48時間で復調した葛西紀明 “教え子”からも学ぶ、どん欲な姿勢
伊藤も驚いた葛西の向上心
全日本ジャンプ最終日 優勝し記念撮影でポーズをとる伊藤有希(左)と葛西紀明=大倉山 【共同】
理想のフォームはおのおのの体格によって異なるとはいえ、共通点もまたあるはず。しかし、まだ歴史が浅く発展途上、骨格や飛距離も異なる女子ジャンプを見て男子選手が女子選手のジャンプを「参考にしました」と語ることはあまりない。
それをW杯通算12勝、レジェンドと呼ばれる男があっさり口にしてみせた。報道陣から事を伝えられた伊藤は驚いた様子で「恐れ多いです」とかしこまりつつ、葛西のレジェンドたる所以(ゆえん)を再確認した。
「自分より競技レベルが低い年下の男子選手だけでなく、だいぶ年齢の離れた女子選手のジャンプも見て、誰からでも得られるものを得ようという視野の広さがすごいと思います。私もいろんな人のジャンプを見られるようになりたいです。尊敬します」
上り調子で冬シーズン開幕へ
8度目の五輪出場を狙う葛西。選手として指導者として、どん欲な姿勢で成長を続ける 【共同】
「今日の優勝で不安感が消えかけてきて、楽しみです。世界のレベルも高いと思うので自信満々に行くのではなく様子を見ながら戦って、自分が良ければトップ10、表彰台も見えてくると思います」
今季序盤のW杯代表には葛西に加えベテランの伊東大貴(雪印メグミルク)、竹内択(北野建設)、若い小林潤志郎、小林陵侑(土屋ホーム)兄弟が選ばれた。伊東と竹内のベテラン2人が3連戦で表彰台を逃すなどまだ調整段階にあるなかで、エースが上向きになったことはチームにとっても価値がある。
出場すれば8度目となる大舞台へ「金メダルを目指したい」と葛西。また所属チームの監督としては、五輪へ向けて伊藤ら若い選手が順調に調整できるように「守りたい」と語った。エースとして監督として、45歳の役割はまだまだ大きい。
(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)