主将で金! 小平が一夜明けて会見 ライバルとの友情と亡き友への思い

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サングラスに気づかないほど集中

スケート靴は五輪カラーで臨んだ 【写真は共同】

――レース後に、(金メダルを獲得した)フィギュアスケートの羽生結弦選手(ANA)から勇気をもらったと話していましたが、彼の金メダルの瞬間をどう知り、それがどうレースにつながったか。もし、羽生選手と話す機会があったらどんな話をしたいですか?

 羽生選手の演技はテレビで見ました。リンクに立った時、演技に向かう姿勢がもうすでに違うというか、多分何も考えなくても技が決まりそうなたたずまいをしていたので、「私もこんな雰囲気でいけたらいいな」と感じていました。話す機会があれば、ケガをしていた期間にたくさん論文を読んだということなので、どんな論文を読んだのか聞いてみたいと思います。

――スケートができる環境が減ったり、競技に取り組む子どもも減ってきていると思います。スケートに限らず、スポーツを頑張ることが何につながり、何に生きるのか。また、練習用のサングラスでレースをされたと聞きましたが、レース前に平常心でないこともあったのかを教えてください。

 まず一つ目の質問ですが、子どもたちがスケートというスポーツに興味を持って、やりたいと思い始めてくれるといいなと思っています。やはりどんなスポーツでもそうですけれど、私が長野五輪で大きな感動をいただいたように、きっかけ一つで「やりたい」という好奇心が生まれると思うので、その好奇心の芽を親御さんたちがしっかりと伸ばしていってあげるといいなと願っています。

 サングラスについては……相当集中していたんだと、自分で思います。いつもリンクに上がる前に、気持ちのスイッチの入れ替えで違うものに変えているんですけれど、体を温めたその集中力のまま氷に立ってしまいました。眼鏡をなくしたと思ってつけていた、みたいな感覚で(気付かなかった)。表彰式の時に「サングラスはつけちゃいけないよ」ということで外して、関係者に渡した時に、「あ、私このサングラスしていたんだ!」ということに気付いて。「すいません!」という思いでした(笑)。

――小平さんはこれまでさまざまな努力をされて金メダルにたどり着いたと思いますが、自分がやってきた中でこれだけは誇れる、他の人にはこれだけは負けないということがあれば教えてください。

 他の方々を見ても、それぞれどんな人を見ても、皆さんすごいなと思う部分があるので、「これだけは負けない」という部分を探すのはすごく難しいです。ただ、負けないというよりも、自分が自信を持っているのは、自分の生き方は自分で決める、自分で選択するという部分に対しては、本当に曲げずに歩んで来られたので、覚悟を持って自分の進みたい道に行くという意味では、すごく自信を持っています。

「日本語はあまり得意では…」

――金メダルを取って景色や世界が変わったと思うところがあったら教えてください。また、日本に帰ってしたいことがあれば教えてください。

 まずはメダルを取ったことで景色が変わったかということですが、日本でどのような報道をされているかまだ見ていないですし、周りの皆さんの目がどうなのかはまだ実感していないので、分かりません。ただ、こうして記者の皆さんに集まっていただいて、その前で話せることはなかなかないので、とてもありがたいことだと思っています。

 日本に帰ったらという話ですが、帰って解団式を終えてからすぐに世界スプリントで中国へ行くので、しばらくはゆっくりできないのかなと思いますが、まず帰って家族と話をしたいです。

――昨日のサンファ選手とのやり取りや、オランダでオランダ語を学ばれたりしていますが、今話せる言葉は? 昨日のサンファ選手とのやり取りは何語で?

 韓国語は本当に少しです。単語であいさつとか、「チャレッソ(よくやった)」「チュッカヘヨ(おめでとう)」など、そういう言葉は要所要所で使うことができます。英語は苦手です。オランダ語は、最近オランダのテレビ局からインタビューを受けることも多いのですが、最低限の受け答えはできるんですけれど、もうそろそろ語量に限界が来ているかなというのを感じているので、もう少し勉強したいと思います。昨日は中国の方からも取材を受けて、自己紹介くらいは中国語でできます。日本語は、ちょっとまだ、あまり得意ではありません(笑)。(サンファ選手には)最初の「よくやったね」という(意味の)「チャレッソ」は韓国語で、あとは英語です。

今回の五輪は「また成長」

金メダリストがかぶるという帽子をかぶって喜ぶ小平 【写真は共同】

――靴の配色が五輪カラーになっていたと思います。どういういきさつ、思いで決めたのですか? また、レース後に帽子を渡されてかぶっていたと思います。おそらくオランダからだと思いますが、その辺を聞かせてください。

 なかなか私のシューズが五輪カラーと気付いてくださる方はいないんですけれど、五輪をイメージして作ってもらいました。実はあの靴は大学1年の時に型を取って2年でできた靴を、革をリメークしながら長く使っているもので、かなり年寄りのスケート靴です。最初は黒とシルバーで、その後は何色だったかは忘れてしまいましたが、直接リメークするのに、(シューズメーカーの)マーケージさんに行ってお願いする時に「カスタマイズできるよ」ということだったので、使える色は全部使おうと思って、五輪カラーにしました。

 帽子は自分でもよく分かっていなくて、確かバンクーバー(五輪)の時にサンファ選手ら金メダリストがかぶっていたなと思って、「これは金メダリストがオランダ人からもらってかぶるものなんだな」という暗黙の了解があって。サンファ選手がそれを知っていて「これ、奈緒がかぶるやつだよ」と言われて、「あ、これか」と思って、オランダ人の前でかぶったら喜んでくれていたので、良かったなと思っています。

――五輪は3度目の出場ですが、過去2度の五輪がどういう五輪で、今回金、銀とメダルを取って目標のタイムも出して、どんな五輪になったかを教えてください。

 一言で言えば、バンクーバー五輪は「成長」だったなと。ソチ五輪は「屈辱」。今回の五輪は、また「成長」なのかな。やっぱり成長するということは学びの多い大会になったということだと思うので、ソチ五輪は本当に苦しかったんですけれど、今回、またスケートの楽しさを思い出させてくれる五輪だったのかなと思います。

自身を表現する言葉は「求道者」「情熱」「真摯」

――自分自身と、アスリートとしての小平奈緒を表現する言葉を3つ、教えてください。

 うーん、私を表すことばを3つですよね?「求道者」「情熱」「真摯」。

――昨日36秒台を(低地では)初めてマークしましたが、今季に世界記録に挑まれた時と(世界記録との)距離や見え方が変わったかどうか教えてください。

 でも、そう簡単には出せない世界記録だなと思っています。低地で36秒台という記録は出せたんですけれど、韓国のリンク自体がとてもいいコンディションだったので、これが高速リンクに行った時にどうかなというのはありました。でも、気圧の条件や気温などがそろえば高速リンクで十分狙えるチャンスはあるのかなとすごく感じています。

――スケートの楽しさがこの五輪でまた増したような気がするとおっしゃっていましたが、スケートの楽しさとは具体的にどういったことですか?

 スケートを通して氷に呼びかけると、その声がちゃんと返ってくるというのがスケートの楽しさだなと思っています。やっぱり自分から一方的に押し付けるような声掛けをするとまったく返ってこないんですよね。すごく人との関わりみたいな例えになってしまうんですけれど、よくサッカーで「ボールは友達」と言いますけれど、人と接するようなやり取りが氷との間にあるので、氷を制することができれば友達も制することができるのかなというふうに感じます。それがスケートの楽しさです。

――昨日結城コーチからはどんな言葉がありましたか? コーチとはどんな将来設計を描いていますか?

 昨日は「立派だったぞ」と、そのような一言でした。あとはチームメートの山中(大地/電算)もレースを控えていたので、もうそちらに結城先生は集中がいっていたかなと思います。今後については、まだ結城先生と高めていきたい部分があるので、今回の経験も踏まえて、またお互いステップアップしていけたらいいのかなと思っています。

――いつも究極の滑りを目指すという話をされていますが、金メダルを取ってイメージが湧いてきたでしょうか? また、男子選手に勝ちたいと普段からおっしゃっていますが、金メダルを取ってその気持ちはどうですか?

 金メダルだったり、いい記録を出したことが究極の滑りかというとそうではなくて。やっぱり氷とどんなやり取りができたか、自分の中に残るものが、その新しい感覚だったり新しい景色だったりという部分で、なかなか言葉では伝わらない……本当に皆さんに伝えたい部分なんですけど、それを表現できない楽しさというのが、究極の滑りなんじゃないかなと思っています。それは今回、会場の雰囲気で少し感じられたものかなと思っています。ただ、それがゴールだと思ってしまうと楽しさがなくなってしまうので、また新しい景色を見に行きたいという思いがあります。

 男子に勝ちたいというのは、実際にタイムで男子に勝ちたいという意味ではなくて、何と言えばいいか……男子と競えるぐらいの意気込みで臨みたいという意味で、女子のレベルをとにかく引き上げたいと思っているだけなので、男子に勝つにはまだ何十年もかかるのかなと思っています。

――先ほどゴールという言葉がありましたが、小平奈緒というスケーターの最終的な到達点はどこにあるのでしょうか?

 今はまったく想像ができません。駆け抜けている途中なので、まだゴールは見えてきません。でも、突然、その日が来るのかなと思っています。

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