不可解判定の払拭へ、完全決着狙う村田 日本ボクシングの盛衰懸けた『審判の日』
因縁の再戦へ――。22日のWBA世界ミドル級タイトル戦へ挑む村田 【写真は共同】
あまりに奇妙な判定決着に終わった戦いから5カ月。プロボクシングのWBA世界ミドル級タイトルマッチ、チャンピオンのアッサン・エンダム(フランス)対挑戦者の1位、村田諒太(帝拳)の12回戦がいよいよ間近に迫った(10月22日、東京・両国国技館)。
折しも試合の当日は衆議院議員総選挙の投開票日。日本の誇るオリンピック・チャンピオン、村田(2012年ロンドン五輪ミドル級優勝)の勝ち負けは、そのまま日本ボクシング界の盛衰を大きく左右する。こちらも大事な『審判の日』なのだ。
村田が払拭(ふっしょく)してこそ晴れる判定への疑念
試合を見ていた多くが村田の勝利を確信していたが、歴史的な“不実”に見舞われた 【写真は共同】
4ラウンドに右をカウンターで決めて、エンダムが顔面がら昏倒(こんとう)するダウンを奪った。
その後も得意の右を炸裂(さくれつ)させて、カメルーン生まれのフランス人を何度もロープにたたきつけた。終盤戦には左フックのボディブローで、またまた追い詰めた。暫定世界王座を含めれば5度も世界タイトルマッチを戦い、うち3勝している元WBO世界ミドル級王者。そんな世界のトップボクサーを村田は圧倒しきったのだ。
それでも、ジャッジの採点は村田の栄冠を拒んだ。村田の敗北とされた判定が発表されるや、日本中が怒号にまみれた。私を含むリングサイドのジャーナリスト、関係者、そして試合を見届けたファンの大多数は、当然のように村田の快勝とみていた。
ニューヨーク在住のスポーツライター、杉浦大介氏が海外のジャーナリストを取材し、その全員がジャッジの判断に異議を唱えたというレポートもあった。一度出された判定はむろん覆らないのだが、少なくともエンダム対村田第1戦によって、ジャッジの勝負への不誠実が見過ごせない禍根として、ボクシングという競技に残ったのは事実だ。
自信はついた。手元にないのはベルトだけ
試合には敗れたものの「自信は付いた」と語っていた村田(右)。後はタイトルを奪うだけだ 【写真は共同】
試合後、村田は繰り返し、こう言っていた。
「ジャッジは第三者が下すもの。出された判定には納得するしかない。正直なところ、エンダム戦の前までは、自分の力がプロの世界でも通じるのかどうか、半信半疑でした。今は通用すると確信が持てました。ただ、(その証拠となる)世界タイトルだけが自分の手に残っていないんです」
新たに芽生えた自信と、耐えがたき悔しさが交錯する言葉である。