畠山愛理が迫る上地結衣、孤高の道のり 車いすテニス世界1位の心境とは?
トップアスリートが気にする会場の作り
上地はリオパラリンピックで、車いすテニスの日本人女子として初めて、シングルスで銅メダルを獲得した 【写真:アフロスポーツ】
上地 2度目ということで少し落ち着いてできました。リオはほとんどセンターコートで試合だったんです。そこは他の選手と比べて有利だったかな、とは思いますね。テニスは使用するコートの大きさがとても重要なんです。センターコートだとサイド、エンドなどとても広くとってある。他のコートだとそのスペースが小さい。後ろが広いほど走れる選手は有利なんです。私はどちらかというと走りたいので、広いコートで良かったです。
畠山 広さなんですね。新体操ではアリーナの天井にすごく左右されるんです。手具を投げるので、高さが大事。また、ライトがまぶしいと投げた手具、ボールとかが消えてしまう。投げた後に回転したりして目線を外すのでパッと見た時に「あれ、ない!」と思ったら、目の前に落ちてきたりとか。天井がすごく気になりますね。
上地 天井の高さって、場所によって違うのですか?
畠山 全然違いますね。高すぎると、感覚がちょっと狂ってまっすぐ投げたつもりなのに手前に落ちてきたりとか。だから、試合でそのアリーナに着くと、まずは手具を投げて、体育館の天井の高さや感覚を確認することが大切なんです。
競技人口の拡大への取り組み
新体操の普及に取り組む畠山さんは、上地が神戸オープンの運営に関わっていると聞いて興味津々だった 【Photo:越智貴雄/カンパラプレス】
上地 大事な大会という中に、グランドスラムとパラリンピックの両方があります。ロンドンの頃は、やはりパラリンピックが自分の中では大きかったですが、そこから毎年グランドスラムに出場しタイトルを取れるようになってからは、やはりグランドスラムでもしっかり結果を残したいと思うようになりました。
――上地選手はこれまでに2度、世界ランキング1位になっています。世界一を実感した瞬間というのは、ありましたか?
上地 最初が2014年で、2度目が昨年の6月。14年の時には全く1位になったという実感が無くて、むしろ1位と自分とのギャップにすごく戸惑いがありました。私がイメージする1位の選手は、出ている全ての選手に勝つというような圧倒的な力がある。そんなイメージだったんですが、自分はそうじゃない。
畠山 テニスはすごくたくさん大事な試合があって、上地選手はその一つ一つで結果を残されている。それでも自分のイメージする1位というのがもっと高いところにあって、単に優勝ということだけで満足しないんでしょうね。
――一方で、上地選手は地元の神戸オープンにも出場されて大会運営のお手伝いをしながら、若手育成の場に携わっていますよね。
上地 私自身、13歳の時に神戸オープンに初めて出場して、私に一生懸命テニスを教えてくれた人たちと一緒に戦った。自分を育ててもらった大会でもあるんです。それを次の世代に引き継いでいきたい。学生など、なかなか大きな大会に出られない選手たちに、一つでも多くポイントが取れる機会を作りたい、という思いもあります。
畠山 新体操も実は競技人口がとても少ないんです。私はたまたま自宅の近くに新体操の教室があったから触れることができました。そこで楽しさも難しさも経験できれば、やってみようという子どもが増えていくんじゃないかな、と思うんです。私自身、リボンに憧れて始めたので。「キレイ」「やってみたい」という気持ちがすごく大切だと思います。知っている、見たことがあるのと実際にやってみるというは大きな違いがあるんですよね。体験できる場がある時、私はリボンを積極的に持ってもらうようにしています。
上地 私が小学生の時には、みんな一度は新体操を経験していましたよ。
畠山 え、本当ですか?
上地 ただ、体験して楽しめるんですけど、そこから競技として本格的に飛び込むのはハードルが高いのかな、と感じました。
畠山 おっしゃる通りなんです。やってみて楽しいところまではいくんですが、すぐに辞めてしまう子どもも多い。体型維持のための努力も必要ですから。食生活など適切な指導があれば乗り越えていけるんですけど、きちんとした練習環境がないと続けられないこともあるかもしれません。