岡崎「どんな出場時間でも力を出し切る」 “開き直り”がもたらした開幕ダッシュ

田嶋コウスケ

「攻撃にいけないのなら守備にいかない」

格下ブライトンとの一戦では、守備の比重を下げ攻撃的な姿勢を見せた 【Getty Images】

 アーセナルとのプレミア開幕戦で早速ゴールを決めると、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンとの第2節で連続ゴールを挙げ、プレミア挑戦3季目を幸先よくスタートさせた。特に、昇格組の格下ブライトンとの一戦では、守備の比重をぐっと下げ、前線で勝負を仕掛ける岡崎の姿があった。そこには、彼なりの工夫と考えがあるという。

「見てもらったら分かるんですけれど、遅れて守備に入ることが多かった。プレー位置を前目にとっているというか。遅れて守備をする感覚ですね。もちろん、時と場合によるのですが、攻撃にいけるときはそうやってもいいかなと。前は『必死に守備に戻って、必死に攻撃で上がって』とやっていたのですが、いまは我慢して真ん中に残っている。攻撃でアクションを起こすことを目的にしてプレーしている。だから多少、守備に遅れても仕方ない。攻撃にいけないのなら、守備にいかない方がいい。そこは仕方ないと思っています」

 また、無理そうな状況であっても、DFラインの背後に飛び出して味方のスルーパスを誘い出してみる。あるいは、相手DFの裏に抜けるフリーランを何度でもトライしてみる。これも「攻撃に比重を傾けながら、60分の出番を走り切る」という今季のテーマだからこそ成せる業だろう。こうした意識の切り替えが、今シーズンの好スタートにつながった。

オフ・ザ・ピッチにもあった“開き直り”

ハダーズフィールド戦で先発落ちをした岡崎は、後半からの途中出場となった 【Getty Images】

 ピッチ外でも変化が見える。監督の立場を尊重する岡崎は、これまで指揮官に意見をぶつけることがほとんどなかった。人選と采配を決めるのは、あくまでも監督。責任を背負う指揮官に対し、考えを問うのはあまり好きではないと漏らしたことがあった。しかし、ここでも良い意味で開き直った。たとえ意見が通らなくても、自分の意見を指揮官に届ける。そして、監督の考えに耳を傾ける。それだけでも、心のモヤモヤが消え、新たな力になるという。

「今シーズンからコーチが2人新しく入って、彼らに話をしたんです。昨シーズンは、監督とGKコーチと2人しかいなくて、自分も『(不満を)溜めて溜めて』だったんだけれど、今は新しいコーチが2人いる。彼らに話をすれば、それが監督に伝わって。チームとそういう良い関係が築けている。

 例えば、代表戦の(疲労の)影響でチェルシー戦(第4節)のメンバーから外れたのはいいけれど、次のハダーズフィールド・タウン戦(第5節)でサブになったときに、『なんで?』と聞きにいった。そういうのは普通のことだと思うんですけれど、今まであまりやらなかったんです。だけど、自分の中で納得したかった。自分はどういう思いでいるかを伝えました。

 チームとしては、いろいろな選手を使いたい。もちろん、そこは僕も分かっている。良い選手がいっぱいいるし、自分ばかりが試合に出られるわけじゃない。今の自分は、確立された立ち位置にいるわけでもないので。そう分かっているんですけれど、質問することで、自分の中で『あ、やっぱりそうなのか』と思えるようになる。

 昨シーズンは、心の中で溜めていた。チャンピオンズリーグで2回も前半の45分で交代させられて……。まあ、言ってみたら屈辱的なことだったので。だから今後は、前向きに良い関係でやっていけたらなと思っています。そうなれば、途中出場するときも『ここで結果を出して監督にアピールするぞ』と切り替えられる」

プレミアで手に入れたい得点への自信

 レスターには、今夏の市場でナイジェリア代表FWのケレチ・イヘアナチョが加入した。2トップを採用するチームの中で、FWの1枠は得点源のバーディーに固定されている。つまり、残りの1枠をイスラム・スリマニ、イヘアナチョ、レオナルド・ウジョア、そして岡崎の4人で争うことになる。今後も、日本代表FWがベンチに回る試合は出てくるだろう。

 それでも、積極的にゴールを狙っていく。少ない出場時間であっても、である。その視線の先に、来夏に行われるワールドカップ(W杯)ロシア大会を見据えているという。

「(レスターで)先発で出たい気持ちはあるけれど、31歳という自分の年齢なら、途中から出ても結果を出せるようにならないと。どういう状況でもいけるようにしたい。『90分ずっとハイパフォーマンスができるか?』といったら難しいし、途中交代させられるとも思うので。だから、『どんな出場時間でも力を出し切る』というテーマでやっている。そのため、ベンチスタートであっても、あまりモチベーションは下がらない。

 サブで出番が10分だろうが20分だろうが、ゴールを狙っていく。特に今は、W杯も頭に入っているので。前大会もそうだったけれど、W杯はラスト20〜30分がポイントになってくる。そういう時に、点を取れる選手が必要になる。レベルの高いプレミアで、点を取るということに自信をつかんでいきたい」

 日本代表では大迫勇也(ケルン)が台頭し、岡崎はベンチにまわる試合が増えた。当然、本人は悔しさを感じているだろうし、先発の座も虎視眈々(たんたん)と狙っていることだろう。だが、ベンチスタートなら、その限られた出番の中で何ができるかを考える。そして、ゴールを取ることに徹底してこだわる──。

 苦しい状況に置かれても決して諦めない、実に岡崎らしい考え方である。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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