羽生が作る雰囲気、引き込む力に注目 小塚崇彦の選手解説<男子編>

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ネイサン・チェンは写真映えする美しい動き

ネイサン・チェンは5種類の4回転ジャンプはもちろん、写真にそのまま撮れるくらいの美しい動きも見てほしい 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 続いて外国人選手です。今季全勝のネイサン・チェン選手(米国)は、4回転を5種類跳べるというのが一番の特徴です。それに加えて、体の動きは写真をバッと撮ることができるような、そんな動きをしていると思います。それくらい美しい動きをしている。スケートに関しては少し硬い部分がありますけど、それを見せない身のこなしをしていると思います。

 3大会連続の出場となるパトリック・チャン選手(カナダ)は、今季はそれほど試合に出ていませんが、自分の目標とする試合に合わせる調整はしっかりしてくると思います。彼のスケートはとても魅了的で、他の選手にはないものです。それを存分に見せつけて、フィギュアスケートは滑ることから始まるということを見せてほしいと思っています。

パトリック・チャンのスケートはとても魅力的で、それは他の選手にないもの 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 パトリック選手は一緒に試合やアイスショーに出ることも多くあったのですが、よくこちらを気にかけてくれました。ヨーロッパの選手たちが集まっていると大体がフランス語で話をしていることが多いです。そういうときには、何の話をしているか、英語で説明してくれたりしました。本当に氷上以外でも皆に親しまれています。

 ハビエル・フェルナンデス選手(スペイン)は、欧州選手権で6連覇を達成しました。欧州や北米の選手は、自分の目標とする試合にきちんと合わせてくる。はっきり言ってそれ以外の試合はあまり気にしていない。全部の試合を全力でやっていたら体が壊れてしまうという考え方の選手が多いと思います。欧州の選手にとっては、この欧州選手権が最高の戦いであり、その先に五輪があるという感じだと思います。そういう意味では状態を合わせてきているなと感じました。

今後リードしていく選手、米国の17歳ビンセント・ジョウ

 グランプリファイナルで3位に入ったミハイル・コリヤダ選手(個人資格で出場予定)は、4回転ルッツにすごく魅力があります。ただ、それが成功した場面をあまり見ることができていない。むしろジャンプの回転のところで回り過ぎている。そこをコントロールできるようになると、本当に素晴らしいスケーターになると思います。今は若さで勢いよく演技している状態なので、コントロールというのが1つのキーワードになると思っています。

米国の17歳、ヴィンセント・ジョウは今後のスケート界をリードしていく選手に成長する可能性がある 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 米国の17歳、ビンセント・ジョウ選手にも注目しています。4回転多種類時代を今後リードしていく選手だと思います。先日の全米選手権でも難しいことに挑戦し、高い基礎点を積み重ねている。だからミスをしても点数が伸びていく。技術点は速報値だったら120点くらいいっていました。そこから回転不足や減点をされて、100点弱くらいの点数になってしまいましたが、それでもその点数がある。技術点で100点を出すというのは、本当に難しいことです。それを軽々とやってしまうということで、平昌五輪はまだ厳しいと思いますが、次の北京五輪ではすごく恐い存在になると感じています。同じく4回転を多く跳ぶ選手としては、金博洋選手(中国)の方が現状では点数も出ると思います。

 メダル争いは、羽生選手と宇野選手、ネイサン・チェン選手が中心になると考えています。そこにハビエル・フェルナンデス選手が関わってくる。そのあとに金博洋選手やパトリック・チャン選手が続く形になると思います。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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