【UFC】ライト級王者マクレガーを討つのは誰? リー対ファーガソンから動き出す王座戦線

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「UFC 216」のメインではトニー・ファーガソン(左)とケビン・リー(右)が激突 【Zuffa LLC】

 現在、UFCライト級正規王者はコナー・マクレガー(アイルランド)である。8月にフロイド・メイウェザー(米国)とのボクシング戦が大きな話題を呼んだが、UFCでの試合は2016年11月にエディ・アルバレス(米国)戦からタイトルを奪取して以来、ご無沙汰となっており、今のところ次の試合の予定も決まっていない。

 そんな中、日本時間10月8日(日)に開催される「UFC 216」のメインイベントでトニー・ファーガソン(米国、ランキング2位)とケビン・リー(米国、同7位)がライト級暫定王座をめぐってタイトル戦を行う運びとなった。

ケビン・リー抜てきの背景

 このタイトルマッチでファーガソンとリーの試合が組まれた背景について、UFCマッチメーカーのショーン・シェルビー氏は、3月に予定されていながら中止になっていたファーガソン対ハビブ・ヌルマゴメドフ(ロシア、同1位)の組み直しが不首尾に終わったと語り、次のように裏話を明かしている。

「もともとは11月にニューヨークで行われる『UFC 217』で、ヌルマゴメドフにファーガソン戦をオファーしたんだ。ただ、ヌルマゴメドフがその日程では準備が間に合わないとして断ってきた。そこで『UFC 216』でこの試合を組むことにした。リーはこのところ素晴らしい戦績を残し、ライト級で今最も熱いファイターだ。リーについては、最初は多少できすぎの感もあったが、今では私はその強さを信用している。一方のファーガソンは言うまでもなく、ライト級で最もダイナミックな試合を見せてくれる選手だ」

 ランキングは7位ながら、過去10戦9勝の勢いを買われたリーが、9連勝中のトップコンテンダー、ファーガソンに挑む格好となるが、両者の因縁は、実はリーの前回の試合の直後に始まっていた。6月の「UFCファイトナイト・オクラホマシティ」でマイケル・キエーザ(米国)にチョークで一本勝ちしたリーは、ポストファイトショーで解説を務めていたファーガソンのインタビューを受ける。

「ケビン、あなたはキエーザにDDTでたたきつけられていましたが、あれはいったいどんな気分でしたか?」と聞くファーガソンに、リーはこう答えた。

「は? ちょっと何を言っているのか分からない。DDTって、プロレスの技なのでは? たたきつけられたんじゃなくて、こちらが相手を持ち上げたんだけど? 本当に試合を見ていたのか。本物のジャーナリズムでお願いしたい。もうちょっと勉強してこいよ」

 これを受けてファーガソンは「まあ、俺クラスのトップファイターなら、キエーザなどごく簡単な相手なんだけど、レベルが違いすぎてね……。何を聞けばいいのやら」とコメント。その結果、リーから「じゃあ、あんたと戦ってやろうじゃないか。あんたなんか、オレにとってはイージーマネーだ」との発言が飛び出したのである。

「オレのメンタルゲームはリーにはキツすぎる」

 その後も記者会見やソーシャルメディアを通じて、両者はキャラ前回のトラッシュトークを交わし合ってきている。

「オレとトニーは戦う運命にあったんだ。それがラスベガスのメインイベントでの世界タイトル戦だろうが、裏庭でのケンカであろうがね。10月8日、それは“エル・ククイ”(ファーガソンのニックネーム)が死ぬ日になる」(リー)

「ケビンはオールラウンドな選手、素晴らしいアスリートだ。でもオレにはこのガキの倒し方は見えている。大半のUFCファイターと同じで、ヤツはメンタルが弱いんだ。オレのメンタルゲームは、ヤツのようなネアンデルタール人にはキツすぎるだろうよ。あのピーナッツ大の脳みそでオレを捕まえるというのは高度すぎて無理なんだ。とりあえず、減量して、試合に姿を見せればそれでよい」(ファーガソン)

マクレガーも始動へ、ライト級戦線リセット

 今回の試合の勝者がマクレガーと戦うことになるのか、現時点では明らかにされていないが、本来暫定王者とは正規王者が復帰の暁には統一戦を行うことになる含意があるものだ。UFCでの戦いから距離を置いているマクレガーに対し、両選手は手厳しい。

「この試合が本物のUFCライト級チャンピオンシップだ。マクレガーはこの階級で1度しか戦ったことのないペーパーチャンピオン(実力のない名前だけのチャンピオン)。それに比べ、オレとファーガソンはこのタフな階級で共に2桁の戦歴を持っている」(リー)

「マクレガーはカネを得て軟弱になった。ライト級のベルトは手あかが付きすぎて輝きを失っている。オレはフォロワーではなくリーダーなんだ。タイトル戦であろうがなかろうが、オレは自分のやりたい試合をするだけだ」(ファーガソン)

 マクレガーは現地時間9月30日に英国グラスゴーで行われたファンとのQ&Aセッションで、メイウェザー戦後初めてUFC戦線復帰を次のように明言した。

「俺には防衛すべきUFCのタイトルがある。これは自分にとっても意義深いことなんだ。防衛戦はやる。MMAのランキングを正常化しろとうるさいヤツらを、そろそろ黙らせる時がきたようだ。まずは今週の試合を見てみよう。2人が無事に出場してくれることを祈るよ。試合前になると、なぜか急に風呂場で滑って流血するヤツが多いからね。この試合を踏まえて、ライト級のタイトル戦線がどうなるのかを見定めてから、オレ様が混乱の収拾に乗り出してやろうと、こう思っているんだ」

 停滞していたライト級戦線も今まさに、リセットの時を迎えたようだ。この試合に始まるタイトルをめぐる激烈なデッドヒートの行方が見逃せない。

マイティマウス、大記録達成へ

セミメインイベントは王者デミトリアス・ジョンソン(米国)対レイ・ボーグ(米国)のUFCフライ級タイトルマッチが行われる 【Zuffa LLC】

 セミメインイベントでは王者デミトリアス・ジョンソン(米国)対レイ・ボーグ(米国)のUFCフライ級タイトルマッチも行われる。もともと先月の「UFC 215」で予定されていたところ、試合直前にボーグが風邪を悪化させてしまい、今回に延期されたものだ。勝てばジョンソンは11回連続防衛のUFC新記録を樹立する。
 さらに、前王者ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル)が、前回マーク・ハント(ニュージーランド)に敗戦した直後に引退宣言したことなどなかったかのように出場する人気者デリック・ルイス(米国)を迎え撃つヘビー級戦も大注目の「UFC 216」をぜひお楽しみに!

(文:高橋テツヤ)
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