先の見えないカタルーニャとサッカー界 無観客試合の実施、表面化する対立関係
カタルーニャの分離独立を問う住民投票が実施
独立が実現すれば、バルセロナら複数のクラブがリーガからの脱退を余儀なくされる可能性もある 【Getty Images】
本コラムで少し前に書いた通り、カタルーニャ自治州政府は近日中に一方的な独立宣言を行う可能性が高い。そうなればこの国のフットボール界には、われわれの想像を上回る影響が及びかねない。バルセロナ(エスパニョールやジローナも同様に)がスペインのコンペティションからの脱退を余儀なくされれば、もうわれわれはレアル・マドリーとの“エル・クラシコ(伝統の一戦)”が見られなくなるかもしれないのだ。
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バルセロナはラスパルマス戦を無観客試合に
カンプノウでのラスパルマスとの一戦は無観客の状態で行われた 【Getty Images】
この試合を無観客で行ったことに対するジョセップ・マリア・バルトメウ会長の説明は不可解なものだった。彼は観客のいないカンプノウの映像を世界中に発信するのが目的だったと強調しているが、ラ・リーガはバルセロナがセキュリティーの不備や観客がピッチになだれ込む危険性を訴えてきたと主張している。また、この試合でバルセロナの選手たちは入場時にカタルーニャ州旗である「サニェーラ」カラーの練習着を着用。一方のラスパルマスは、スペイン国旗が胸にプリントされたユニホームを着てプレーしている。
同日にはジョセップ・グアルディオラやカルレス・プジョル、シャビ・エルナンデスらカタルーニャを代表するフットボール関係者が住民投票の必要性を公に主張するとともに、スペイン警察の武力行使を厳しく非難していた。将来的にはバルセロナの会長になりたいとたびたび語ってきたジェラール・ピケは、試合後のミックスゾーンで「人生で最も困難な1日だった」と涙ながらに語り、2018年のワールドカップ(W杯)ロシア大会後に予定していたスペイン代表からの引退を早めることまで示唆していた。
住民投票の是非を巡ってスペイン中が二分
ラスパルマス戦でバルセロナの選手たちはカタルーニャ州旗である「サニェーラ」カラーの練習着を着用 【Getty Images】
その傍ら、エスパニョールをサンティアゴ・ベルナベウに迎えた同日のレアル・マドリー戦では、住民投票の是非をめぐってスペイン中が二分されている現状を象徴するかのように、カタルーニャへの抗議を示す多数のスペイン国旗がスタンドで揺れていた。その数日前には、住民投票を肯定したピケのツイートについて、レアル・マドリーのセルヒオ・ラモスが「“ラ・ロハ”(スペイン代表の愛称)のファンから受けるやじを避けるためには、ベストの行為ではなかった」とコメントし、代表でセンターバックのコンビを組む同僚との亀裂を深めていた。
バルセロナの選手たちに向けて歌われる「ケ、ビーバ、エスパーニャ(スペイン万歳)!」の大合唱。カンプノウのスタンドに掲げられる「カタルーニャ・イズ・ノット・スペイン」の横断幕。スペイン継承戦争でバルセロナの町がフランス・スペイン連合軍に攻め落とされた1714年にちなみ、毎試合17分14秒に響き渡る「インダパンダンシア(独立)!」の叫び声。近年、各地のスタジアムで高まりつつあったスペインとカタルーニャの対立関係は、今回の騒動で一気に表面化することになった。この状況を修復するのは簡単なことではない。