ドジャース、生みの苦しみ乗り越え地区V ダルビッシュが歓喜の中で口にしたこと

丹羽政善

一時は2位に21ゲーム差付けるも…

チームは決して年間通して良い状況ではなく、特に9月は投打ともに精彩を欠いていた 【写真は共同】

 元々、開幕から決して順調だった、というわけではない。4月27日までは連勝しても連敗するようなチームで、まだ借金があった。28日に勝率を5割に戻すと、その後は貯金を重ねたが、地区首位に立ってもすぐに奪い返される状況が、6月半ばまで続いている。

 ただ、その6月以降が圧巻。前半を61勝29敗で折り返したが、6月7日から8月5日までの50試合では43勝7敗と大きく勝ち越し、50試合のスパンでは1912年にニューヨーク・ジャイアンツがマークした記録に並んだ。そして8月25日にドジャースが連勝すると、通算成績が91勝36敗となり、貯金を55にまで伸ばした。その時点で、地区2位ダイヤモンドバックスとの差は、今季最大の21ゲームとなっている。

 ところが、そこからおかしくなってしまった。

 まず、26日から5連敗を喫すると、9月1日にクレイトン・カーショーの復帰戦で連敗を止めたが、翌日から11連敗。ダイヤモンドバックスが勝ちを重ねた時期でもあり、ほとんどマジックが減らなかった。それでも9月12日から4連勝してマジックを5としたが、そこからまた4連敗。ダイヤモンドバックスが負けてくれたおかけでマジックは1ずつ減ったが、遠征中に地区優勝を決めることが出来なかった。

9月は投打がそろって低迷

 22日、結果としてホームで優勝を決めたことは良かったのかもしれないが、ここまでもつれたことで、チームの不安が目につく。まず、投手陣の月別防御率を見ると、以下の通りだが、9月は22日現在、4.84である。

4月/3.50
5月/2.94
6月/3.29
7月/2.60
8月/3.60  

 同じようにオフェンスの数字も下がっている。試合数、得点、打率、本塁打を月別に調べるとこうなった(9月の成績は現地22日終了時点)。

4月 26試合/112点/2割5分0厘/28本
5月 28試合/159点/2割6分5厘/34本
6月 28試合/157点/2割5分0厘/53本
7月 23試合/107点/2割7分5厘/35本
8月 27試合/121点/2割3分4厘/36本
9月 22試合/70点/2割1分0厘/24本

 8月終わりまでは、投打が見事にかみ合っていたが、9月は投打がそろって低迷している。そして、明らかに前半の勢いがない。とはいえ、ダルビッシュはこう話している。

「あのまま絶好調で、プレーオフに行くほうが不安なのかなって思ったりもして、悪い状況もちゃんと経験したので、いい感じでプレーオフに行けるんじゃないか」

波があったことをプラスに

ダルビッシュはプレーオフに向け「いつも通りドジャースの野球ができれば」と語る 【写真は共同】

 7月31日にトレードで移籍してきたダルビッシュは、ある意味、客観的にチームを見ることが出来るが、長いシーズンを考えればどんなチームにも波はある。その意味では、プラスに考えてもいいのでは――という捉え方には、一理ある。事実このところ、先発陣は安定してきた。

「自分たちはいつも通りドジャースの野球ができれば」

 先発投手を中心とした投手力こそ、ドジャースの強みだが、ダルビッシュが言うように、そんなドジャース本来の戦い方が出来るかどうか。それが可能なら、前田が口にしたように2回目、3回目のシャンパンファイトがあるかもしれない。4回目があればそのときは、ワールドシリーズ制覇を意味することになる。

 さて、ダルビッシュを囲んで取材している時、後ろから、シャンパンがかかった。チームの誰かが、ダルビッシュにかけようとしたときに、それをもらってしまった。首の後が、まだべとついている。ちなみに前田によると、シャンパンファイトは「寒い」そうだ。

「(シャンパンを冷やすのに)氷水を使ってるから」

 その後、そのシャンパンを冷やしていた氷水を前田は、ヤシエル・プイグに肩から豪快にかけられ、歯をカタカタと鳴らした。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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