先の見えないカタルーニャとサッカー界 無観客試合の実施、表面化する対立関係

独立後のバルセロナの道のりは不透明

カタルーニャ国内のリーグに参加する可能性もあるが、トップレベルの選手たちがそこでのプレーを望むかは分からない 【Getty Images】

 カタルーニャが独立するにせよしないにせよ、スペインフットボール界には今後何が起こり得るのか。恐らくフットボールファンが今知りたいのはそこではないだろうか。カタルーニャが独立しない限り、問題はいかに両者が共生していくかに絞られる。だが独立が実現した場合、バルセロナやエスパニョール、ジローナがラ・リーガに残ることは難しく、別の選択肢を探すことになるだろう。

 バルセロナにはフランスリーグ参入の可能性が報じられている。だが、自国に協会もリーグも代表チームも持たないASモナコとは事情が違うだけに、それが簡単に認められるとは限らない。米国のメジャーリーグサッカーにフランチャイズクラブを創設するとのうわさもある。そのためかどうかは分からないが、昨夏クラブはニューヨークにオフィスを設けている。

 そうでなければ、カタルーニャ国内のリーグに参加するしかない。ただ独立後にプロリーグとしての体裁を整えていくにしても、リオネル・メッシやルイス・スアレス、アンドレス・イニエスタらトップレベルの選手たちがそこでのプレーを望むかどうかは分からない。

スペイン代表にも大きな影響が……

カタルーニャ出身の選手が多いスペイン代表にとっても、独立は深刻な問題だ 【写真:ロイター/アフロ】

 もう1つの大きなテーマはスペイン代表だ。カタルーニャが独立すれば、ピケに加えてセルヒオ・ブスケッツ、ジョルディ・アルバ、セルジ・ロベルトらカタルーニャ出身の選手たちがラ・ロハ(スペイン代表の愛称)を離れることになるかもしれない。これがもしルイス・アラゴネスやビセンテ・デルボスケがチームを率いていた10年前だったら、戦力の喪失はさらに深刻なものとなっていたはずだ。

 一方、カタルーニャの代表チームが国際大会に出場するためには、カタルーニャフットボール協会がUEFA(欧州サッカー連盟)に加盟するより先に、まずカタルーニャが独立国としてEU(欧州連合)の承認を得る必要がある。だがそれも、少なくとも独立後の数年間は待たされることになるだろう。対照的に、FIFA(国際サッカー連盟)の対応は柔軟かつスムーズで、時には国際連合より先に、新しくできた国の加盟を認めることもある。

 混乱状態が極まる日々が続く現在、スペインは何が起きてもおかしくない状況にある。彼らの前に立ち塞がる深い茂みを取り払い、進むべき道を見いだすまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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