北京に向け“全日本”としての強化を 船木和喜氏がラージヒル団体を解説
スキージャンプ男子ラージヒル団体に出場した日本チームは6位に終わり、2大会連続のメダル獲得とはならなかった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
日本は1番手を務めた竹内が1本目で6位につけると、続く伊東、葛西もK点(125メートル)付近のジャンプをそろえ順位を保持する。4番手の小林陵は1本目で132.5メートル、2本目も130メートルと得点を稼ぐが、上位陣との差は埋まらず、結局一度も順位を変動させることなく8本のジャンプを終えることとなった。
今回のラージヒル団体の結果について、1998年長野五輪で2つの金メダルを獲得した船木和喜さんに解説してもらった。
フェアな自然環境で力の差が出てしまった
大会序盤は荒れ模様だったジャンプ台の自然環境だったが、団体では“フェア”な条件の中での戦いとなった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
残念な結果ですね。まずジャンプ台の状況に関して、今大会の中で一番良い自然環境でした。(10日の)ノーマルヒルでは風が荒れていましたが、ラージヒル個人(17日)、ラージヒル団体と徐々に条件が良くなっており、自然環境的には“ハズレ”がない状況になっていました。言い訳ができない内容になりましたが、その中で上位国との力の差が出てしまいました。
――実際、現地にも行かれていましたが、ジャンプ台の環境はどうだったのでしょうか?
最初は風に対しての対応がすごく必要なジャンプ台というイメージがありました。ですが私が行った時には、マイナス何十度という気温でもなく、風も弱まっていました。
日本チームの練習も見ていたのですが、練習では130メートル付近まで飛んでいて、とても良い内容でした。ただゲートなどが統一されたままの本戦において、ここまでの差が出てしまったのは残念でした。
小林陵の躍進は明るいニュース
小林陵侑(左)の五輪での躍進と、小林潤志郎(右)のW杯の勝利は、日本にとって明るいニュースだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
ジャンプ競技というのは感覚の競技です。地に足が着いていませんので、(飛んでいる時の)その感覚と、ちょっとしたきっかけで、自分が思っていなかったジャンプができ、一気にステップアップできる選手が出てきます。それを五輪という大舞台で、一つ上の力のグループに行けたというのはすごい成長だったと思います。
――小林陵選手は、ノーマルヒル個人で7位、ラージヒル個人で10位タイと日本人最上位につけ、大会の中で躍進を見せました。
日本の“エース”と呼べる位置に来られましたね。今回の大会で、そのポジションに立ったところだと思います。日本にとってこれはすごく明るいニュースです。今大会では2人、五輪に初参加しましたが、その2人のうちの1人が、五輪で結果を出して1つ上のグループにステップアップできました。
今回、兄の潤志郎選手は団体メンバーから外れてしまいましたが、今季のW杯で1勝を挙げています。これも日本にとっては収穫ですし、そういうところを見ると、明るいニュースがなかったわけではないと思います。
また団体戦においてはベテランの3人がいたからこそ、この位置で終われたとも言えます。この3人だからこそ、この結果で済んだのではないでしょうか。