堂安律が磨き続ける“ターン”という武器 オランダでつかんだ手応えとW杯への思い

中田徹

アジリティーと体幹の強さを生かした“武器”

172センチと小柄な堂安だが、アジリティーと体幹の強さを生かした“武器”を持つ 【Getty Images】

「ターンのところで潜り込めるので、イメージを持って練習していますし、ターンした時に相手が遅いなというのは感じます」と172センチの小兵は、アジリティーと体幹の強さを生かし、“ターン”を武器として使っている。

 AZ戦の堂安は中盤でもアタッキングサードでも、180度の反転、135度のターンを使い、前へのドリブルをスタートさせたり、バイタルエリアに入って行ってシュートを狙ったり、思い描くようなプレーの起点として“ターン”を使っていた。

「ガンバではサイドハーフをやっていたので、ああいうシーンは少なかった。(フローニンゲンでは)トップ下なので、受けたボールをターンしないといけない状況になる。どうしてもスムーズさが求められます。メッシのターンを勉強しながらやっています。(メッシは)前を向いたときの技術はもちろんすごいですけれど、前を向くシーンを作り出すのがうまいなと思っています。あそこで前を向ければ、自分も何かできると思う。あの回数をもっと増やさないといけない」

 スムーズなターンに加え、AZ戦で目立ったのが、相手のマークを吹き飛ばすような骨太のドリブルだ。9分のドリブルシュート、20分の自陣からスタートさせたドリブルには、相手との接触を楽しむかのような、堂安の骨太のドリブルがあった。
 
「ユー・アー・ストロング」。AZ戦前、堂安はテクニカルスタッフから言われ、前線でキープして時間を作るよう指示されたという。そして、隙を見て、相手陣内に切り裂いていく――そういうイメージを持って、堂安は試合に臨んだ。PK奪取のシーンは、虎視眈々(たんたん)と隙を狙って突いたものだった。

「期待感や信頼は徐々につかんでいる」

充実したトレーニングの先に、堂安が見据えるのは来年のW杯だ(写真はU−20W杯のときのもの) 【Getty Images】

 チームでも個人でも、充実したトレーニングを積んでいる。ピリオダイゼーション理論を採用しているガンバ大阪では週に1度、「オールアウト」というインテンシティー(強度)の高い練習をしているが、フローニンゲンでは「それぐらいの強度の練習を毎日やっている」と言う。そして、国際マッチウイーク中の2部練習では、走行距離が14キロにも及んだ。

「1試合以上、走ってるやん(笑)。(試合での走行距離は)12キロいったらいいほうですね。練習の方が、今日より走っています。試合の方が強度は高いので、疲労は今日の方がありますけど」

 堂安は、猫背の矯正、足首の硬さの改善を図るため、長友佑都が取り組んでいることで知られる「フローイン」という体幹トレーニングを始めた。サッカー界でも有名な陸上コーチの杉本龍勇氏にも近々、オランダに来てもらい、走法改善に力を入れる。

 こうした練習の日々と、試合でのパフォーマンスが相乗効果を生んで、堂安は大きな手応えを感じているようだ。

「練習から感じる部分はあります。期待感とか信頼とか、徐々につかんできていると思います。今日(試合を)見ててもらえれば分かるように、要求できるようになってきているし、感情を出せるようになってきている。今はいい感じかなと思います。あとは“中心”になることですね。“ただの1人”ではダメですし、やっぱり『アイツがいなくては』と思われたいです。そういう選手に、1試合終えるごとに進化していければと思います」

 その先に見据えるのは、来年のワールドカップ(W杯)ロシア大会だ。

「ロシアに潜り込みたい」

 堂安はそう言い切った。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント