5勝3分け4敗(1.5)
アフリカ:3勝3分け9敗(0.8)
アジア:3分け9敗(0.3)

(2)3月末の強化試合

南米:8勝1分け1敗(2.5)
欧州:13勝4分け10敗(1.6)
北中米:2勝4敗(1.0)
アフリカ:4勝2分け4敗(1.4)
アジア:1勝3分け6敗(0.6)

※()内は1試合当たりの平均勝ち点
※対戦相手がW杯ロシア大会の出場国ではない試合も含む

(1)と(2)を見比べると、南米と欧州が相変わらず強い。欧州は横ばいだが、(2)の試合のほとんどが欧州で行われたにもかかわらず、南米の成績はむしろ上がっている。これは、南米予選をつぶさに見て「大陸全体のレベルがさらに向上している」と感じた私の印象とも一致する。他の大陸ではアフリカの成績がかなり上がっているが、これは(2)の対戦相手に南米、欧州の強豪国が含まれておらず、中堅国以下の国やW杯予選で敗退した国ばかりだったことが大きく影響しているはずだ。

 北中米も、やはり(2)の対戦相手が中堅国以下ばかりだったにもかかわらず、コスタリカがスコットランドに、メキシコがアイスランドに勝っただけで、(1)より成績を落としている。アジアも、(2)の対戦相手に強豪国がほとんどなかったにもかかわらず、唯一の勝利はイランがアフリカ予選で敗退したアルジェリアから挙げたもの。この勝利を除いた1試合当たりの平均勝ち点は0.33で(1)とあまり変わらない。つまり、前回大会から4年近くたった現在も各大陸の実力分布に大きな変化はない、という推論が成り立つ。

優れたパフォーマンスを見せたブラジルとスペイン

スペインはイスコの活躍もあり、アルゼンチンに6−1と圧勝した 【Getty Images】

 それでは、3月末の主な強化試合の内容と結果を簡単に振り返ろう。強豪国の中で、この連戦で最も充実した試合内容を見せたのがブラジルとスペインだろう。

 ブラジルはエースのネイマールが故障で欠場したが、ロシアとドイツを下して2連勝。5バックで守備を固めるロシアを多彩な攻めで攻略し、攻撃陣はネイマールに依存していないという気概を見せた。ドイツ戦は、相手がベストメンバーではなかったとはいえ、多くの時間帯で主導権を握って勝ち切った。南米予選を圧倒的な強さで突破した実力が本物であることを示した。

 スペインは、ほぼベストメンバーのドイツと対戦し、アンドレス・イニエスタを中心とする攻撃陣が華麗なパス回しで前回大会の王者を翻弄した。スコアは1−1だったが、プレー内容は優勢だった。そして、マドリーにアルゼンチンを迎えると、イスコのハットトリックなどで6−1と圧勝。守備ではセンターバック(CB)のジェラール・ピケ、攻撃ではイニエスタという柱がおり、選手個々の能力が高い上に連係が素晴らしい。

 ブラジルと並ぶ優勝候補のドイツは、スペイン、ブラジルをホームに迎えて1分け1敗。相変わらず高度な組織力を誇るが、敵の突出した個の力を抑え切れない場面があった。

コロンビアは調子に乗ると手がつけられない

フランスを相手に2点差をひっくり返したコロンビア。調子に乗ると手がつけられない 【Getty Images】

 最大の驚きは、グループリーグ初戦で日本と対戦するコロンビアだろう。パリで強豪フランスに挑み、守備のミスから失点を重ねたが、ハメス・ロドリゲスらが躍動し、後半はフランスを圧倒して3−2の大逆転勝ちを収めた。ただし、その4日後にオーストラリアとスコアレスドロー。好不調の波があり、時に集中力を欠いて失点するが、調子に乗ると手がつけられない。

 コロンビアに不覚を取ったフランスは、ロシアにはキリアン・ムバッペの2得点などで3−1と快勝。個人能力は世界有数で、連係と試合運びを改善できれば優勝も狙える。

 最も評価を落としたのが、4年前に準優勝したアルゼンチン。W杯出場を逃したイタリアを2−0で下したが、スペイン戦では守備のミスが続出。リオネル・メッシとセルヒオ・アグエロが故障で欠場していたが、長年、守備の柱を担ってきたハビエル・マスチェラーノの衰えが顕著で最終ラインも脆弱。メッシらが復帰しても、このままでは苦しい。

1/2ページ

著者プロフィール

1955年山口県生まれ。上智大学外国語学部仏語学科卒。3年間の会社勤めの後、サハラ砂漠の天然ガス・パイプライン敷設現場で仏語通訳に従事。その資金で1986年W杯メキシコ大会を現地観戦し、人生観が変わる。「日々、フットボールを呼吸し、咀嚼したい」と考え、同年末、ブラジル・サンパウロへ。フットボール・ジャーナリストとして日本の専門誌、新聞などへ寄稿。著書に「マラカナンの悲劇」(新潮社)、「情熱のブラジルサッカー」(平凡社新書)などがある。

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント