初陣で優勝飾った稲葉監督の手腕 東京五輪へ向けて侍ジャパンが好発進

中島大輔

統率力と決断力光った指揮官

初采配となった稲葉監督だが、チームリーダーとしての統率力と大幅な打順変更などの決断力を発揮した 【写真は共同】

 反省を口にした稲葉監督だが、采配面は全体的に及第点以上をつけられる。特に調子を見極めての打順変更と、チームを一つにまとめ上げた統率力は見事だった。「監督としてもっと勉強したい」と話したが、代表チームの指揮官に求められるリーダーシップと、決断力が垣間見えた3試合だった。

「正直余裕がなく、とにかくこの試合を勝つことを精一杯やっていました。明日から、来年の3月に向けて人選を考えていこうと思います」

 今回結成されたU−24の代表チームは、最大目標である東京五輪での金メダル獲得に向けた一歩目という位置付けだった。稲葉監督は3年後を見据えてテストをするのではなく、目の前の勝利だけを追い求めたと振り返るが、そうして合宿地の宮崎から過ごした時間は後々に生きてくるはずだ。

緊張感の中で戦えたのが収穫

「こういう緊張感の中で試合をできたのが、一番の収穫だと思います」

 3試合ともに3番として打棒を振るった近藤は、そう語っている。試合はもちろん、さまざまな選手の打撃フォームに目を凝らし、得たものが多かったという。

「長打をもう少し打ちたいので、山川さんに考え方を聞きました。野球選手である以上、また日の丸を背負ってこういう緊張感でやりたいですね。トップチームになったらもっといい選手もいっぱいいますし、追いついていかないといけないので、シーズンでしっかり結果を出していかなければと思います」

 4番の重圧の中でプレーした山川は、周囲から刺激を受けたと明かした。

「年下でも外崎、近藤、西川は、こういう大会で結果が出るのはすごいことだなとあらためて感じました。この3試合で呼ばれて、合宿中からずっと4番という形でやらせてもらって、まずは来シーズン、この経験が生きていかないといけない。『あいつ、代表の4番を打っていたのに、自チームで出てねえぞ』という感じにならないようにしたいですね」

 6打数無安打に終わった源田は、シーズンオフに向けた課題が見つかった。

「シーズン中に調子が悪いときには、いつも見てくれているコーチたちがアドバイスをくれますが、今回はそれがないじゃないですか。そうなったとき、自分で修正する力がないので。困ったら、これだけやっておけば大丈夫だよというものを身につけていかないと、こういうときに修正できない。走塁でも、もっとリードも取れたかもしれないし。いろいろ思うところはあります」

発展途上中のメンバーの今後に期待

決勝で先発した田口は7回無失点の好投でベストナインに選出。2020年東京五輪のメンバー入りも期待される 【写真は共同】

 今大会に出場したU−24代表のメンバーから、果たして何人が東京五輪に選ばれるかはまったくの未知数だ。本番では年齢制限がなく、24歳以下にも大谷翔平(日本ハム)や千賀滉大(ソフトバンク)ら、すでにフル代表で活躍している面々もいる。

 ただし、「アジア プロ野球チャンピオンシップ」に出場した選手たちが日の丸を背負って戦ったことで、多くを得たのは事実だ。今回の経験を糧にレベルアップすることができれば、東京五輪での代表入りも見えてくる。まだまだ発展途上のメンバーだが、確かな能力を感じさせる戦いぶりだった。

 優勝を果たした直後の会見で、稲葉監督は2020年をこう見据えている。

「3年ありますけど、集まれる回数も決まっています。私自身、監督としてもっともっと勉強して、3年間をかけていいチームを作れるように、しっかりやっていきたいと思います」

 チームとして勝ち取った最高の結果、そして普段のペナントレースでは得難い経験は、選手たちにとって今後のキャリアで、必ずいつか生きてくるはずだ。そうして侍ジャパンを底上げすることが、東京五輪での目標達成へ、一歩ずつ近づいていくことになる。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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