「平成の怪物」が演じた粘りの96球 笑顔なし降板も感じさせた復活の予感

ベースボール・タイムズ

指揮官も感じた「次につながる部分」

森監督と話す松坂。森監督はこの日のピッチングに一定の評価を与えた 【写真は共同】

 この投球に、入団テストの機会を与え、復帰登板の道筋をつけてきた森繁和監督は手放しで褒めることはしなかったものの、一定の評価を与えた。

「今日の登板をどのように評価するのかは人それぞれ。そう簡単にはいかないと思っていたし、簡単にいってもらっても困る。苦しんで、苦しんだ上での(勝利)というのはあるだろうと思っていたが、野手のほうが硬くなっていたなと……。不運な当たりが多かったという見方もあるが、それは野球につきもの。次につながる部分もあったから、今度はファンのみなさんに喜んでもらえて、チームの勝利に貢献するピッチングをしてくれれば。要所で簡単に点を与えなかったのは相手に的を絞らせなかったし、あとは先頭打者を確実に抑えていけば球数はもっと減らせるだろう。そういう点を含めて次に向けた課題ですね」

 気になる次回の登板については、右肩の状態を見極めたうえでの判断になることを明かした。

「明日(6日)、一度(1軍)登録を抹消する。まずは中6日で投げられる状態になるのかを見て、投げられるのであればローテーションに入れることも考えていく。まずは6日後の状態がどうなのかということ」

 開幕前には中10日や月に一回の起用法をプランに掲げていたが、先発ローテの一角を匂わせる発言が出たことは、この試合の登板が有意義なものであったことを間違いなく意味する。

「特別な感情はなかった」から目指す次なる目標

 オープン戦の最終登板となった3月25日の千葉ロッテ戦では5イニングで6安打3四球の3失点。1死二、三塁の場面から2本のタイムリーを浴びた投球に脆さを感じずにはいられなかった松坂だったが、そんな不安も公式戦の本番で払拭(ふっしょく)してみせた。今後の課題は松坂自身が降板後の談話で明かしていたように、「先頭打者をアウトにして、球数を減らす」こと。加えて、オープン戦の最終登板と公式戦初登板のいずれも3盗塁を許してしまっている点は、窮地を広げないためにも対策を講じる必要性は大いにあるといえるだろう。

「今日の試合でマウンドに立つことが決まってからは、この日を目標にやってきました。ボクの中ではチームを勝ちにつなげることしか考えていなかったので、マウンドに立った時の特別な感情はなかったですね。次回の登板は決まっていませんが、次につなげていきたいですね」

 松坂の起用に対して、一部では「松坂のためにチームがあるわけではない」との厳しい声も浴びせられていたが、そんな雑音をトーンダウンさせるだけの投球を披露したことは間違いない。あとは松坂自身も欲している白星を挙げて高らかに復活を誇示するのみ。06年9月19日以来の白星。その時はそれほど遠くないだろう。その時まで、“平成の怪物”は再び、爪を研ぐ。

(高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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