“熱男”松田宣浩の元気の源流〜最高の準備でメンタルを作る〜

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3割を打つための最善の努力と準備

7割が失敗というバッティングだが、最善の努力と準備を惜しまない 【写真は共同】

 続いて語ってもらったのは試合に臨むメンタル面。30代中盤に差し掛かり、心6の体4の割合を意識している。そこで心掛けているのは、「バッターでプロになっている以上、3割成功、7割失敗が定義なので、3割の成功をいかに大事なときに出すか。イチローさんでさえ打率10割はいかない。1打席1打席白黒つけていたら、(メンタル的にも)いろいろ大変なので、3回ぐらいしか成功しないなというぐらいの感覚でやっています」と語る。

 もちろん、「3割しか打てないんだから」と開き直ることではない。「3割を打つための最善の努力と準備」が大事だと強調する。そして、試合に臨む準備に“松田流”がある。

「同じことを毎日やる。ただそれだけですね。カレンダーのスケジュールは1月1日から12月31日まで同じです。この何月に何やっていたか?と言われたら、大体言えます。1月も最初はグアムに行って、それから東京で練習するとか4、5年ずっと一緒のことをしているので、それを変えたくないですね」

 スポーツでも仕事でも、いろいろなチャンレンジが大事なことと言われることが多いが、松田は「それは継続性のない話だと思っています」と反論する。シーズン中も練習に入る時間も練習メニューもすべて一緒。ただ、「それで一番ダメなのは、マンネリすること。惰性にならないように気持ちは常に張っています」と、日々のルーティンに取り組んでいる。結果、「気持ちをコントロールというか、お風呂入った、バッティング練習した、ウエートをした、対戦相手のビデオを見た、とかひとつひとつ区切っていっての試合だと思っています。ひとつでも抜くと気持ち悪いってなって不安になるんですよ」というところまで上り詰めた。

 レギュラーに定着した11年に原型ができ、15年から完成系に近づいてきたというプレースタイル。メンタルをコントロールして結果を出すのに大事なことは「一番成功した例をイメージすること」。その中で松田は、どんな一流のピッチャーのボールでも、ヤフオクドームのホームランテラスにボールを運ぶことをイメージして試合に臨む。

「何でもそうだと思うんですけど、しっかりと次のイメージをすることで結果に結びつくと思うんですよね。こうしたい、こうなりたいという気持ちは大きいし、成功につながりやすい。心を準備していたら体の反応に変わってくるんですよね。心が整理できていないと、体の反応もにぶいと思います」

30代中盤でもまだまだ高度な成長期

「まだ高度な成長期」と語る松田(写真右)。毎年1月恒例のグアムキャンプで体をいじめた 【写真は共同】

 最後に今年の抱負を聞いた。連覇を狙うソフトバンクは充実の戦力で優勝候補筆頭ともいうべき立場にいるが、「受けてたったらダメ。連覇を狙うのではなくて、今年のスローガンの『もう1頂!』じゃないけど、もう1回優勝したいという思いです。年度も変わっているし、どこのチームも選手も変わっているし、昨年の日本一は過去のことなので、また新しいものを作っていきたいという気持ちです」と油断はない。

 そして個人的には? ホームラン王を狙うという報道もあった。自主トレでは今年のテーマを「若返り」と口にしていた。

「僕は遅咲きの選手だと思っているんですよ。この年齢から目に見えて筋肉がばりばりついたりとか、飛距離が10メートルも20メートルも飛ぶようになるわけではないですけど、それに勝る経験をさせてもらっていることが体力ダウンを抑えている。それにポスト松田って言われるとむかつくし(笑)。年齢が年齢なので言われるのは当然なんですけど、いざ争ったら絶対負ける気はしないです。でも年齢に勝てない部分は多少出てくるので、口で若返りと言って、自分で自分を戒めるというか。まだまだこれからや、とか自分に言い聞かして、精神的に強い気持ちを持って、それで技術がついてくるかなという気持ちになっています。まだ高度な成長期だと思います(笑)」

 取材中盤、「『熱男――』ができなくなったらやめるときかもしれん」とこぼしたが、話を聞いていると、“熱男”は、まだまだ発展途上中と感じさせる。メンタルが元気を作り、そのメンタルを作るために最高の準備をする――。今年もホークスのチームリーダーとして右手を突き上げる。

今年も「熱男――」でチームを盛り上げ、野球ファンを元気にする 【写真は共同】

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