存在感増す怪力・栃ノ心と怪物・逸ノ城 群雄割拠の時代は新たなステージに

荒井太郎

来場所は大関取りへ

 給金相撲で大関戦2連敗と足踏みした栃ノ心だが「落ち込んだけど、落ち込んでも仕方がない。黒が白になるわけじゃないんだから」。しっかり気持ちを切り替えて臨んだ12日目の横綱鶴竜戦で、三役としては自身2度目の勝ち越しを決めた。

 10勝目を懸けて臨んだ千秋楽の逸ノ城戦は右四つ、左上手を引きあう両者がっぷり四つの体勢から、相手の上手を切った栃ノ心が「攻めると疲れるから、疲れさせてから攻めようと思った」と冷静な取り口で巨漢を真っ向から寄り切る力相撲で勝ち星を2桁に乗せた。

 これで横綱、大関総当たりの地位で2場所連続となる2桁白星。八角理事長は「2桁なら文句なし。当然、来場所がそういう場所になる」と栃ノ心の5月場所での大関取りを明言した。

“戦国時代”を制するのは?

2日目に大関高安(左)を破った逸ノ城。栃ノ心とともに存在感を増している 【写真は共同】

「ケガをしない体を作って稽古をやり直して(5月場所の)初日を迎えたい」。大関取りに関する直接のコメントこそ避けた栃ノ心だが、その口ぶりは自信がありありの様子。

 横綱の優勝で幕を閉じた3月場所だったが、上位陣の不振は依然続くなど、土俵は今、まさに誰が優勝するのか、予想がつかない群雄割拠の時代を迎えているのは確かだ。昨今の土俵を盛り上げた御嶽海をはじめ、貴景勝、阿武咲、北勝富士らの若手ホープたちは後退を余儀なくされた。

 対して栃ノ心と同様に好調だったのが、2場所連続10勝の星で2年半ぶりに三役に復帰した逸ノ城。これまで何度となくダイエットに失敗し、今場所は216.4キロと体重は特に絞ってはない。しかし「今は体の状態はいい。体重もあるけど、動きは悪くない」と巨体を生かした積極的な攻めが光り、10日目での勝ち越しは三役としては自身最速。

「その辺は前よりちょっとは成長したんじゃないかな」と本人も手応えを実感していた。千秋楽で栃ノ心に敗れ惜しくも3場所連続10勝はならなかったが、来場所は返り関脇が濃厚。“怪物”復活を印象づけた。

“戦国時代”を制するのは誰か。低迷期を脱し、捲土重来(けんどちょうらい)を果たしてさらにパワーアップした栃ノ心、逸ノ城が名乗りを上げようとしている。

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著者プロフィール

1967年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、百貨店勤務を経てフリーライターに転身。相撲ジャーナリストとして専門誌に寄稿、連載。およびテレビ出演、コメント提供多数。著書に『歴史ポケットスポーツ新聞 相撲』『歴史ポケットスポーツ新聞 プロレス』『東京六大学野球史』『大相撲事件史』『大相撲あるある』など。『大相撲八百長批判を嗤う』では著者の玉木正之氏と対談。雑誌『相撲ファン』で監修を務める。

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