球場の特徴がわかる「パークファクター」 初めてのセイバーメトリクス講座(6)
球場要素を除いて投手の力を判断
防御率のタイトルは西武・菊池雄星に譲ったものの、「xFIP」では菊池を上回りパ・リーグトップをマークした楽天の則本 【写真は共同】
カネシゲ:FIP、なんでしたっけ? えっと……。見たらすぐ思い出します(汗)。
鳥越:ピッチャーの能力を被本塁打と四球と奪三振だけで測る、と。
カネシゲ:あ、あ、分かりました! ピッチャーだけで完結できるプレーのみで能力を測るというやつでしたね。
FIP={13×被本塁打数+3×(四死球数-敬遠数)−2×奪三振数}/投球回数+リーグ補正値
※リーグ補正値=リーグ全体の防御率−{13×全被本塁打数+3×(全四死球数−全敬遠数)−2×全奪三振数}/全投球回数
カネシゲ:たしかにそうですね。
鳥越:球場の影響を排除して、もっと公平に見る方法はないだろうか。そう考えたとき役に立つのがパークファクターの概念なんです。ということで、「xFIP(エクスペクテッドFIP)」という指標が出てきました。
xFIP={13×(外野フライ×リーグ全体の外野フライに対する本塁打の割合)+3×(与四球+与死球)−2×奪三振}/投球回+リーグごとの補正値
※リーグ補正値=リーグ全体の防御率−{13×全被本塁打数+3×(全四死球数−全敬遠数)−2×全奪三振数}/全投球回数
鳥越:「被本塁打」の代わりに「外野フライ×外野フライに対する本塁打の割合(係数)」で評価しようと。まず“外野フライのうち何%がホームランになったか”をリーグ全体の平均として出します。そこで出た係数を、その投手が打たれた外野フライの本数に掛けます。それを被本塁打の代わりにしてFIPを求めようというのがxFIPです。
カネシゲ:うーん、なるほど。数式のややこしさは相変わらずですが、とりあえず球場による有利、不利をなしにしようとしているのはわかります。
鳥越:ちなみにデータスタジアムのデータによると、今年のプロ野球では、外野に打たれたフライのうち「8.8%」がホームランでした。さきほどの「xFIP」の式で行くと、「フライに対する本塁打の割合」の係数が「0.088」ということです。
カネシゲ:なるほど。外野フライにその係数をかけると、球場の有利不利を無視してFIPが出せるということですね。
鳥越:そうです。ちなみにこの「0.088」という係数は毎年変わるので、データの現場では5年とか10年とかの平均で出していると思います。ちょっと前までは、「0.11」とかを使っていたと思います。
カネシゲ:今年だけだと「0.088」と。
鳥越:今年の数字だけで見ると「0.088」です。「本塁打も含めて外野に打たれた打球×0.088」を使って出すのがxFIPです。それで見ると、今年のセ・リーグのトップ3はこうでした。
1位:マイコラス(巨人) 2.78
2位:菅野智之(巨人) 3.03
3位:メッセンジャー(阪神) 3.21
※データ提供「データスタジアム」
カネシゲ:たしかFIPは防御率の感覚で見ればいいんですよね? そうなるとマイコラスの「2.78」は先発投手としてとても優秀だ。
鳥越:一方、パ・リーグはこうなります。
1位:則本昂大(楽天) 2.695
2位:菊池雄星(西武) 2.697
3位:千賀滉大(ソフトバンク) 3.15
※データ提供「データスタジアム」
カネシゲ:えーっと、防御率では菊地が「1.97(リーグ1位)」で則本が「2.57(リーグ2位)」でした。微差とはいえ、この順位が逆転するのはおもしろい!
鳥越:則本は三振が多いというのもありますね。と、このように、球場による有利不利を排除して計算した「xFIP」はこうやって計算できますよ、というお話でした。
カネシゲ:同じFIPならこっちを見たほうが、信頼感がありますね。
鳥越:そうですね。球場の補正がついていますからね。
カネシゲ:「エクスペクテッドFIPは、パークファクターがフラットで超クールだぜ♪」とか言ったら合コンでモテますか?
鳥越:いきなりそれ言ったらドン引きでしょうね……。
江戸川大学客員教授。「セイバーメトリクス」の日本での第一人者である。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ、「AKBペナントレース」の得点換算方法の開発など、エンターテインメント業界でも活躍中。JAPAN MENSA会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。12月よりNHK文化センター青山校にて『スポーツをデータで楽しむ』講座を担当する。