新旧の東大エースが語る未来〜日本ハム・宮台康平×遠藤良平〜

週刊ベースボールONLINE

東京大からドラフト7位で日本ハムに入団したルーキー宮台康平(左)と、1999年に東京大からドラフト7位で日本ハムに入団し2年間プレー、現在は同GM補佐を務める遠藤良平氏(右)が対談 【写真=BBM】

 東京大史上6人目のプロ野球選手となった宮台康平と、同じ赤門出身のプロ選手であり、現在はチームのGM補佐を務める遠藤良平氏。奇しくも同じドラフト7位で北海道日本ハムに入団した2人が語り合う青春の東京大野球部と、見据える未来の話。新旧の赤門エース対談をお届けする。

宮台「プロの自覚を持ってやりたい」

 東京大出身のプロ野球選手は過去に5人いるが、厳しい現実を味わっている。それだけに、赤門史上最高のサウスポーと呼ばれた宮台康平への期待は大きい。プロの世界でも見据えるのは、東京大時代のチームのテーマでもあった「下剋上」。野心を胸に異色のルーキーがプロでの大いなる飛躍を誓う。

──13年ぶりに東京大からプロ野球選手が誕生。宮台選手は入寮の際に法学部らしくポケット版の『六法全書』を持ち込んで大きな話題を集めましたが、遠藤さんが入寮した際は何を持ってきたのですか。

遠藤 僕ですか?

宮台 あっ、それ知りたいです。

遠藤 全然覚えてないよ(笑)。宮台みたいに何か特別なものを持ち込んではないんじゃないかな……。話題にもならなかったし、記者さんたちからも聞かれもしなかったと思うけど。宮台は『六法全書』を持ってくることによって話題になるというか、標的になることはちょっとは意識はしていたんでしょ。

宮台 意識はしていました。だからと言って話題作りのために誰かに言われて持ってきたわけではないですし、あくまでも自分の考えでの行動です。

遠藤 そう、そこだよね。前にも宮台とは話したことがあるけど、自分の意に反することを、周囲の期待に応えるために盲目的にやる必要はないから。これからもプロ野球選手としての道は自分自身で作っていかないといけないわけだし、そのあたりは自己責任でしっかりやっていってほしいな。

宮台 もちろんです。これからも受け止める側のことも考えながら、自覚を持って行動していければと思っています。

遠藤 鎌ケ谷での新人合同自主トレも打ち上げになるわけだけど、実際に入ったファイターズの環境については率直にどう感じている?

宮台 想像していた以上でした。野球をやるための環境がすべてそろっているのはもちろんのこと、衣食住の生活面でのバックアップ体制もやっぱりプロ野球は違うなと思いましたね。あとは指名あいさつの際に『宮台康平君の入団にあたり』と題した資料もいただき、あれを読んで気持ちもすごく楽になりました。本当に遠藤さんをはじめ、球団の皆さんに素晴らしい環境を与えてもらっているので、あとは周囲に流されないように自分をしっかりコントロールしながら技術を高めていきたいです。

遠藤 いままでは野球と勉強の両立でいいバランスを保てていた部分もあるじゃない。それが野球一本になって何か変わったことはある?

宮台 そのあたりはもうプロ入りが決まったときから気持ちの準備もしてきたつもりなので、そこまで変化に対して何か感じることはありませんでした。ただ、まだプロの世界で大きな壁にもぶつかってないので、本当の勝負はそれからなのかなとも思っています。

遠藤 そうだよね。これはみんなそうだけど、これから宮台もたくさんの壁にぶつかっていくと思うし、そこで初めて分かることもたくさんあるから。それに不思議なもので野球に使える時間が多くなったからってうまくなる、練習環境がいいから成長のスピードが速くなるものでもない。あとは野球だけになることで逃げ場がないし、これからは野球だけで評価されるわけだからね。そういう厳しい世界にいるっていうことも頭の片隅に入れながらやっていってほしい。

宮台 はい、プロっていうのはそういうものだと思っていますし、これからも自覚を持って残りの新人合同自主トレ、2月からのキャンプに入っていければと思っています。

遠藤「身体能力を高く評価している」

150キロ近い速球を武器に大学通算6勝を挙げ、“東京大学史上最強左腕”と称された宮台(左)。遠藤GM補佐(写真右)は173センチと小柄ながら鍛練と研究を重ねて大学通算8勝をマークした 【写真=BBM】

──ここまでの新人合同自主トレを視察して、遠藤さんは宮台選手の動きをどう見られていますか。

遠藤 本当に肩の不安もなさそうですし、ドラフトで指名した7選手の中でも身体能力はトップレベルにあるな、と。大学時代からそこは僕というよりは、ファイターズとして高く評価してきた部分でもあるので楽しみですね。宮台自身も大学時代と比べてもコンディションはいいんじゃない?

宮台 そうですね、ここまでは順調にきているかなと思います。2月の沖縄キャンプの中盤には1、2軍合同の紅白戦もあるので、まずはそこでしっかりと投げられるように体を作っていければ、と。

遠藤 まあ、宮台はそのあたりはこっちがとやかく言わなくても分かっていて、自分で考えて動ける選手だからね。大学時代もそうやっていろんなことを乗り越えてきたわけだから。東京六大学で6勝したこともすごいけど、最後は勝ち点まで取ったわけだから。あれは良かったし、自分もうれしかったな。

宮台 あの勝ち点は本当に東京大に受かったのと同じくらいうれしかったですし、あの喜びって東京大野球部を知っている人にしか分からないものじゃないですか。そういう部分でも東京大に入れて良かったと思えた瞬間でしたし、学生野球をやり切った感覚もありましたよね。

遠藤 ああいうのって学生野球でしか味わえないものだし、いくら能力が高くても経験できない人のほうが多いわけだから。そういう意味ではああいった経験もプロで勝負していく中できっと生きてくるんじゃないかなと思っています。

宮台「まずは1軍での1勝が目標」

沖縄・国頭村でキャンプインした宮台。大きな注目を集める中で第一歩を踏み出した 【写真=BBM】

──宮台選手のようなプレーヤーがプロで活躍すれば、野球をやりたいと思う方もきっと増えるでしょうし、野球人口の減少に歯止めをかけるのにも一役買ってくれるのではという期待感もあります。宮台選手だからこそ発信できることについてはどういう考えをお持ちですか。

遠藤 僕の思いではあまりそういったものを宮台に背負わせるつもりはないです。本当に選手として高い能力を持っているからこちらも指名したわけですし、純粋に1人のプレーヤーとしていまは一生懸命レベルアップしていくことだけを考えていってもらいたいです。彼の持つ発信力をどう届けていくかは僕らの仕事でもあるので。

宮台 そこまで考えていただけて感謝していますし、これからも一つひとつの課題をクリアしながら地に足をつけてやっていければと思っています。あとは、いまは言ってみれば特殊な存在として取り上げてもらっていますけど、話題作りだけで終わりたくはないので。しっかりと結果を出して、その姿を見て少しでもこんな選手もいるんだな、じゃないですけど、勇気や希望を与えられればいいですし、そうなればすごくうれしいことですよね。そのためにはまずは1軍に上がってひとつ勝つこと。そこを目標にしてやっていきたいです。

遠藤 まずはひとつ勝ちたいよね。宮台がファイターズのユニホームを着て勝ったらすごくうれしいし、それをスタートラインにしていってほしい。1勝だけでなく、さらにその先にあるものを目指していってほしいというか。GM補佐という立場なので、もちろん宮台だけでなく、チーム全体、すべての選手を見ていかないといけないポジションではあるんだけど、そういった姿を見られる日をいまから楽しみにしているから。

──最後に宮台選手にはプロ1年目の抱負、遠藤さんは宮台選手へのエールをお願いします。

宮台 とにかくキャンプ、オープン戦で結果を出して1軍のマウンドで投げることが目標です。そうしないといまの自分の立ち位置も分かりませんから。あとは下剋上ですかね。東京大時代もチームのテーマにしていたことですが、プロでも上を食ってやるぞっていう強い気持ちでこれからもやっていきたいと思っています。

遠藤 僕からはここまで話してきた中にメッセージは込めてきたつもりですし、持っている力を発揮できれば必ずプロの世界でも通用するとこちらは思っているので。僕にできなかったことを宮台には実現してもらいたいと思っています。そのためには、まずは2月からのキャンプだね。宮台らしく頑張って。

宮台 ありがとうございます。精いっぱい頑張ります。

(司会=岡本朋祐/構成=松井進作)
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