飛躍見せた「関西育ち」のスプリンター 男子短距離の主役に躍り出た多田修平

中尾義理

大阪発2020東京へ「OSAKA夢プログラム」

自ら選んだ関西学院大で、個性が磨かれ、レベルアップを続けている 【スポーツナビ】

 何が快進撃を生んだのか。答えの一端は多田の地元・関西にある。

 東大阪市出身で、今も同市内から片道約90分かけて関西学院大に通う多田は、大阪陸上競技協会が2020年東京五輪に大阪から多数の代表選手を輩出しようと2015年9月に立ち上げた「OSAKA夢プログラム」(以下、夢プロ)の指定競技者のひとり。すでによく知られた話だが、その活動の一環で、2017年2〜3月に米国合宿を行い、現地で100メートル元世界記録保持者のアサファ・パウエル氏、その兄でコーチのドノバン・パウエル氏からコーチングを受け、特にスタートが改善された。

 多田は「海外合宿に行かせていただいたり、筋力トレーニングのコーチをつけていただいたりするほか、夢プロでは同じ大阪の日本トップの選手たちと楽しく練習させてもらっています。種目などは違ってもトップ選手がどういう意識で取り組んでいるかなどを共有できることも大きいです」と、夢プロがもたらすメリットを旺盛に吸収している。

 関西学院大の環境も多田にフィットした。

 競技する体をつくる上で栄養面を第一に考え、「下宿すると外食や即席メニューに頼ってしまい、生活が不規則になるから」と自宅から通える関西学院大を選択。グラウンドは高反発の全天候型ブルートラックで、「ぼくは元々ストライドで走るタイプなんですが、速いレベルの選手とスタートダッシュをしているうちに勝手にピッチが上がってきたのかなと思います」と言い、ガトリンにも注目された出足の鋭さをここで磨いてきた。

「関学では勉強も競技も自分で考えて行動しないといけません。自主性が伸びました」と、スポーツ選抜で入学しても特別扱いされないことも気に入っている。

個人でもメダリストへ

2020年の目標は「個人で銅メダル以上の選手」であるとはっきり言い切る 【写真:アフロ】

 多田の練習を見守りながら、関西学院大の竹原純一監督から「彼は記録を出したい、レースに勝ちたいではなくて、出します、勝ちますとはっきり言うんです」と聞いて、思い出した。

 手元にある夢プロの機関紙に多田はこう書いていた。

「2020の東京五輪は憧れの場所でもあり、必ず出場しなければならない大会です」(創刊号)

「絶対に東京で活躍してみせます」(第3号)

 ポジティブに言い切る性格の多田に、「2020年、どんな多田修平が見えますか?」と尋ねてみた。即答だった。「個人で(世界選手権のリレーで獲得した)銅メダル以上の選手」と。

 この冬も不足感のある筋力を重点的に鍛え、「いい感じで練習ができています」と充実感を漂わせる多田。9秒台までもがくかもしれないし、世界の壁は厚くて破れないかもしれない。気づけばポンと9秒台で駆け抜けているかもしれないし、世界最高峰の決勝レースで名前がコールされているかもしれない。

 いずれにせよ、これだけは言える。

 この青年に、期待していい。

2/2ページ

著者プロフィール

愛媛県出身。地方紙記者を4年務めた後、フリー記者。中学から大学まで競技した陸上競技をはじめスポーツ、アウトドア、旅紀行をテーマに取材・執筆する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント