難病を乗り越え最初で最後の箱根路 順大・花澤、人間的に成長できた4年間

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同級生の言葉で気持ちに火が付いた

最後の夏に再び骨折。諦めかけた花澤の気持ちを救ったのは同級生の栃木(右)の言葉だった 【赤坂直人/スポーツナビ】

 8月の合宿中に再び両足脛骨を疲労骨折してしまう。約3カ月のリハビリの末、走り始めたのが11月下旬。「今年も箱根駅伝は無理だな」と思っていた花澤に、同級生で、チームの主将でもある栃木渡が声をかける。

「監督にアピールするチャンスを作れば?」

「(箱根を)お前と走りたい」

 その一言が花澤の胸に火をつけた。
「ありがたかったですね、本当に。励みになりました」

 そして12月に行われた学内での選考レースで結果を出し、念願だった箱根駅伝のメンバーに選出された。

苦難の4年間も「人間として成長できた」

「この4年間は困難なことばかりだったが、人間として成長できた」。箱根駅伝は競技面だけでなく、人間面も成長させてくれた 【赤坂直人/スポーツナビ】

 花澤は最終10区にエントリー。同級生の中村陵介からたすきを受け、最初で最後の箱根路を走り始めた。たすきを受けた時点で順天堂大の順位は11位。前を走る中央学院大とは1分4秒差だった。

 度重なるケガで思うように走れない時期が何度もあった。腰痛の原因が分からず、腐って何度も自暴自棄になった時期もあった。陸上を止めようと思ったときもあった。それでも、「支えてくれた監督、仲間と一緒に」という思いとともに走り続けた。花澤は必死に前を追い、来年のシード権に向けて疾走した。

 しかし、1分を超える差を逆転することができず、チームは惜しくも11位。シード権獲得とはならなかった。

 走り終えた花澤は「大変でしたけど、終わり良ければすべて良しという感じです。個人としては最後、箱根を走れて良かったなという思いと、やはり後輩のためにシード権は取っておきたかったなという思いがあります」と達成感と悔しさが入り混じった感情を話した。

 それでも「この4年間は困難なことばかりでしたが、人間として成長できました。入学した時は自分自身、プライドが高くて、周りのことはどうでも良いと思うタイプでしたが、今では周りのことをよく見たり、後輩のことを気遣ったり、チームのことを考えたりと、そういう部分で成長できたと思います。競技面ではなく、人間性の面で成長できた大学生活でした」

 彼の4年間は決して平らな道ではなかった。それでも、確かに前に進んできた道だ。流した泪の分だけ、彼を成長させたのだろう。

(取材・文:赤坂直人/スポーツナビ)

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