再現性高い“Aスイング”でスライス撲滅 プロのスイング、ここを真似すべし!【リディア・コ編】
【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
すべてを入れ替えた世界NO.1プレーヤー
「私がティーチングをしてから、初めて長い間、リディアの成績が低迷した。そして、3C(coach、club、caddie)のすべてを変えてしまったんだ」
選手とコーチにはよく起こることだと言いながらも、どこか悲しげにリディア・コとの関係ついてレッドベターは語った。
彼女は現在でも世界ランク1位を保持している。しかし、リディア・コの両親はこの勝てなかった半年を重く受け止めた。コーチばかりかクラブ、キャディに至るまですべてを変更したのだ。
リディア・コが選んだ新しいコーチは、奇しくも以前レッドベター・アカデミーのヘッドコーチを務めていたゲーリー・ギルクリスト。ギルクリストは日本でもおなじみのポーラ・クリーマー(米国)やフォン・シャンシャン(中国)を育て、昨年、全英リコー女子オープンで優勝し米LPGAツアーの賞金女王になったアリヤ・ジュタヌガン(タイ)ら女子プロやジュニアの育成に定評のあるコーチだ。
ギルクリストのティーチングメソッドの基礎は、従来のレッドベターのメソッドである。リディア・コはそれまで取り組んできたレッドベターが提唱しているAスイングではなく、レッドベターが従来提唱していた“アスレチックスイング”を選んだのだ。
スライサーに効果的なAスイング
「再現性の高い安定したスイングを、より簡単に習得できるスイングを求めてきた」
レッドベターが提唱するAスイングのコンセプトはスイングにおける再現性だ。
Aスイングの最大の特徴は、左腕が地面と平行になる直前のバックスイングのポジションに表れている。
「手は常に体の近くでヘッドは外側にキープし、シャフトと背骨は平行のバックスイングを行うことで、今までのように振り上げるバックスイングより20〜25%クラブの移動距離が短い」
レッドベターはクラブと腕を極力動かさずにバックスイングを行うことで動作の無駄を排除し、クラブと体の動きをシンクロさせる。このスイング再現性がショットの正確性と安定性を生みだす。
リディア・コはこのAスイングの再現性の恩恵を受け、ショットの正確性に磨きをかけ世界一の座に就くことができたのだ。
弱々しい擦り球のスライスをなくす方法
スライサーの多くはダウンスイングで手に力が入ってアウトサイドインのカット軌道になる。そのため、インパクトでフェースが球を擦ってしまいスライスになる。
Aスイングの最大の特徴は、ループ軌道だ。かつて、レッドベターがAスイングを一言で表現した際、「ジム・フューリク(米国)のようなループスイング」と表現したことが強く印象に残っている。
カット軌道になりにくくするためテークバックで目いっぱいヘッドをアウトサイドに上げ、シャフトを立てることで、切り返しの時にそれ以上にアウトサイドからクラブを下ろすことができなくなる。切り返しで多少手に力が入っても、自然とインサイドからクラブが下りてくるようになるのだ。
このAスイングの軌道を取り入れてアウトサイドにテークバックし、インサイドからダウンスイングするループ軌道を行うことで力強いドローを打つことができる。
スライスを撲滅する軌道の作り方
1、できるだけ手元の動きを少なくすること。手元の動きが少なければヘッドが縦に上がりやすくなり体と腕の関係性が良くなる。
2、手元だけを外側に上げないこと。あくまでも体もしっかりと回転させる。
またテークバックの際、シャフトの角度を立てるのもポイントだ。テークバックでアウトサイドにテークバックしてもシャフトが寝て(倒れて)しまうと、体と腕の関係性が悪くなり振り遅れなどが発生する。
さらにシャフトの角度が寝ていると、ヘッドが重く感じられて手に力が入りやすくなるという弊害もあるため、クラブを軽く感じられるポイントを探しながらシャフトの角度を調整してみるとよいだろう。
そして、カットスライサーはフェースローテションをする習性がない。ドローを打つためにはインパクトでフェース面が変える意識を持つことが必要になるだろう。
「リディアはアニカ・ソレンスタム(スウェーデン)を超える可能性がある」
2014年の来日レッスンイベントの昼食で、指導を始めたばかりのリディア・コについて興奮しながら語っていたレッドベターが強く印象に残っている。
ギルクリストに受け継がれたレッドベターの技術がリディア・コを伝説の選手へと導くことだろう。
※この記事は2017年4月4日にスポーツナビで配信した記事を再掲載したものです
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