手で相手を“見る”パラ柔道の魅力 独自ルールが生み出す激しい攻防戦

スポーツナビ

手によって「足元が見えてくる」

常に組んだ状態で試合が展開されるため、選手はその“手”から相手の動きなどを把握して技を繰り出している 【スポーツナビ】

 悠は高校時代に緑内障を患い、視力が低下。現在は左の視覚は無く、右目はやや見えるものの狭い視野で足元はほぼ見えない状況だという。一方、順子も大学時代に病気でわずかな視力しかない。

 1対1で相対する柔道では、相手の動きを把握し次を予測、相手の裏をかいて自分の形に持っていくのが勝利への近道だろう。健常者から見れば、相手の状況把握は視覚障がいのある選手にとって難しいことに思えるかもしれない。組んだ状態でスタートするがゆえに常に攻撃を受ける可能性があるパラ柔道では、なおさらだ。

 そんな2人が頼りにしているのは“手”である。パラ柔道は常に組み合った状態で行わる。そのため、選手は手から相手の体格や技量、特徴、そして次の動きまで、あらゆる情報を獲得していく。

「どういう技をかけようとしているのか、こちらをどう崩そうとしているのか、手に感じる力の伝わり方で分かります。僕は足元がまったく見えないですが、次にどちらから足が振ってくるかなど、手の感覚で見えてきます。手は視覚になるんです」(悠)

目指すは“夫婦でメダル”

夫婦で競技に取り組んでいる廣瀬悠(右)と順子。地元開催となる東京大会で、夫婦そろってのメダル獲得を目指す 【スポーツナビ】

 柔道は日本のお家芸だ。それはパラリンピックでも変わらない。男子は1988年のソウルパラリンピックから正式競技になり、日本は毎大会メダルを獲得している。女子は2004年のアテネ大会から採用され、これまでメダルがなかったが、昨年のリオ大会で、順子が同競技の日本女子として初となるメダルを獲得した。

「街で『応援しているよ』『夫婦で頑張って』と温かい声を掛けてもらえるようになりました。スポーツ選手として見られるようになったと感じ、とてもうれしいです」(順子)

 リオ大会では1回戦、敗者復活戦とも敗れた悠も「リオから帰ってきてメダリストとメダリストではないでは、本当に格差を感じました。順子さんのコーチでもありますが、ライバルですから、横にいて正直に悔しかったですね」と決意を新たにしている。

「リオ大会では夫婦で出場できて心強かった。(東京パラリンピックに向けて)まずは2人そろって出場権を獲得することですが、2人で金メダルを取ることを目標に頑張りたい」(順子)

 3年後、夫婦でメダルへ。柔の道を二人三脚で歩んでいく。

(取材・文:森隆史/スポーツナビ)
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武井さん「またおすすめのパラスポーツが増えました」

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