太田宏介と小川諒也の最も熱い左SB争い 日本代表にこの選手を呼べ!<FC東京編>

後藤勝

“秘密兵器”久保建英の台頭も期待したいが……

久保建英(右)の台頭も期待したいが、レギュラー争いに割って入ろうとしている現段階では時期尚早だろう 【(C)J.LEAGUE】

 2018年のワールドカップ(W杯)ロシア大会まであと4カ月。昨年末に開催されたEAFF E−1サッカー選手権をどのくらい有効活用できたのかは意見が分かれるところだろうが、結果だけを見ればヴァイッド・ハリルホジッチ監督のお眼鏡にかなった選手が多かったとは思えず、日本代表の選考範囲は狭まったに相違ない。平たく言えば、欧州組と、クラブW杯参加のため招集外となっていた浦和レッズ以外の選手が、W杯本大会のメンバーに入る可能性は低くなった。

 とはいえ、チームも選手も生き物だ。所属クラブでのパフォーマンスいかんによっては逆転の滑り込みもあり得るし、その可能性があるからこそ“秘密兵器”を待望する声も4年ごとに高まる。日本代表が初めてW杯に出場した1998年W杯フランス大会のメンバーに柳沢敦や中村俊輔が選ばれることはなかったが、市川大祐がバックアップメンバーとして帯同し、小野伸二がグループリーグ第3戦のジャマイカ戦で股抜きを見せた。小野と市川はそれぞれフランス大会の時点で18歳。ならば、18年ロシア大会の時点で17歳になっている久保建英の台頭も期待したいところだが、久保が20年前に比べて層が厚くなった現在の日本代表で前線のレギュラー争いに割って入ることをイメージするのは少々難しい。

 1月27日のバヤンカラFC戦で2得点、2月6日の北京控股(こうし)戦ではPKで1得点と、海外クラブとの対戦で着実に結果を残している点は評価できるが、ハリルホジッチ監督に自信を持って「戦力になりますよ」と推薦できるかと問われると、話は変わってくる。現時点ではFC東京で前田遼一、富樫敬真、ディエゴ・オリヴェイラを抜いてレギュラーをつかもうとしている存在であって、それを達成してはじめて、代表に推薦するレターを書かれる資格が生まれると思うのだ。Jリーグが開幕して以降は別だが、キャンプ中である2月の段階では、この話題は時期尚早だ。

高いキック精度に加え、欧州での経験もある太田宏介

太田は14年10月に行われたブラジルとの親善試合に出場した経験もある 【写真:ロイター/アフロ】

 いま、各Jクラブから現在の代表へ送り込む選手を選ぶとすれば、あと4カ月でレギュラー争いを制することのできる力がある。過去に選出歴があり、すぐチームになじんで機能できる。あるいは、ほとんど初めての参加だが、全く練習をしなくとも、すぐに効果的なプレーができるなど、推薦理由を満たす人材である必要がある。

 FC東京には代表選出歴がある選手が多く、特に森重真人などはあらためて名を並べるまでもなく、コンディション次第でメンバーに復帰する可能性もある。何かを代表チームに加えるという意味で推薦するのなら、左利きの左サイドバック(SB)である太田宏介と小川諒也を挙げたい。中央やハーフスペースをうまく使えない場合、はっきりと大外に出してSBにボールを預けるのは常套(じょうとう)手段だ。SBは個の力で“デュエル(球際の競り合い)”に勝ち、ワイドを駆け抜けてクロスを上げるか、切れ込んで勝負すればいい。ボールさえ出てくれば、特長は生かせる。

 昨年来、FC東京の左SBは太田と小川の争いになっている。一時は小川にポジションを奪われかけたが、太田も伊達(だて)ではない。最終的には先発の座を奪い返し、18年も序列1位で始動している。オランダでプレーしたことで、欧州リーグを体感していることも重要だが、ハビエル・アギーレ前監督体制で臨んだ14年10月のブラジル戦との親善試合(0−4)での経験も侮れない。代表の水準も、世界一の基準も分かっている。FK、CK、クロスの精度も含め、ピーク時のパフォーマンスは高い。その能力を発揮できるだけのコンディションに持っていけるかどうかが問題だ。

小川諒也の課題は精神面、新シーズンで改善なるか

メンタル面が課題とされる小川。改善されれば代表入りの道も見えてくる 【(C)J.LEAGUE】

 その太田に匹敵する小川も見逃せない。太田に似て左足から放たれるキックの精度が信頼できるだけでなく、生まれ持った身体能力の高さは、デュエルの強さを好むハリルホジッチ監督の志向に合致している。なぜ、その小川が太田を追い抜けないのか。端的に言えば、メンタル面の問題に尽きる。常に自身をミリ単位で追い込むような性格ではなく、どうしても甘さが出る。本来であれば、もっとすごい選手になっているはずなのに、そこまで詰め切れないのが現状だ。

 18年シーズンはどうだろうか。キャンプで見る限り、肉体は絞り込まれているし、練習試合ではアシストなど、結果を残しているだけでなく、相手との激しい接触もいとわない闘志も見てとれて非常に頼もしい。厳格とされる長谷川健太監督の下、太田との競争に勝てばあるいは代表に――と期待を抱くこともできる。

 しかし、精神面がどれだけ改善されているかは未知数だ。やはりシーズンが始まってみなければ分からない。言い換えれば、太田と小川の左SBの定位置を巡る競争が、FC東京の浮沈に直結するだけでなく、代表でも手薄なポジションであるSBの問題を解決する可能性をはらんでいるということ。青赤軍団の左が、ホットな戦場になっている。
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著者プロフィール

サッカーを中心に取材執筆を継続するフリーライター。FC東京を対象とするWebマガジン「青赤20倍!トーキョーたっぷり蹴球マガジン」 (http://www.targma.jp/wasshoi/)を随時更新。「サッカー入門ちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCU_vvltc9pqyllPDXtITL6w)を開設 。著書に小説『エンダーズ・デッドリードライヴ 東京蹴球旅団2029』(カンゼン刊 http://www.kanzen.jp/book/b181705.html)がある。【Twitter】@TokyoWasshoi

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