ラグビー界の“万能選手”をどう生かすか 松田力也の「ベストポジション」は?

斉藤健仁

「相手の足が止まってくる時間帯があるのは感じていた」

ボールを持って突進する日本代表・松田力也 【斉藤健仁】

 後半、チームとして、敵陣で戦う意識が高まり、ミスやペナルティーも少なくなったため、日本代表のペースとなる時間が増えて結局、3トライを挙げられたことについては、松田も「アタックではプレッシャーをかけられた部分では今後につながりましたし、スコアできたことは自信になった」と胸を張った。後半19分、再び、松田はカウンターからランで仕掛けてゲインして非凡なところを見せたが、直後にSOに控えから田村が入ったため、松田はFBに下がり、その後は決定的な場面で仕事をすることはなかった。

 松田はオーストラリア代表戦を「一人一人のフィジカル、パワーはありました。ただ後半、相手の足が止まってくる時間帯があるのは感じていたので、そこでどれだけペースを上げて自分たちのラグビーができるかというところが大事。またどれだけ我慢をして、ボールをキープし続けられるかというのは、今後の大きな課題だと思います」と振り返った。

所属チームと異なるポジションで出場する難しさ

試合後、オーストラリア代表と健闘をたたえ合う松田 【斉藤健仁】

 ジョセフHCは松田に対して「控えに置いておけばBKはどのポジションでもできる」と信頼を寄せており、トップリーグや先週の世界選抜戦のパフォーマンスを踏まえて、今回、オーストラリア代表戦で10番に抜てきしたはずだ。

 ただ、やはり10番は相手ディフェンスとの間合いがあまりない中で、素早く有効な判断をし続けなければいけないため、緊急事態ならいざ知らず、今回のようなビッグマッチは普段から10番でプレーしている選手を起用すべきではなかったのか。しかも今回はキッカーも任せており、松田に対しての負担はやや大きかったように思える。

 もし松田を10番で固定して育てるのであれば、普段から10番で出すようにパナソニックにお願いすべきかもしれないし、サンウルブズで10番として起用するのもいいかもしれない。ただ、個人的には松田はパス、キック、ランといったスキルも高く、さらにタックルも強いので、12番か15番が適していると思うのだが……。

 本人はSOとして先発したことに関しては「まだまだ、経験、ゲームコントロールも含めて、チームをまとめるということもできていなかったので、そこはもっと練習で(田村)優さんの話を聞いたり、ブラウニー(トニー・ブラウンBKコーチ)ともコミュニケーションをとったりしていきたい」と前を向いた。

欧州遠征でトンガ、フランスと対戦

オーストラリア代表戦は、2年後のW杯でも舞台になる日産スタジアムで行われた 【築田純】

 いずれにせよ、松田にとって、昨年は15番でスコットランド代表戦に、今年は10番としてオーストラリア代表戦に出場したことは、2019年を考えれば大きな財産になったことは間違いない。

 ラグビー日本代表はすでに欧州に向けて出発しており、日本時間で11月19日にトンガ代表(世界ランク13位)、26日にフランス代表(世界ランク8位)と対戦する。松田が今後、どのポジションでプレーするかは指揮官の考えやメンバー編成次第だが、トップリーグでのパフォーマンスを考慮すると、一度、強豪相手に12番を背負った松田も見てみたい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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